仕事でミスをした従業員に損害賠償請求できるか?

庄司英尚

庄司英尚

テーマ:判決・判例紹介

みなさんこんにちわ

社会保険労務士の庄司英尚です。

損害賠償請求 仕事 ミス 

今日は、お客様から質問があったものを一部脚色して
特別にQ&A形式でお答えしたいと思います。

従業員の方も気になるところかと思いますが
ぜひ参考にしていただければと思います。

■ Q 今回、従業員が仕事上で入力ミスをして多大な
 損害を会社に与えたので本人へ会社から損害賠償請求
 をしたいと思っていますが可能でしょうか?


 

■ A 詳細の内容を聞かないとわかりませんが、従業員が
  通常の仕事の過程において注意しながら入力業務を行って
  いた際のミスについては、従業員に損害賠償請求するこ
  とはできません。

  仕事をしていればミスは少なからずおきるものですし、
  それを従業員に全部負担を負わせては、おかしなこと
  になります。企業は、経済活動を行い、利益をあげる
  ために従業員を雇用しているわけですから、利益の部
  分だけを会社が得て、リスクの部分(損害)だけを従業
  員に押し付けることはどう考えても不公平であり、その
  ようなことでは従業員は安心して働くことができなくな
  ってしまいます。

  もちろん故意または重過失によるものである場合、当然
  損害賠償請求することは可能です。

  それでも全額を損害賠償請求するということは難しく、公平
  に分担するという考え方に基づきます。過去の裁判例をみても
  企業が負った損害額の半分程度、あるいは4分の1またはほとん
  ど認めなかったものもありさまざまです。

  今回のケースと比較的似ている判例をみていくと、N興業事件は
  参考になりますのでご紹介させていただきます。
 
  売上代金の請求書作成を怠ったことによる損害(800万円)につき、
  過重労働の存在、再発防止措置の不十分さ等を考慮して賠償額
  を約4分の1(200万円)とした。
  (東京地判平15.10.29 労判867-46)
  
  減額の幅は、裁判例によると労働者が行った加害行為の態様、労働
  者の地位・職責・労働条件、加害行為の予防や損失の分散(保険の
  利用等)についての使用者の対応のあり方等の諸事情を考慮して判断
  されます。

  なお基本的なところになりますが、労働基準法第16条では、
  使用者に対して、「労働契約の不履行について違約金を定め、又は
  損害賠償額の予定をする契約」を締結することを禁止していますので
  あわせて押さえておきましょう。


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専門家

庄司英尚(社会保険労務士)

株式会社アイウェーブ(アイウェーブ社労士事務所 併設)

プロフェッショナル集団として学び続け、サービス業であるということを忘れず、何事にも全力で取り組みお客様の悩みを解決し、最終的には業績アップに貢献できるよう日々努力します。

庄司英尚プロは朝日新聞が厳正なる審査をした登録専門家です

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