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安部元隆プロは大分朝日放送が厳正なる審査をした登録専門家です

走らなくていい、減塩だけじゃない。脳神経科学が実証した「血圧リセット」3つの最強プログラム

安部元隆

安部元隆

テーマ:健康



こんにちは、GENRYUです(^^)
前回の記事では、なぜ血圧が高くなってしまうのか?という事実を共有しました。
高血圧とは、血管が単に汚れているだけの病気ではなく、
酸素不足を恐れた脳が「生き残るためにわざと圧力を上げている状態(生存戦略)」
であると説明させて頂きました。
つまり、私たちがやるべきことは、ただ薬で数値を抑え込むことでも、
嫌いなマラソンを始めることでもありません。脳に対してこう伝えてあげることです。
「もう大丈夫。そんなに必死に圧力を上げなくても、酸素は足りているよ」
そうやって、脳の中にある「血圧の設定温度(セットポイント)」を
正常に戻す作業こそが、根本解決への近道です。
これを「ニューロ・カーディオ・ハッキング(脳神経系を利用した循環器調整)」と
呼んでいます。
今日は、最新の研究文献で「有酸素運動よりも効率的」と証明されつつある、
薬を使わない3つの具体的なアプローチを完全解説します。
用意するものは、少しの器具と、あなたの体、そして「変わろう」とする意思だけです。



メソッド①:科学が認めた最強の時短術「吸気筋トレーニング(IMST)」
現在、世界中のスポーツ科学や医学の分野で最も注目されているのが、
このIMST(Inspiratory Muscle Strength Training)です。
一言で言えば、「肺の筋肉のウェイトトレーニング」です。
コロラド大学の研究チームなどが発表したデータによると、
このトレーニングを1日たった5分、6週間続けるだけで、
収縮期血圧が平均で9mmHg、最大で**15mmHg**も低下しました。
これは、多くの降圧剤の効果に匹敵、あるいは凌駕する数値です。
なぜ、ただ息を吸うだけで血圧が下がるのか?
秘密は「血管内皮(けっかんないひ)」にあります。
強い抵抗(負荷)をかけて息を吸い込むとき、胸腔内には強い陰圧が生まれます。
これが心臓への血流を一時的に変化させ、血管の内壁にある細胞を刺激します。
すると、血管内皮から「一酸化窒素(NO)」という物質が放出されます。
この一酸化窒素こそが、天然の血管拡張剤です。
血管が柔らかく広がり、動脈硬化で硬くなったホースが弾力を取り戻すのです。

【実践プロトコル】IMSTのやり方
このトレーニングには、呼吸に負荷をかけられる
「呼吸筋トレーニング器具(ブリーザー、パワーブリーズなど)」が必要です。
Amazonなどで数千円から購入できます。

1. 強度設定(これが最重要!)
多くの人が失敗するのは「負荷が軽すぎる」ことです。
リラックスするための深呼吸ではありません。「筋トレ」です。
器具のダイヤルを調整し、「全力で吸って、やっと吸えるかどうか」という
レベルの55%〜75%に設定します。
感覚としては「かなりキツイ」「吸うのに顔が赤くなるくらい力が必要」なレベルです。

2. トレーニングの手順
* 姿勢
背筋を伸ばして座ります。
* 吸う(努力)
鼻栓をするか、鼻をつまみます(口だけで呼吸するため)。
器具をくわえ、「強く!速く!深く!」一気に吸い込みます。
1〜2秒で肺を満タンにするイメージです。
* 吐く(リラックス)
器具から口を離すか、抵抗がかからない状態で、ゆっくり自然に吐き出します。
これを30回連続で行います。

3. 頻度
* 週5〜7日行います。
* 1日1回、たった5分で完了です。
*ここがポイント*
最初の1〜2週間は、呼吸筋(横隔膜や肋間筋)が筋肉痛になるかもしれません。
それは正しくできている証拠です。
慣れてきたら、ダイヤルの強度を上げて、常に「キツイ」状態を維持してください。

