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井上博文

大学院・大学編入受験のプロ

井上博文(いのうえひろふみ) / 塾講師

株式会社コムニタス

コラム

何はともあれまずは論文を探して読む

2022年4月16日

テーマ:実は難しい研究計画作成方法

コラムカテゴリ:スクール・習い事

論文を読むことは必須

4月も終盤に入りました。大学の授業も始まり、院生になった人、就職した人はとりあえずゴールデンウィークを目指して、頑張っているのではないかと思います。塾生の方々は、残念ながら、ゴールデンウィークはほとんど関係なく、通常通りの生活になります。この時期は、志望校の募集要項が発表を待つ時期でもありますが、同時に研究計画の準備を始める時期でもあります。大学院受験や大学編入受験において、研究計画を書くにせよ、志望理由を書くにせよ、論文を読むことは必須です。また、最新の情報を入手するにも論文を読まねばなりません。
ここ数年、コロナ禍やロシアのウクライナへの侵略など、大変なニュースが多いですが、巷に出回るのは酒場の野球評論家のような情報がほとんどです。
私は大学で授業をする時、レポートを毎回書いてもらうのですが(と言っても400字程度で提出期限は1週間)、その際、論文を引用文献にするように要求しています。そうすると、アンケートで、「何で論文なんて読まないといけないのか、意味がわからない」と書かれました。私からすると「何で?」の回答としては「大学生だからだよ」と言いたくなりますが、大学生で論文を読まずに何を勉強する気だろうと、疑問に思わざるを得ません。まして、今はインターネットで探せて、PDFで読むことも簡単です。「それさえ嫌なの?」と問いたくなるくらい、論文を読むことは基本的なことです。
コロナが不安であれば、まずはテレビを見るのではなくて、お笑い芸人の「気持ち」を聞くのでもなくて、今わかっている事実を収集する習慣を身につけることが基本です。政治禍と違って、論文は極力嘘はつかないようになっています(最近は怪しいとも言われますが)。少なくとも、テレビやインターネットでテキトーに言われるものよりも、一定の調査がなされているものを見た方が事実に迫れます。

とにかく読む

今、京都コムニタスでは研究計画や志望理由を作ったり、研究室訪問用の研究計画の打ち合わせをしています。そのためには皆さん、たくさん論文を集めています。しかし、当然ながら、論文を集めるだけでは意味がありません。中には形から入るということで、まず数をたくさん集めたがる人もいるのですが、集めたものを読みこなさねばなりません。学者の多くは「読めばわかる」人々です。そのような人は、早く、たくさん、正確に読めます。つまり情報処理が早いのです。しかし、我々一般人には論文を読むことは簡単ではありません。ですから、最初は時間をしっかりかけて読むのが良いでしょう。できるだけ良い論文を読むことが大切です。正確には良い論文を識別できるようになることが大切です。できればメモをとれるものを持って読み、必要な箇所は抜き出しておくと良いでしょう。私は大きめの付箋を大量に持っていました。今でもよく使います。良くないのは、適当に線を引くことです。「なんとなく」「大事そうな」箇所に線を引く癖がつくと、必ず、全部大切に見えてしまうようになります。そうすると、本や論文が線だらけになり、結局後から読み直しにくくなってしまいます。資料はできるだけ触れずに、きれいに保ち、メモを正確に取れるようになると、後で使えるものを残す訓練にもなります。また、論文を読む際に意識しておきたいことは、頭から最後まで通して読むことよりも、自分にとって「必要な情報」をしっかり入手するという意識です。特に問題設定の箇所、実験や調査とその結果の情報は重要です。私は個人的に結論はそれほど重視はしていません。その上で自分なりの読み方を身に付けましょう。

どのくらい読めばいいのか

よくいただく質問です。結論から言えば、「可能な限りたくさん」ということになります。複数の学校を受験する場合、あるいは在籍する教授陣の人数が多いほど、読まねばならない論文数は増えますが、ここはそんなものと割り切りましょう。情報消化は研究者としては基本的なことですので、あまり本数にこだわらず、いつも「可能な限り」と考えておくのが妥当です。また近いところでよくある質問として、「自分の専門以外の論文も読んでおいた方がいいですか?」というものもありますが、これも回答は同様で「可能な限りたくさん読んでおいた方がいい」ということになります。
よく大学院の志望理由を考える時に、ホームページや要項に記載される先生方の専門分野や担当講義を見るのですが、もちろん、それが間違っているわけではありませんが、その場合、必ずしも、その先生の本来論文を書いているような専門分野が記載されているとは限りません。やはり、先生方の本来の専門分野は、これまで書かれた論文を読むのが最もよいということになります。論文をしっかり読んで、その上で、各先生の専門分野を把握できるまで、読み込むのが良いということです。
次に、専門外の分野から受験する場合、専門の論文を読みこなすのが難しいという場合があります。世にはかなりの数の「読み方」に関する本があるので、それらを参考にするのは悪くはありません。しかし、基本的にこれは訓練ですので、まずは慣れましょう。どこになれるかというとまずは形式です。これについては、心理学の場合、日本心理学会が出している執筆の手引きは大いに参考になります。このような「書き方」に関するものを読むと、多くの人がその形式に準じて書いていることに気づき、徐々に慣れてきます。それだけでもかなり読みやすくなります。是非、参考にしてください。


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