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安部元隆プロは大分朝日放送が厳正なる審査をした登録専門家です

踵が痛くて体重をかけられない...この症状を引き起こす「足底腱膜炎」とは何か?(概論編)

安部元隆

安部元隆

テーマ:踵痛



こんにちは、GENRYUです(^^)
歩いていると踵が痛い...
地面に踵をついた瞬間に踵が痛い...
踵が痛くて、体重をかけられない...
あなたは、こんなお悩みをお持ちではないでしょうか?
踵に痛みは「足底腱膜炎」といわれる症状により引き起こされることが多いです。
今回は、この「足底腱膜炎」で「踵に痛みが出る理由」と、
足底腱膜炎の病態全体をさらに詳しく掘り下げて説明していきます。
医学論文や研究からの知見を織り交ぜつつ、解剖学的、生体力学的、生理学的な視点から、
なぜ踵が痛みの中心となるのかを明らかにします。

「足底腱膜炎とは何か?」
足底腱膜炎は、足底腱膜が過剰なストレスや損傷を受けて発症する状態で、
特に踵骨(かかと)の内側に痛みを引き起こす疾患です。
かつては「炎症性疾患」と考えられていましたが、現在では「変性疾患」としての
側面が強調されています。


1. 足底腱膜の解剖学的特徴
構造:
足底腱膜は、踵骨結節から起始し、5つの足指の中足骨頭部に付着する厚い線維性バンドです。
主にI型コラーゲンで構成され、腱に似た性質を持つが、筋膜的な柔軟性も併せ持ち、
3つのバンドに分けられる(Clinical Anatomy, 2000)
中央帯(Central Band): 最も厚く幅広く、主要な機能的役割を担う。
外側帯(Lateral Band): 第5中足骨に付着し、外側アーチを支持。
内側帯(Medial Band): 第1中足骨に付着し、内側アーチを補助。
厚さ: 踵骨付近で約2〜4mm、中足部で薄くなり、弾力性と強度のバランスを保持。
足底脂肪パッドに覆われ、衝撃吸収を補助します。
アキレス腱、腓腹筋、ヒラメ筋と力学的に連動。

位置:
踵骨起始部は、特に内側結節(Medial Tubercle)が主要な付着点で、ここが痛みの主な発生部位。



2. 足底腱膜の機能
足底腱膜は、足の構造的安定性と運動機能に不可欠な役割を果たします。
以下に、その主要機能を医学的根拠とともに詳細に説明します。
①足のアーチの支持(静的安定性)
役割:
足の縦アーチと横アーチを維持し、体重を支える土台を提供。
メカニズム:
足底腱膜は「タイロッド」のように機能し、アーチの崩れを防ぐ(Journal of Anatomy, 1995)。
踵骨と中足骨を結ぶ張力で、アーチの高さを保持。立位時に体重が加わると、腱膜が緊張し、
アーチの扁平化を制限。
医学的根拠:
Foot & Ankle International, 1999の研究では、足底腱膜を切断した足の
モデルでアーチ高が有意に低下し、扁平足様の変形が観察された。
これにより、腱膜が静的安定性の主要要素であることが確認。
重要性:
アーチ支持がなければ、体重負荷で足が過度に広がり、関節や靭帯に過剰な負担がかかる。
②衝撃吸収と荷重分散(動的安定性)
役割:
歩行、走行、跳躍時の地面からの反力(Ground Reaction Force)を吸収し、足全体に分散。
メカニズム:
足底腱膜は弾性を持つコラーゲン構造により、衝撃を部分的に吸収し、
足底脂肪パッドと協働して踵への負荷を軽減。
踵接地時(Heel Strike)、腱膜が伸張し、エネルギーを一時的に蓄積。
その後、足が離地する際にエネルギーを解放(Journal of Biomechanics, 2001)。
医学的根拠:
Clinical Biomechanics, 2004のバイオメカニクス研究では、足底腱膜が踵接地時の
ピーク衝撃力を約15〜20%軽減すると報告。
腱膜の張力がなければ、踵骨や足関節に直接的なストレスが集中。
重要性:
衝撃吸収が不十分だと、足底腱膜炎や疲労骨折などの障害リスクが増大。
③ウィンドラス機構による推進力の生成
役割:
歩行やランニングの推進段階で、足を硬いレバーに変え、効率的な推進力を生み出す。
メカニズム:
「ウィンドラス機構」は、足指の背屈時に足底腱膜が巻き取られるように張り、
アーチを高めるプロセス(Journal of Bone & Joint Surgery, 1964)。
具体的には:
足指が背屈(例: つま先立ちや蹴り出し時)。
腱膜が中足骨頭部で巻き上げられ、踵骨との距離が短縮。
アーチが上昇し、足が硬直化して推進力が増強。
医学的根拠:
Journal of Applied Physiology, 1998では、ウィンドラス機構が歩行時のエネルギー効率を
約17%向上させると報告。腱膜の張力がなければ、推進力が低下し、歩行速度が落ちる。
重要性:
この機構が機能しない場合、ふくらはぎ筋群に過剰な負担がかかり、疲労や腱膜へのストレスが増加。
④下肢全体の力学的連鎖への寄与
役割:
アキレス腱やふくらはぎ筋群(腓腹筋・ヒラメ筋)と連動し、下肢全体の運動連鎖を調整。
メカニズム:
足底腱膜は、アキレス腱を介してふくらはぎの筋力が足に伝わる「後足部-足底連鎖」を形成。
踵接地から蹴り出しまでの動作で、腱膜が筋力と地面反力を調和させ、膝や股関節への負担を軽減。
医学的根拠:
Gait & Posture, 2007の研究では、足底腱膜の硬さや短縮が腓腹筋の柔軟性を低下させ、
下肢全体の運動パターンを変えると報告。腱膜が「力の伝達ベルト」として機能。
重要性:
この連鎖が崩れると、足底腱膜炎やアキレス腱炎、膝痛などの連鎖的障害が発生。
⑤感覚フィードバックの補助
役割:
足底腱膜には機械受容器が存在し、足の位置感覚やバランス調整に寄与。
メカニズム:
腱膜の伸張や圧迫が神経終末を刺激し、脳に足の状態を伝える。これが姿勢制御や運動調整に影響。
医学的根拠:
Journal of Neurophysiology, 2005では、足底腱膜の感覚入力が立位バランスに影響し、
特に踵接地時の安定性に関与すると示唆。
重要性:
感覚機能が損なわれると、足の動きが不正確になり、さらなるストレスが腱膜にかかる。
まとめると足底腱膜は、
①足のアーチ支持
②衝撃吸収
③推進力生成
④下肢連鎖の調整
⑤感覚フィードバックという5つの主要機能を果たします。
医学的研究(*Journal of Biomechanics, Foot & Ankle Internationalなど)により、
これらが足の安定性と運動効率に不可欠であることが証明されています。


