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退職妨害増加。労働者ができる対策

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退職妨害の背景に、経営者側の一方的な理屈と労働者側の無知

退職妨害増加。労働者ができる対策

「辞めたくても、辞められない」。先日、NHKで、いわゆる「退職妨害」に関する内容が取り上げられていました。「離職票を発行してもらえない」「辞めるのだったら懲戒解雇扱い」をはじめ、「辞めたら損害賠償するぞ」などと脅されるケースもありました。ブラック企業というと、労働者を酷使し使い捨てにするような企業のことをいいますが、逆の意味で、辞めさせてくれない会社もブラック企業といえるのではないでしょうか。

では、なぜこのような退職妨害が起こるのでしょう。その背景には、経営環境や経営者側の一方的な理屈、そして労働者側の無知にあるのではないかと思います。

特に中小のオーナー企業の経営者は、自分が今まで仕事を頑張ってきた自負のようなものがあるため、「従業員も同じように身を粉にして働くべきだ」という理屈で、言い方は悪いですが、労働者を奴隷のように扱うことも無きにしもあらずです。そのため、労働者が辞めると申し出ても簡単には手放そうとはしません。今まで手足のように働いてくれていた従業員からの申し出であればなおさらです。また、経済状況が低迷している中でリストラをし、従業員数が限界で何とか回っている会社では、従業員一人が抜けてしまうと仕事が回らなくなってしまいます。

一方、労働者も、民法や労働基準法等の働く上での基本的な権利(あるいは義務)についての知識を勉強することなく社会に出ている人がほとんどです。そのため、法的には退職することに何ら問題がない場合であっても反論できないことが多いのではないかと思います。義理や人情で退職をためらう人もいるでしょう。むしろ、こちらの方が多いかもしれません。経営者側はその心理につけこんで退職妨害に至るケースもあります。

最終的には、しかるべき相談機関に話をすることが大切

このような退職妨害にあった場合、労働者ができる対策は次のとおりです。

① 会社の就業規則等で退職に関する事項を確認する。
② 就業規則等がない場合は、労働条件通知書あるいは雇用契約書で退職に関する事項を 確認する。
③ ①や②ができない場合、過去の退職者の事例がどうだったのかを確認する。
④ ①~③で自己の退職手続きについて何ら問題がないことが確認できたら、会社側に再度退職の意向を伝える。
⑤ 会社がそれでも退職を認めない場合、労働基準監督や、労働問題に詳しい弁護士等へ相談する。

最終的には、しかるべき相談機関に話をすることが大切です。労働者には退職の自由があるとはいえ、話がこじれた場合には一人で悩まないことです。強制的な労働によって、身体的・精神的に病んでしまうこともあります。労働基準法5条には、強制労働の禁止が規定されています。例えば、損害賠償請求を脅しに使い、退職を認めない行為は、「脅迫」によって「労働者の意思に反して労働を強制」していると解釈される可能性もあります。

ちなみに、同第5条違反は労基法上最も重い罰則が科せられます。会社側としても、このような退職妨害が労基法違反になる可能性があることを念頭に置いておく必要があるでしょう。

三谷文夫

労使ともに幸せになるための労務管理のプロ

社会保険労務士

三谷文夫さん(三谷社会保険労務士事務所)

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