【代用メソッド】器具がない!今日から始める「0円アプローチ」
「いきなり器具を買うのはちょっと……」 「届くまで待てない!」
そんな方のために、簡易的にIMSTの効果を再現するDIYメソッドをご紹介します。
専用器具ほどの精密な負荷設定はできませんが、肺への刺激を与える
スタートアップとして十分に機能します。

Aプラン:ストロー・ブレス法
・用意するもの
市販のストロー(細めが推奨)、洗濯バサミ(または指)
・抵抗を作る
通常のストローだと空気が入りすぎて負荷になりません。
ストローの先端を少し折り曲げてテープで留めるか、指でつまんで
「空気の通り道をあえて狭く」します。
「全力で吸っても、少しずつしか空気が入ってこない」状態を作ってください。
・鼻をふさぐ
鼻をつまむか、洗濯バサミでふさぎます(鼻呼吸を防ぐため)。
・全力で吸う
ストローをくわえ、100%の力で吸い込みます。
頬がこけるくらい強く吸ってください。
目安は、肺が満タンになるのに3〜4秒かかるくらいの抵抗感です。
・吐くときは外す
口からストローを外し、自然に吐きます。
30回繰り返す。

Bプラン:フィスト(拳)法 道具が何もない時の緊急用です。
・拳を作る
手を「グー」にして筒を作ります。
・抵抗を作る
親指側を口に当てます。
この時、小指側の隙間をきつく握りしめて、空気の入り口を極小にします。
・吸う
その小さな隙間から、ダイソン掃除機になったつもりで猛烈に空気を吸い込みます。
・調整
「かなり強く吸わないと空気が入ってこない」ように、握る強さで隙間を調整してください。
※プロからのアドバイス これらは素晴らしい第一歩ですが、慣れてくると
無意識に負荷を弱めてしまいがちです。
本気で「-15mmHg」を目指すなら、最終的にはダイヤルで負荷を数値化できる
専用器具へのステップアップをお勧めします。
まずはストローで習慣を作りましょう。



メソッド②:脳のスイッチを強制操作する「等尺性運動(アイソメトリックス)」
2つ目は、「筋肉の長さを変えずに力を入れ続ける」運動です。
具体的には「ハンドグリップ(握力)」を使います。
1985年頃から研究されている歴史ある手法ですが、
最近のメタ分析(複数の研究結果を統合した分析)において、
「有酸素運動よりも血圧降下作用が高い」と結論づけられました。
なぜ、握るだけで下がるのか?(圧反射の仕組み)
強く握っている間、一時的に血圧は上がります。
すると、首の動脈にあるセンサー(圧受容器)が脳幹に「緊急事態発生!血圧を下げろ!」と
信号を送ります。
そして、手を離して脱力した瞬間、脳の命令によって血管が一気に解放され、
血流がドドッと流れ込みます。
この「緊張(ON)」と「緩和(OFF)」の落差を繰り返すことで、
サビついていた脳の血圧調整スイッチ(圧反射感度)が修理され、
「安静時の血圧をもっと低く保とう」と脳が再学習するのです。

【実践プロトコル】ハンドグリップ法のやり方
デジタル握力計があればベストですが、なければ安価なハンドグリッパーや、
硬めのタオルでも代用可能です。
1. 強度設定
最大握力の**30%**の力を使います。
* 握力計がある場合
最大値が40kgなら、12〜13kgの数値を維持します。
* ない場合
「これ以上握れない!」という全力の3割程度の力加減です。
「ちょっとキツイけど、2分間なら耐えられるかな?」という強さです。

2. トレーニングの手順
このセットを厳守してください。
* セット1
右手で2分間握り続ける(30%の力)。
* 休憩
2分間、完全にダラっとして休む。
* セット2
左手で2分間握り続ける。
* 休憩
2分間休む。
* セット3
右手で2分間握る。
* 休憩
2分間休む。
* セット4
左手で2分間握る。
* 終了
合計4本(左右2本ずつ)。休憩を含めて約15分です。

