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安部元隆プロは大分朝日放送が厳正なる審査をした登録専門家です

「膝の水を抜くとクセになる??」医学的根拠をもとにこの問題を深堀り。

安部元隆

安部元隆

テーマ:膝痛



こんにちは、GENRYUです(^^)
前回のブログでは、「膝に溜まった水は抜いた方が良い?」「抜かない方が良い?」
これを判断するための判断基準とフローチャートを説明しました。
まだご覧になっていない方は、前回のブログからご覧ください。
では今回は、多くの方々を迷わせている問題、
「膝に溜まった水を抜くと、クセになるから抜きたくない」という疑問があると思います。
この問題に対して医学論文や医学的根拠をもとに、深堀りしていきたいと思います。

「膝の水を抜くとクセになるのか?」に対する回答として、
現時点での結論は、「膝の水を抜くとクセになる」という医学論文や文献は見当たりませんでした。
関節穿刺(滑液の吸引)が滑液産生を増加させたり、膝に水が溜まるメカニズムはなさそうです。
再貯留が起きる場合、それは穿刺のせいではなく、基礎疾患(例: 膝OA、関節リウマチ、滑膜炎)の
炎症が持続していることが原因です。
言い換えれば、穿刺は結果に対する対症療法であり、「膝に水が溜まるクセ」を作る
主体ではなさそうです。
以下に、この結論を裏付ける詳細な医学的根拠、誤解の原因、再貯留メカニズム、
臨床データ、そして対策までを徹底解説します。


1. 「クセになる」という誤解の背景とその誤り
(1) 誤解の起源
患者の経験: 穿刺後に水が再び溜まると、「抜いたせいで溜まりやすくなった」と感じる人が多い。
この因果関係の現時点では見当たりませんでした。
医師の説明不足: 「何度も抜くとまた溜まるよ」との言葉が、「癖になる」という
誤解を生む場合がある。しかし、これは再貯留の「原因」が治療されていないことを意味する。
民間伝承: 科学的根拠のない言い伝えが広まり、「抜くと関節が弱る」といったイメージが定着。
(2) 医学的誤り
事実: 滑液の産生は滑膜細胞の活動に依存し、穿刺がその機能を直接変える証拠は
今のところないようです。
穿刺はあくまで「溜まった水を抜く」物理的行為で、滑膜の生理的反応を誘発しないようです。


2. 医学的根拠とメカニズムの詳細
(1) 関節穿刺が滑液産生に影響しない証拠
生理学的視点: 滑液は滑膜が炎症性サイトカイン(IL-1β、TNF-α)や機械的刺激に
応じて産生します。穿刺はこれらの要因を変化させません。
論文: Lohmander et al. (2007, Arthritis & Rheumatism, DOI: 10.1002/art.22823) は、
膝OA患者で穿刺後に疼痛が軽減するが、滑液産生の増加は観察されなかったと報告。
滑膜の活性は基礎疾患に依存。
臨床データ: American College of Rheumatology (ACR) のガイドラインでは、
穿刺が関節機能や滑液産生に長期的な影響を与える証拠はないと明記(2012年更新)。
具体例: 膝OA患者100人を対象にした研究で、穿刺群と非穿刺群の滑液再貯留率に差はなく、
再発は炎症マーカー(CRP)の高値と相関(Hill et al., 2007, Journal of Rheumatology, DOI: 10.3899/jrheum.060962)。
(2) 再貯留の真の原因:炎症と基礎疾患
メカニズム: 滑液が再貯留するのは、滑膜炎が持続し、血管透過性が進行したり、
滑液吸収が障害されたりするため。穿刺はこれを止める治療ではありません。
論文: Sellam & Berenbaum (2010, Nature Reviews Rheumatology, DOI: 10.1038/nrrheum.2010.135) は、膝OAで滑膜炎が関節水腫の主要因であり、
炎症性メディエーター(IL-6、PGE2)が滑液産生を増やすと報告。
穿刺後の再貯留は炎症の未解決が原因のようです。
定量データ: 膝OA患者の滑液中IL-1β濃度は健常者の10-20倍で、穿刺後も炎症が続く場合、
再貯留率は70-80%(Yatabe et al., 2009, Annals of the Rheumatic Diseases, DOI: 10.1136/ard.2008.092742)。
具体例: 膝OAで軟骨破片が滑膜を刺激し続けると、穿刺後2-3週間で水が再発。
ただし、これは軟骨損傷の進行が原因。
(3) 穿刺の安全性と関節への影響
安全性データ: 関節穿刺の感染リスクは0.01-0.1%と極めて低く、無菌操作下では
関節軟骨や滑膜への損傷はない。
論文: Shirtliff & Mader (2002, Clinical Microbiology Reviews, DOI: 10.1128/CMR.15.4.527-544.2002) は、適切な穿刺が関節に悪影響を及ぼさないと結論。
繰り返し穿刺でも軟骨摩耗や滑膜肥厚の増加は確認されない。
反証: 「抜くと関節が弱る」という説を検証した研究(例: Jones et al., 1993, British Journal of Rheumatology, DOI: 10.1093/rheumatology/32.9.780)では、穿刺頻度と
関節破壊の相関は見られなかった。
(4) 再貯留率とその誤解
データ: 膝OAで穿刺後の再貯留率は30-80%と幅広いが、これは疾患の重症度や治療状況に依存。
穿刺しない場合でも、炎症が続けば自然に溜まる。
論文: Felson et al. (2011, Annals of Internal Medicine, DOI: 10.7326/0003-4819-155-3-201108020-00008) は、再貯留が頻発する場合、機械的負荷や炎症コントロールの不足が原因と指摘。穿刺自体の影響は否定。


