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福味健治

建築主の思いを形にする注文住宅の専門家

福味健治(ふくみけんじ) / 一級建築士

岡田一級建築士事務所

コラム

住まい再好築【今どきの家は何故和風住宅が減っているのか】

2016年7月5日 公開 / 2018年2月13日更新

テーマ:【賢い家造り】

コラムカテゴリ:住宅・建物

最近新築される家で、和風住宅の数がめっきり減っています。


理由は幾つかありまして、一つ目は大手ハウスメーカーが和風住宅を造らないためです。何故造らないのかと云いますと、和風住宅は工場での生産ラインに乗らず、現場での施工が多くなるためです。
和風住宅の美しさは屋根にあります。屋根と云っても屋根瓦にこだわらず、軒裏の装飾であったり腕木や桁に装飾を施した化粧庇も含めての屋根です。現場施工が増えると熟練の大工さんが必要となり、ハウスメーカーが最も得意とする大量生産に向かない工法となってしまうためです。
二つ目の理由は、建築設計事務所の家造りです。大工さんの技能に依存することのない、国籍不明なデザインが幅を利かせて雑誌等の紙面を賑わせています。少し良いデザインがあると誰もがそれを真似して、一つの流行になっていたりします。これもコストパフォーマンスを追及すれば、建物に付随する不必要な装飾を排除する方が経済的であるとの観点から和風住宅が排除された結果と云えます。

和風住宅が嫌われている訳ではありません。

京都や奈良に行けば社寺仏閣を求めて、多くの観光客が訪れています。外国人旅行者も京町屋に泊まるのがブームになっていたりします。人々は和風住宅を見捨てていないのです。作り手が作る立場の論理で、和風住宅を排除した結果が現代の日本家屋の現状です。和風住宅の良さは経年変化です。何の塗装も施さない白木は年数を経るにつれて茶色っぽく変化していきます。その変化が建物に重みを加え歴史を感じさせる様になります。和風住宅の中に侘びとか寂びの風情が込められている為です。北摂大山崎町にある千利休が建てたとされる茶室「待庵」は400年経過した今も、その美しさを保っています。

洋風住宅や無国籍なデザイン住宅と比較した場合、不必要と思われていた軒裏の装飾であったり、化粧庇であったりの和風的な要素が、建物そのものの経済的寿命を延ばしていると云えます。

和風住宅の欠点は?

ただ、従来の和風建築をそのまま踏襲していくと、現代人のライフスタイルに合わないのは明白です。まずは空気調和の概念が無い時代から存在するのが和風住宅ですから、夏は暑さに任せ、冬は寒さに任せると云った建て方です。
窓を閉め切ってクーラーをガンガン掛けると云った間取りや造りになっていません。また地震に対しても続き間の多い南面に開口部が集中する間取りは不利です。
建物に付加価値を与える和風のテイストをエッセンスとして取り込み、現代のライフスタイルに合う耐震的にも危惧のない建て方が求められているのも事実です。

ライフスタイルを現代人に調和させ、伝統様式に則った美しさを付加価値として、盛り込むことにより結果的に資産価値を高める家づくりが可能になるのです。


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