3. 頻度
* 週3回(例:月・水・金)で十分です。
* 毎日やる必要はありません。やりすぎは逆効果になることもあります。
* 道具がない人向けの「代用案」
握るものが何もない、または手の関節が痛い場合は、
「ウォールシット(空気イス)」でも同じ効果が得られます。
壁に背中をつけて、膝が90度になるように腰を落とし、そのまま2分間耐えます
(かなりキツイですが効果は絶大です)。



メソッド③:神経の暴走を鎮める「スローペース呼吸法」
最後は、自律神経への直接アプローチです。
IMSTやアイソメトリックスほどの劇的な降圧効果(数値の低下)は
期待できないかもしれませんが、これは「効果を維持するための土台」として不可欠です。
現代人の高血圧の多くは、交感神経(アクセル)が踏みっぱなしに
なっていることが原因です。
この呼吸法は、強制的に副交感神経(ブレーキ)を踏ませ、脳の警戒アラートを解除します。

実践プロトコル】1分間6回呼吸
目指すのは「1分間に6回」という魔法のリズムです。
1. リズムの刻み方
* 吸う
2秒(鼻からスッと吸う)
* 止める
2秒(リラックスして止める)
* 吐く
6秒(口をすぼめて、細く長く吐き切る)
この「吐く時間」を長くするのが最大のコツです。
心拍数は息を吸う時に上がり、吐く時に下がります。
吐く時間を3倍にすることで、心臓を休ませる時間を物理的に増やすのです。

2. 実践方法
* スマホのタイマーを10分にセットします。
* 静かな場所で座り、目を閉じて、ひたすらこのリズムを繰り返します。
* 意識は「吐く息」に向けます。体中の力が地面に溶け出していくようなイメージです。

3. 頻度
* 毎日10分間。
* タイミングは「寝る前」や「仕事の合間のストレスを感じた時」がベストです。



【極めて重要な注意点】必ず読んでください
このプログラムを開始する前に、絶対に守っていただきたいことがあります。
現在、医師から処方された「降圧剤」を服用している方は、
必ず「主治医に相談し、連携を取りながら行ってください」。
「薬を使わない方法だから安全」だと思ってはいけません。逆です。
「効果がありすぎる」からこそ注意が必要なんです。
これらのトレーニングを行うと、あなたの本来の身体機能が回復し、
自然に血圧が下がり始めます。
その状態で、これまでと同じ量の降圧剤を飲み続けるとどうなるでしょうか?
「薬の効果」+「トレーニングの効果」= 「血圧が下がりすぎてしまう(低血圧)」
というリスクが生じます。
立ちくらみ、めまい、失神などが起こる可能性があります。
トレーニングを続けるにつれて、薬の量を減らす(減薬)必要が出てくる
可能性が非常に高いです。
それは素晴らしいことですが、その判断は医師にしかできません。
「先生、運動療法で血圧を改善したいので、数値を記録しながら薬の調整を相談させてください」
そう伝えて、味方につけてください。



おわりに:自分の体は、自分で守れる
高血圧は、年齢のせいだから仕方ない、遺伝だから諦めるしかない、
一生薬を飲み続けるしかない……そう思わされてきたかもしれません。
しかし、最新の脳神経科学は、私たちに「コントロール権」を取り戻させてくれました。
私たちの脳は、死ぬまで「可塑性(変わる力)」を持っています。
80歳になっても、適切な刺激を与えれば、脳は学習し、体は変わります。
まずは今日、Amazonで呼吸練習器をポチるか、タオルを握りしめる
ことから始めてみませんか?
4週間後、8週間後、健康診断の結果を見た医師が
「おっ、何かやりました?」と驚く顔を見るのが楽しみですね。
あなたの血管と脳が、本来の健康を取り戻すことを心から応援しています(๑•̀ㅂ•́)و✧
それではまた、次回のコラムでお会いしましょう(*^^*)

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安部元隆
専門家

安部元隆(理学療法士)

GENRYU式 綜合整体

科学的根拠に基づいた知見と臨床経験から得られた知見を組合せ「根本原因を探し、戻りが少ない治療法」『GENRYUメソッド』を提供しています。問題点をキチンと細分化して捉え、1つ1つその問題を解決します。

安部元隆プロは大分朝日放送が厳正なる審査をした登録専門家です

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