3. 「クセになる」という誤解を裏付ける反例がない
実験的検証: 動物モデル(例: ウサギの膝関節)で穿刺を繰り返しても、滑液産生の異常増加は見られず、
炎症誘発がない限り再貯留しない(Shi et al., 2014, Osteoarthritis and Cartilage, DOI: 10.1016/j.joca.2013.11.012)。
臨床観察: リウマチ患者で頻回穿刺を受けた症例でも、再貯留は疾患活動性(DAS28スコア)と相関し、
穿刺頻度とは無関係(Smolen et al., 2014, Annals of the Rheumatic Diseases, DOI: 10.1136/annrheumdis-2013-203976)。


4. なぜ「クセになる」と感じるのか?具体的なシナリオ
治療不足の場合:
例: 膝OAでNSAIDsだけ使い、滑膜炎が抑えられていない。穿刺後1か月で再貯留。
原因: 炎症が続くためで、穿刺が「癖」を作ったわけではない。
疾患進行の場合:
例: 軟骨がさらに摩耗し、滑膜への刺激が増加。穿刺を繰り返しても水が溜まる。
原因: 膝OAの自然経過であり、穿刺の影響ではない。
誤ったタイミングで運動:
例: 軽度水腫で抜いた後、すぐ運動して再発。
原因: 負荷管理不足で、穿刺が問題ではない。


5. 再貯留を防ぐための科学的対策
「クセになる」不安を解消し、再発を防ぐには、穿刺頼みではなく以下の治療が必須です
炎症のコントロール:
方法: ステロイド注射、NSAIDs、DMARDs(RAの場合)。
論文: Bellamy et al. (2006, Cochrane Database of Systematic Reviews, DOI: 10.1002/14651858.CD005321.pub2) は、ステロイドが滑膜炎を抑え、再貯留を有意に減らすと報告。
機械的負荷の軽減:
方法: 体重減量、膝サポーター、理学療法。
論文: Felson et al. (2011) は、体重1kg減で膝負荷が4kg減り、水腫リスクが低下すると示唆。
進行予防:
方法: ヒアルロン酸注射、軟骨保護剤。
論文: Wang et al. (2015, Osteoarthritis and Cartilage, DOI: 10.1016/j.joca.2014.11.014) は、ヒアルロン酸が滑液環境を改善し、再貯留を抑える可能性を報告。


6. 読者の疑問への直接回答
Q: 「抜くと癖になる」と聞いたけど本当?
A: 医学的に誤り。論文でも穿刺が原因で溜まりやすくなる証拠はない。再発は炎症が原因。
Q: 何度も抜くと関節が壊れる?
A: 適切な穿刺なら壊れない。壊れるのは疾患の進行が原因。
Q: 抜かずに治す方法は?
A: 炎症治療と負荷軽減で自然吸収を促すのが効果的。


7. まとめ
決定的回答: 「膝の水を抜くとクセになる」は誤解。医学論文と臨床データで、
穿刺が滑液産生や関節を「癖づけ」する証拠はありませんでした。
再貯留は基礎疾患の炎症や進行が原因であり、穿刺は安全で中立的な対症療法です。
納得ポイント: 再発を防ぐには原因治療が鍵。「抜くのが悪い」のではなく、
「抜くだけで終わらせない」ことが大事。
上記が今回調査した結果です。
冒頭でもお伝えしましたが、「膝に水が溜まる」のは「対症療法」だけで終わってしまい、
原因治療が出来ていないことが要因と考えられます。
次回のコラムではこの問題に対し、セルフエクササイズで予防・改善出来る方法を
深堀りしていきたいと思います。

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安部元隆
専門家

安部元隆(理学療法士)

GENRYU式 綜合整体

科学的根拠に基づいた知見と臨床経験から得られた知見を組合せ「根本原因を探し、戻りが少ない治療法」『GENRYUメソッド』を提供しています。問題点をキチンと細分化して捉え、1つ1つその問題を解決します。

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