3. 足底腱膜炎の病態の詳細
足底腱膜炎の病態をさらに深く理解するために、急性期と慢性期の違い、
組織学的変化、リスク因子を説明します。
①急性期 vs 慢性期
急性期:
微細損傷と軽度炎症が主体。赤みや熱感は稀で、主に機械的ストレス後の鋭い痛み。
数日から数週間で自然治癒する場合もあります。
慢性期:
炎症が収まり、変性が進行。組織の菲薄化、微小血管増生、神経過敏性が特徴。
3ヶ月以上続く場合、「慢性足底腱膜症」と分類(Journal of the American Podiatric Medical Association, 2014)。
②組織学的変化
正常時: コラーゲン線維が整然と並び、弾力性と強度を保持。
病態時:
コラーゲンの断裂、乱れ、瘢痕化。
腱膜厚の増加(肥厚)や菲薄化が混在。
一部症例で骨棘や脂肪パッドの萎縮(Foot & Ankle International, 2004)。
③リスク因子
内在性: 加齢(40〜60歳でピーク)、扁平足・ハイアーチ、筋力低下。
外在性: 長時間の立位、過度な運動、不適切な靴、肥満。


4. 踵に痛みが出る理由
足底腱膜炎で踵が痛む理由は、解剖学的、生体力学的、神経生理学的な要因が
複雑に絡み合っています。以下にその詳細を説明します。
①踵骨付着部への機械的ストレス集中
解剖学的背景:
足底腱膜の踵骨付着部(特に内側結節)は、体重負荷が最初に集中する部位。
歩行時に地面からの反力(Ground Reaction Force)が踵に直接加わり、腱膜に引張応力が発生。
研究(Journal of Bone & Joint Surgery, 2003)では、踵骨内側結節が腱膜の「
力学的弱点」として機能し、微細損傷が起こりやすいと報告。
ストレスメカニズム:
立位や歩行で腱膜が伸張され、踵骨付着部に最大の張力がかかる。
特に足のアーチが低い(扁平足)場合や高い(ハイアーチ)場合、この張力が増大。
加齢や繰り返し負荷で腱膜の弾力性が低下すると、応力が吸収されず、付着部に集中。
結果: 微細なコラーゲン断裂や組織の疲労が踵骨付着部で発生し、痛みの起点となる。
②変性と組織変化
病態の進行:
初期には機械的ストレスによる微細損傷が起こり、急性期には軽度の炎症反応
(サイトカイン放出、浮腫)が観察される。
ただし、Foot & Ankle International, 2004の組織学的分析では、慢性例では炎症細胞より
コラーゲンの変性が優勢。
変性は、コラーゲン線維の乱れ、菲薄化、瘢痕化を伴い、腱膜の強度が低下。
踵への影響:
変性した腱膜は、踵骨付着部で剥離や骨棘形成を引き起こすことがある。
骨棘自体は痛みの直接的原因ではないが(Radiology, 1991)、周辺組織の圧迫やストレス増大を助長。
結果: 変性組織が踵骨に慢性的な刺激を与え、持続的な痛みを誘発。
③血流不足と修復の停滞
病態的背景:
足底腱膜は血流が豊富な組織ではない(低血管性)。慢性ストレスで微小血管が損傷し、
さらに血流が減少。
Journal of Orthopaedic Research, 2006では、慢性足底腱膜炎患者の腱膜に血流不足と
低酸素状態が確認され、これが修復を妨げると報告。
踵への影響:
踵骨付着部は血流が特に乏しく、損傷後の回復が遅延。炎症性老廃物や代謝産物が蓄積し、痛覚を刺激。
結果: 血流不足が踵周辺の組織過敏性を高め、痛みが慢性化。
④神経過敏性と痛みの増幅
