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福味健治

建築主の思いを形にする注文住宅の専門家

福味健治(ふくみけんじ) / 一級建築士

岡田一級建築士事務所

コラム

新築の家がたった3年で既存不適格建築物になってしまう!?

2022年7月29日

テーマ:【免震住宅・地震対策】

コラムカテゴリ:住宅・建物

新築の家がたった3年で既存不適格建築物に

2025年木構造の法改正に向けて国が動いています。今までフリーパスだった構造審査を審査対象に加えようとするものです(4号特例の廃止といいます)
そうなると2025年以前に建築された建物は、構造審査が行われなかった建物と云う事になり、構造的安全性が担保出来ていない為、2025年以降の建物とは区別され、2025年以前の建物は既存不適格建築物と云う烙印が押されます。
今年新築した建物が、三年経たないうちに既存不適格建築物となってしまうのです。違反建築物ではありませんので、そのまま住み続ける事は問題ありませんが、増築したり転売しようと思った時に問題が持ち上がります。増築しようと思っても、既存部分の構造の安全性が担保出来ていない為、増築部分以外の既存の建物の構造補強が必要になり、想定外の出費が伴う事になります。転売しようと思っても、購入者は安全が担保出来ていない為耐震補強工事をする事になり、その費用分の値下げを要求して来るでしょう。
築後3年でそういう建物になってしまうと云う事です。

何故その様な事になるのか

現在、木造住宅の建築確認申請では、例外を除けば構造審査はなされていません。
申請する設計者の裁量に任されています。建築士にとっては責任と裁量権を与えられていて有難い話しなのですが、それを逆手に取って木構造の知識のない建築士まで、堂々と申請出来る状態になっています。一級建築士に任せているから大丈夫だろうと普通は考え勝ちですが、一級建築士の試験に木構造の問題は出題されません。つまり木構造の勉強をしなくても一級建築士の試験をパスする事は可能なのです。
大手設計事務所で超高層ビルの設計を手掛けていた一級建築士が独立して、手始めに木造住宅の設計を請け負った処、何をどうして良いか分からなかった・・・と云う笑えない笑い話を、今まで何度も耳にして来ました。
最近、プロの建築士から、木構造の設計だけお願いしたいと云う問い合わせが多く舞い込む様になって来ました。提供された図面を拝見すると木構造の基礎すら分かっていない、間取り図面を数多く見受けます。例えば1間半の壁の中央1間分に窓を設け、両袖に45cm程度の袖壁を設けたプランです。カーテン溜まりを考えると中央に窓を持って来るのは間違いでは無いのですが、窓を端に寄せて90cmの袖壁を耐力壁として用いた方が明らかに構造的に強くなります。
木造住宅に限らず、住宅は南側に開口部が多く・大きく存在し、北側には小窓しかつかない傾向があります。耐力壁の少ない南側に、細い両袖壁を設けて涼しい顔をしてる建築士が多い事に不安を感じています。
国交省が4号特例を廃止して、建築士の裁量権を制限されても致し方ない状態だと考えています。

今から出来る対策は?

2025年に法改正される予定で動いてはおりますが、おおまかな骨子が漏れ聞こえるだけで、具体的な説明会等が行われた分けではありません。
しかし、規制が強化されるのは間違いが有りませんので、3年後に価値を落としてしまう様な家の建て方をしない事が唯一の対策となるでしょう。
具体的には、木造の二階建ての住宅であっても、許容応力度計算(構造計算)をしっかりと設計事務所やハウスメーカーに要求する事です。しかも耐震等級2や3と云った、より耐震性能の高い規格を要求すれば、既存不適格になる事はないのではと考えています。

この記事を書いたプロ

福味健治

建築主の思いを形にする注文住宅の専門家

福味健治(岡田一級建築士事務所)

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