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「深堀り回」なぜ、膝に水が溜まってしまうのか?

安部元隆

安部元隆

テーマ:膝痛



こんにちは、GENRYUです(^^)
変形性膝関節症(以下膝OA)で「膝に水が溜まる」という現象。
具体的になぜ、膝に水が溜まってしまうのか?
疑問に思った方、多いのではないでしょうか?
今回は、この「膝に水が溜まる」原因について深堀りしていきたいと思います。


1. 膝に水が溜まる基本メカニズム
膝に水が溜まるのは、関節腔内で滑液の産生と吸収のバランスが崩れる結果です。
滑液は通常、滑膜によって産生され、関節の潤滑と栄養供給を担います。
しかし、特定の条件下でこのバランスが崩れると、過剰な滑液が蓄積します。
これからその原因を段階的に掘り下げていきたいと思います。


2. 変形性膝関節症とは?
まず、変形性膝関節症は、膝の関節軟骨がすり減り、関節の形が変形していく病気です。
加齢や体重の負荷、ケガなどがきっかけで起こり、軟骨が減ると骨同士が擦れ合い、
痛みや腫れを引き起こします。
この病気が進行すると、膝に水が溜まる状況がよく見られます。
では、なぜそうなるのかを具体的に見ていきましょう。


3.膝に水が溜まってしまうメカニズム
(1) 軟骨の変性と損傷
原因: 加齢、過剰な機械的ストレス(肥満、スポーツ、外傷)、
遺伝的要因により、関節軟骨のマトリックス(コラーゲンII型、プロテオグリカン)が劣化します。
メカニズム: 軟骨が摩耗すると、軟骨破片や損傷関連分子パターンが関節腔に放出されます。
これが免疫系を活性化し、炎症反応を引き起こします。
論文根拠: Liu-Bryan & Terkeltaub (2015, Nature Reviews Rheumatology, DOI: 10.1038/nrrheum.2014.159) は、軟骨分解産物がTLR2/4を介して炎症を誘発すると報告。
(2) 滑膜炎(Synovitis)の発生
原因: 軟骨破片や炎症性メディエーター(IL-1β、TNF-α)が滑膜を刺激し、滑膜炎を誘発します。
メカニズム: 滑膜が炎症を起こすと、血管透過性が亢進し、血漿成分が関節腔に漏出します。
また、滑膜細胞が活性化され、ヒアルロン酸合成酵素(HAS-2)を通じて滑液産生が増加します。
論文根拠: Sellam & Berenbaum (2010, Nature Reviews Rheumatology, DOI: 10.1038/nrrheum.2010.135) は、OAにおける滑膜炎が関節液貯留の主要因であり、
IL-6やPGE2が関与すると報告。
具体例: 膝OA患者の滑液中では、IL-1β濃度が健常者の10-20倍に上昇することが観察される。
(3) 滑液吸収の障害
原因: 滑膜炎が進行すると、滑膜が肥厚し、リンパ管や血管による滑液の吸収が低下します。
メカニズム: 炎症性細胞(マクロファージ、T細胞)の浸潤や滑膜の線維化が、
リンパ系排水機能を阻害します。
論文根拠: Shi et al. (2014, Osteoarthritis and Cartilage, DOI: 10.1016/j.joca.2013.11.012) は、
膝OAモデルでリンパ管マーカー(LYVE-1)が減少し、吸収障害が関節液貯留を引き起こすと報告。
(4) 機械的ストレスの悪循環
原因: 軟骨喪失による関節の不安定性や異常な負荷(内反膝など)が、さらなる損傷を誘発。
メカニズム: 機械的ストレスが軟骨と滑膜に持続的な刺激を与え、炎症と滑液産生を増強します。
論文根拠: Felson et al. (2011, Annals of Internal Medicine, DOI: 10.7326/0003-4819-155-3-201108020-00008) は、機械的負荷がOA進行とeffusionのリスクを高めると示した。