神経学的背景:
踵骨付着部周辺には、外側足底神経や内側足底神経の枝が分布。これらが圧迫や刺激を受けると
痛みが誘発。
British Journal of Sports Medicine, 2010では、慢性足底腱膜炎に
神経因性疼痛(Neuropathic Pain)が関与し、神経終末の過敏性が痛みを増幅すると示唆。
「第一歩の痛み」のメカニズム:
休息後(例: 朝起床時)、腱膜が硬直し、神経が圧迫されやすい状態に。
歩行開始時の急激な伸張で神経が過剰反応し、鋭い痛みを生じる。
結果: 踵周辺の神経過敏性が、機械的損傷以上に痛みを強く感じさせる。
⑤力学的連鎖の崩れ
関連構造の影響:
ふくらはぎ筋群(腓腹筋・ヒラメ筋)の短縮や硬さが、アキレス腱を介して足底腱膜に
過剰な張力を伝える。特に踵骨付着部に負担が集中。
Clinical Biomechanics, 2007では、腓腹筋の柔軟性低下が踵痛を悪化させると報告。
結果: 力学的バランスの崩れが踵に持続的なストレスを与え、痛みの原因となる。
⑥足底腱膜の機能的特性と限界
弾力性と強度:
腱膜は約2%の伸張に耐えられるが、それを超えると
微細損傷が発生(Journal of Orthopaedic Research, 2003)。
この特性が衝撃吸収と推進力の両立を可能にする。
非収縮性:
筋肉のように自ら収縮しないため、負荷への適応はコラーゲンの再配列や修復に依存。
加齢による変化:
加齢でコラーゲンの弾力性が低下し、変性リスクが増大(Foot & Ankle International, 2006)。
機能障害が足底腱膜炎にどうつながるか
足底腱膜の機能が過剰に負荷されたり、損なわれたりすると、足底腱膜炎が発症します
過剰な伸張: 扁平足や長時間立位でアーチ支持が過負荷になり、踵骨付着部に損傷。
衝撃吸収不足: 不適切な靴や硬い地面で腱膜が過伸張し、微細断裂。
ウィンドラス異常: ふくらはぎの硬さで腱膜が過緊張し、変性が進行。
連鎖崩れ: 下肢の筋力低下やアライメント不良が腱膜に集中ストレスを与えます。
その構造的特性(コラーゲン主体、非収縮性)と
力学的役割(ウィンドラス機構、タイロッド効果)が、これらの機能を支えています。
過剰な負荷や加齢による変性がこれらの機能障害を引き起こし、足底腱膜炎の原因となるのです。
まとめると、足底腱膜炎で踵に痛みが出る理由は、
①踵骨付着部への機械的ストレス集中
②変性による組織脆弱化
③血流不足
④神経過敏性
⑤力学的連鎖の崩れが複合的に関与するためです。
医学論文では、これが炎症よりも変性が主体であることが強調され、踵が痛みの中心となる
解剖学的・生理学的根拠が明らかになっています。
ここまでが、医学論文を参考にしながら「足底腱膜炎」とは何か?についての説明です。
次回は、いよいよその「足底腱膜炎」への対処法を解説していこうと思います(๑•̀ㅁ•́๑)✧
それではまた、次回のコラムでお会いしましょう(*^^*)

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安部元隆
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安部元隆(理学療法士)

GENRYU式 綜合整体

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