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福味健治

建築主の思いを形にする注文住宅の専門家

福味健治(ふくみけんじ) / 一級建築士

岡田一級建築士事務所

コラム

養老院「三太」

2023年10月20日

テーマ:【カフェテラス】

コラムカテゴリ:くらし

谷村新司

10月8日に歌手の谷村新司さんがお亡くなりになりました。若い頃は大阪阿倍野界隈で良くお見掛けしました。それくらい親近感のある隣のお兄ちゃんと云った存在だった人だったのですが、訃報を耳にするにつけ人の命の儚さを感じてしまいます。また、自分の年齢も振り返ってみれば、いつまで第一線で働けるのかと考えてしまう出来事でもありました。
彼の作った歌は多くの国民に愛され、老若男女を問わず支持されています。若い子でも年寄りでも口ずさむ事の出来る歌ばかりです。

老人介護施設の現状

最近、老人介護施設の設計依頼を多く請けます。団塊の世代がいよいよ老齢期に差し掛かり、需要が増大している事が、仕事を通じて手に取る様に分かります。
グループホームや住居型介護施設、サービス付高齢者住宅、形態は少しづつ異なりますが、それらの施設は、共通して自活出来なくなった老人を集めて、集約的に生活の補助を行おうとするものです。
国の福祉の向上を志向する風潮もあり、今後定着したものになって行くでしょう。核家族化が進み子供が親の面倒を見なくなれば、こう言った施設が重宝されるのは当然の結果とも云えます。

老人介護施設のイメージ

皆さんは老人介護施設を聞いてどの様なイメージをされますか?私は施設のネーミングが頭をよぎります。多いのは「ひまわり」とか「さくら」と云った草花の名前の付いた施設でしょうか。次に「なごみ」や「やすらぎ」と云ったアメニティーを表現する語句でしょうか。
最近はそれらの言葉を聞くと、草花やアメニティーよりも先に、介護施設をイメージしてしまいます。

そこで、素朴な疑問が浮かんできます。
入居されている方はその名前が良いと思っているのでしょうか。

若い人から見る老人をイメージすれば、ひまわり・さくら・なごみ・やすらぎと云った語句になるのでしょうが、当の老人達は団塊の世代です。年寄りを自覚しつつも、それらの語句が自分達のアイデンティティーを表現する言葉と考えているとは私には思えません。

介護施設に入りたいですか?

長年の無理が祟り、意図せず体が不自由になったり、心が脆弱になり、介護を受ける身となるわけです。
多くの施設では色々な催し物を考えて、退屈しない様に過ごせる様、色々工夫を考えておられますが、基本的に死ぬまでの間の、繋ぎ時間を送る場となっています。
私には生き甲斐があって、そこに住んでいる様には見えないのです。果たしてこれが幸せでしょうか。
あの施設に入りたいと願ってもらえる施設なのでしょうか。子供世代は願っているかもですが、親世代は子供に負担を掛けたくないから仕方なしに入る施設となってはいないでしょうか。

生き甲斐のある施設

話しは谷村新司に戻ります。彼の訃報を報じるメディアが彼の曲を色々流しました。50年以上耳にしていなかった曲も流れました。「春は静かに通り過ぎていく」「明日への賛歌」「走っておいで恋人よ」etc・・・・・私が十代の頃に夢中になって覚え、コピーした曲です。
音楽とは不思議なもので、その曲を耳にするだけで、その曲が流行った時代の情景が目の前にアリアリと浮かんできます。曲を聞くまで頭の片隅にも無かった友人の名前や、しでかした事態の顛末や感情と云ったものが昨日の出来事の様に蘇って来ます。
同窓会でも同様の感覚に出会えます。容姿は変わっていても、多感な時代を共有した仲間に会うと、その当時の自分に戻ってしまいます。
生き甲斐のある老後と云うのはその辺に、ヒントがあるのではないでしょうか。

アリスのヒット曲に「冬の稲妻」があります。歌詞の中に(You're rollin thunder・・・)と云う一節があります。
発音が綺麗過ぎて 「ヨーロリンサンダ」に聞こえます。よーろりんさんた よろーりんさんた ようろういんさんた 養老院三太

こんなコンセプトの介護施設なら入ってみたい気もします^^

この記事を書いたプロ

福味健治

建築主の思いを形にする注文住宅の専門家

福味健治(岡田一級建築士事務所)

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