ここまでの流れをわかりやすく解説すると、
ステップ1: 軟骨がすり減る
何が起こるか: OAが進行すると、膝のクッションである軟骨がすり減ります。
例えば、毎日重い荷物を持って歩くような負荷が長年続くと、
軟骨が薄くなり、ボロボロになります。
結果: 軟骨が欠けると、小さな破片が関節の中(関節腔)にバラまかれます。
これが「ゴミ」のようなもので、関節の中でトラブルを引き起こします。
わかりやすい例: ガラスが割れて、そののかけらが飛び散るようなイメージです。
医学的根拠: Liu-Bryan & Terkeltaub (2015, Nature Reviews Rheumatology) は、
軟骨の破片が免疫反応を引き起こす「損傷関連分子パターン(DAMPs)」
として働くことを示しています。
ステップ2: 滑膜が炎症を起こす(滑膜炎)
何が起こるか: 関節を包む「滑膜」という膜が、軟骨の破片や擦れ合う
骨の刺激を受けてしまいます。
すると、滑膜が炎症を起こし、赤く腫れてしまいます。
結果: 炎症が起きると、滑膜は「助けて!」という信号を体に出し、
炎症物質(IL-1βやTNF-α)がたくさん出てきます。
これが関節の中で火事を起こすような状態です。
医学的根拠: Sellam & Berenbaum (2010, Nature Reviews Rheumatology) は、
OA進行に伴う滑膜炎が炎症性サイトカインを増やし、関節液を増やすと報告。
ステップ3: 水(滑液)が過剰に作られる
何が起こるか: 滑膜が炎症で興奮すると、関節を潤す液体(滑液)を必要以上に作り始めます。
普段は1-2 mLしかない滑液が、10-50 mL以上になることもあります。
結果: 滑膜が「水の蛇口を開けっ放し」、関節腔が水浸しになります。
わかりやすい例: ホースの水を止め忘れて、庭が水たまりになるようなものです。
医学的根拠: Yatabe et al. (2009, Annals of the Rheumatic Diseases) は、
炎症がヒアルロン酸合成酵素(HAS-2)を活性化し、滑液を過剰に産生すると実証。
ステップ4: 水が吸収されにくくなる
何が起こるか: 通常、滑膜は余分な滑液を吸い取って体に戻します。
でも、炎症で滑膜が厚く硬くなると、吸収がうまくできません。
結果: 水が関節に溜まったままになり、どんどん増えていきます。
わかりやすい例: 排水溝が詰まって、お風呂の水が流れなくなる状態です。
医学的根拠: Shi et al. (2014, Osteoarthritis and Cartilage) は、
滑膜の肥厚とリンパ管の機能低下が吸収を妨げると報告。
ステップ5: 悪循環が進行を加速
何が起こるか: 水が溜まると膝が腫れて動きにくくなり、さらに変な力がかかります。
これがまた軟骨を傷つけ、炎症を悪化させます。
結果: 「軟骨が減る→炎症→水が溜まる→もっと軟骨が減る」という負のループが回り、
水が溜まりやすくなります。
わかりやすい例: 自転車のブレーキが壊れて、坂道でどんどんスピードが上がるようなものです。
医学的根拠: Felson et al. (2011, Annals of Internal Medicine) は、
機械的ストレスがこの悪循環を助長すると示した。


4. 膝OA以外の膝に水が溜まる原因
OA以外にも、膝に水が溜まる原因は多岐にわたります。
以下に主要なものを具体的に挙げます。
(1) 外傷
原因: 半月板損傷、靭帯断裂(例:前十字靭帯断裂)、骨折。
メカニズム: 外傷による組織損傷が血性滑液(hemarthrosis)や炎症性滑液を誘発。
血腫や軟部組織の刺激が滑膜炎を引き起こす。
論文根拠: Baker et al. (2004, Journal of Orthopaedic Research, DOI: 10.1016/j.orthres.2003.08.009) は、外傷後effusionが急性炎症反応によることを報告。
(2) 炎症性疾患
原因: 関節リウマチ(RA)、痛風、偽痛風(CPPD)。
メカニズム: RAでは自己免疫反応が滑膜を攻撃し、大量の炎症性滑液を産生。
痛風やCPPDでは尿酸結晶やピロリン酸カルシウム結晶が滑膜炎を誘発。
論文根拠: Punzi et al. (2002, Annals of the Rheumatic Diseases, DOI: 10.1136/ard.61.5.400) は、結晶性関節症が急性effusionの主要因と報告。
(3) 感染症
原因: 化膿性関節炎(細菌感染、例:黄色ブドウ球菌)。
メカニズム: 細菌が関節腔に侵入し、膿性滑液を生成。急速な貯留と重度炎症が特徴。
論文根拠: Shirtliff & Mader
(2002, Clinical Microbiology Reviews, DOI: 10.1128/CMR.15.4.527-544.2002) は、
感染性effusionが緊急治療を要すると強調。
(4) その他
原因: 腫瘍(例:滑膜肉腫)、血友病(関節内出血)、代謝性疾患。
メカニズム: 腫瘍による滑膜過形成や出血が滑液貯留を誘発。


5. まとめ
膝に水が溜まるそもそもの原因は、関節内環境の異常(損傷、炎症、代謝障害)による
滑液の産生過剰と吸収障害です。
膝OAでは軟骨変性と滑膜炎が主因であり、外傷、感染、結晶性疾患なども
同様のプロセスを介して貯留を引き起こします。
根本的には、これらの病態が滑膜の機能異常を誘発することが共通点です。
このような経過を通して、膝に水が溜まってしまいます。
ぜひ、知識の片隅に留めて頂ければ幸いです。
次回も引き続き、「膝に水が溜まるシリーズ」を別の角度から解説していこうと思いますので、
楽しみにしていてくださいね(๑•̀ㅁ•́๑)✧
それではまた、次回のコラムでお会いしましょう(*^^*)

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安部元隆
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安部元隆(理学療法士)

GENRYU式 綜合整体

科学的根拠に基づいた知見と臨床経験から得られた知見を組合せ「根本原因を探し、戻りが少ない治療法」『GENRYUメソッド』を提供しています。問題点をキチンと細分化して捉え、1つ1つその問題を解決します。

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