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あなたの会社にも介護離職予備軍が。介護離職を防止するためのポイント

2023年1月5日

テーマ:ワークライフバランス

コラムカテゴリ:法律関連

社労士&アンガーマネジメントコンサルタントの三谷です。
今回は、企業における介護離職防止のポイント、について解説します。

介護期間3年を超えると離職が多くなる

独立行政法人労働政策研究・研修機構の
「家族の介護と就業に関する調査(2020年3月)」によると、
介護期間が「3年超」では離職率が16.3%であり、
「1-3年以内」では1.4%と、離職率に顕著な傾向が見られます。

また、2017年から介護休業の分割取得(最大3回に分けて取得可能)が
法定されましたが、上記調査によると、
「分割取得可」では離職率が2.8%に対して、「分割不可」が10.9%と、
分割取得の有無も離職率に大きく影響を与えていることが分かります。

介護離職対策は長期介護を見すえたものにする

これらの調査結果を踏まえると、企業が介護離職を防ぐ方法として、
今後は長期介護者への対策を充実させる必要があると考えます。
なぜなら、今、あなたの会社で介護離職者が少ないのは、
たままた介護期間が短期である可能性が高いからです。
介護は育児と違い終わりが見えない不安もあることから、
介護が長期に及んだ場合にも安心して働ける職場であることを、
従業員にあらかじめ示しておくことが必要です。
そのために、①長期介護者の把握、②制度周知を行いましょう。

長期介護者の把握

筆者の関与先企業に、「実は数年前から60代の親の介護をしています」
という30代後半の社員の方がいました。
なぜこの方の介護状況が分かったかというと、
この会社で全従業員対象の介護に関するアンケート調査を行ったからです。
この調査で今まで見えなかった従業員の介護に関する不安や実態が見えてきました。

出産や育児と比べて、
介護のことを職場の人間に話すのをためらう従業員は少なくありません。
介護期間が長くなると離職率が高まる傾向にあるので、
潜在的な介護離職者に早めにアプローチするためにもアンケート調査を行い、
実態を把握するようにしましょう。
アンケート用紙は、厚生労働省のHPからもダウンロードできます。
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/koyoukintou/ryouritsu/model.html

制度の周知

介護休業の分割取得が離職率の低下に効果があることは前述の調査結果が示しています。
これは介護が長期化した場合にも従業員にとっては非常に利用しやすいという点が挙げられます。
もったいないのは、企業が介護休業や介護休暇等の制度を整備していても、
従業員がそれらの制度の存在を知らないために離職してしまうケースも見られることです。
介護休業等の制度を周知する際は、次の内容を重点的に伝える内容にするとよいでしょう。

(1)対象者
正社員しか介護休業を取れないと思っているパートもいます。
パートやアルバイト等期間を定めて雇用される労働者であっても、
取得予定日から起算して、93日を経過する日から6か月を経過する日までに契約期間が満了し、
更新されないことが明らかでなければ、介護休業は取得できます。
また、労使協定で介護休業等の対象者を制限している場合は、
その旨も含めて、誰が介護休業等の制度を利用できるかを明確に伝える内容にしましょう。

(2)「要介護状態」の意味
私の経験上、介護休業と介護休暇に関して質問が多いのが、
「家族がどのような状態の時に介護休業、介護休暇が取れるのか」というものです。
この点、介護休業あるいは介護休暇は、労働者が要介護状態(負傷、疾病または
身体上もしくは精神上の障害により、2週間以上の期間にわたり常時介護をする状態)
にある対象家族を介護するための休業、休暇です。

ここでいう「常時介護をする状態」というのは、厚生労働省が判断基準を示しています。
https://www.mhlw.go.jp/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/koyoukintou/ryouritsu/kaigo/img/common/youkaigo.pdf

上記の判断基準のうち、そのひとつは、
「介護保険制度の要介護状態区分において要介護 2 以上であること」です。

そのため、このように家族がどのような介護状態の時に利用できる制度なのかが
分かる内容にしておくと親切でしょう。

(3)介護休業給付金
雇用保険の被保険者が介護休業を取得した場合、
一定の要件を満たせば、国から介護休業給付金が支給されます。
支給額は、介護休業開始時賃金月額の67%です。
育児に関しては育児休業給付金の存在を知っていても、
介護休業でも同じような給付金を受給できることを知らない労働者はいます。

(4)会社独自の支援制度
法を上回る介護支援制度を設けている場合や会社独自の支援制度がある場合は、
その内容もしっかり周知しましょう。例えば、法定の介護休業は
「対象家族1人につき、通算93日、3回まで分割取得可能」という制度ですが、
会社独自で「通算期間200日、分割5回まで可」という制度を設けているような場合です。

(5)社内での制度利用実例
社内で介護休業や介護休暇等の制度を利用した実例がある場合は、
その内容も周知するとよいでしょう。

以上、これらを含めた介護支援制度を周知する方法としては、
動画で従業員に見てもらう方法も取り入れましょう。
人事担当者等が上記の周知内容を話し、
それをYouTube等の動画コンテンツにアップ、
そのURLを従業員に知らせるのです。
社内セミナー、勉強会などで周知する方法もいいですが、
従業員が多い場合や支店が複数ある場合には、
動画コンテンツでの周知が見てもらいやすく効率的にもよいと考えます。

この記事を書いたプロ

三谷文夫

労使ともに幸せになるための労務管理のプロ

三谷文夫(三谷社会保険労務士事務所)

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