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井上博文

大学院・大学編入受験のプロ

井上博文(いのうえひろふみ) / 塾講師

株式会社コムニタス

コラム

「証拠なき」の行く末

2021年1月7日

テーマ:大学院に行くメリット

コラムカテゴリ:スクール・習い事

アメリカでトランプ氏支持者が、当人に煽られ、暴動を起こし、一時議会を占拠し、死者まで出ているようです。
こちら
日本も他人のことを言えたものではありませんが、滅茶苦茶になっています。この大統領を全く無批判に支持してきたのが、この国の前政権ですが、そろそろ総括した方がいいのではないかと思います。

かの国とこの国の異様な政治に共通するのは「証拠を出さない」「証拠を出せない」のにも関わらず、一方的に大きな声で支離滅裂な主張をし、不都合な証拠は「無視」「改ざん」「隠滅」をするということです。民主主義は良くも悪くも多数決で決まってしまいますが、分断を徹底し、実は過半数の支持を得ていないにも関わらず、対立候補に勝つことで「全国民の支持を得た」とばかりに、やりたい放題する、という構図が続いています。そして自分が対立候補に負けると、「不正」「違反」「陰謀」と叫ぶ。昔からこういう人はいたと思うのですが、こういった人が組織のトップになるということはなかったと思うのですが、最近はそうではないようです。

人は、意外と都合の良いものを信じます。正確には思い込みます。都合がいいということさえ思い込みなのですが。そこに証拠は関係ありません。自分の目で見たもののみを「正しい」と思い込み、「そうではないものは間違っている」とさらに思い込みを強めていきます。
私が研究の世界に足を踏み入れた時に、師匠から一番最初に「最もやってはならないこと」として習ったことです。私自身も、勉強の幅を広げたいと思い、他大学の先生の門をたたき、ある実験に参加させてもらいました。その先生は超能力や偽科学のうそを暴くことをライフワークとしており、様々なところでスプーン曲げなどを実演していましたが、たいていの場合、目の前でスプーンが曲がると「すごい」となり、先生がスプーンを空中に放り投げて、受け止めるとスプーンが曲がっているという芸をすると、一番近くにいる人ほど「空中で曲がるのが見えた」と言うのです。当の先生が、先に足に当てて曲げたのですよ、と種明かしを丁寧に説明しても「いいや、空中で曲がった」と「自説」を曲げなかったものです。私はこれを何度も見て、人の思い込みは怖いなぁとつくづく実感しました。人は正しいことを信じるとは限っておらず、都合の良いものを思い込む傾向が強く、そういう人ほど、科学や根拠、証拠、データを無視する傾向にあります。こういった人がトランプ氏のような大きな声の人に煽られると、大暴れしてしまうのだろうと思います。

一方、科学は時に暴走します。なぜならこのコラムにも書きましたが、99.9%は仮説とも言われるくらい、一つのことがわかると、はるかに多くのわからないことが出てくるのです。尻尾をつかんだつもりが、京都銀行の宣伝くらい「ながーい」尻尾であることも多く、尻尾の端までたどり着くと、我々の手に負えないものであることに気付かされてしまうこともよくあります。それにさらに挑んでいくのも科学ですが、科学はトライアンドエラーとは言うもののエラーの方が圧倒的に多いのです。トライしても成功するわけではなく、エラーを繰り返すのが科学です。その中で得られたエビデンスには一定の敬意を払う必要はあります。それでも科学をもってしても、わからないことの方が多いのです。コロナとの向き合い方も、何度も言っていますが、まだわからないことだらけです。私たちはその環境下において、わかっていることを実践する以外の方法はほとんどありません。わからないことが多いと、実験と称したりして、倫理にもとることをしてしまうことも歴史上たくさんありました。しかし、科学は反省ができますので、倫理が沿うことで、暴走をくい止めることもできるようになりました。

しかし、学術会議問題に代表されるように、この国の政治禍は学問を軽視し、自分の都合で利用します。都合の良いときには「専門家が言ったから」。都合が悪いと「政治判断」。ふざけるのもたいがいにして欲しいものです。学問の世界では到底あり得ないことが、人々が記憶できないくらい日々繰り返され、証拠がなければ何をしても良い、法律の抜け目をくぐれば良い、都合が悪ければ改ざんすれば良い、都合の悪いことには「回答を差し控える」を使えば良い。こういう人々が政治を担っています。
しかし、証拠なきこういった人々の行き着く先は、今回のアメリカと同じなのだろうと思います。話し合いでもなく、抗議でもなく、武力でさえなく、暴徒と化して、嫌いで気に食わない相手を攻撃することです。私たちは学問に生きるものとして、科学を手放さず、一定のリスペクトをもってエビデンスを見ながら、理性をもって、社会の中でポストコロナを目指したいと思っています。



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