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福味健治

建築主の思いを形にする注文住宅の専門家

福味健治(ふくみけんじ) / 一級建築士

岡田一級建築士事務所

コラム

秀光ビルドの家に調査に入りました

2017年3月27日 公開 / 2019年1月25日更新

テーマ:【賢い家造り】

コラムカテゴリ:住宅・建物

文春のスクープは真実か!?

週刊文春に、秀光ビルドの、違反建築のスクープが掲載されて、不安になったと、知り合いの人に頼まれて、秀光ビルドの家に、調査に入りました。
週刊誌の内容と云うのは、「A氏の家は、土台の下に、基礎が築造されていない部分や、土台と基礎が、10センチもズレている部分があり、明らかに建築基準法に違反していました。 また、一階と二階の、柱や壁の位置が、ズレており、耐震を強化する、“ダイライト”と呼ばれる耐力面材が、継ぎ接ぎで貼り付けられていた。これでは何の効力もありません」と云うセンセーショナルな、専門家の意見を添えて、違反建築を糾弾するカタチでまとめられています。
このスクープは、文春以外に、ネット上でヤフーニュースに載りましたが、それ以外の他のメディアは沈黙しています。
この記事を読んで、まず疑問におもったのが・・・・・

①基礎が築造されていない部分があり(写真右)・・・・
 → これは、設計図書と比較して、図書には示されているのに、施工されていないとなれば、大問題ですが、設計図書に記載されていなければ、あえて施工する必要はありません。
基礎の開口が90cm程度で、その基礎の立ち上がりを、地中梁として使用しておらず、上に柱が乗っていなければ、床下を点検する際の、通り道として通常は省略します。
土台がズレ落ちている様に見えますが、下がって見える木材は土台ではありません。断熱材を囲っている受け材です。

②基礎と土台が10cmズレておりの(写真左)・・・・
 → 土台の下に、基礎パッキンが見えています。本当に、土台の下に基礎が無いのであれば、基礎パッキンは脱落しているはずです。写真では、しっかりと基礎の上に、乗っている様に見えますので、この角度の写真から、ただちに欠陥であるとは判断出来ません。

③明らかに建築基準法に違反していました・・・・
 → どこを指して、建築基準法に違反しているのか、記事と写真だけでは、私には判断できませんでした。

④一階と二階の柱や壁の位置がずれており・・・・・
 → 一階と二階の、柱や壁の位置なんて、ズレるのが当たり前です。一般の家は、一階にリビングがあり、二階には個室が並んでいます。そんな間取りで、どうしたら、柱や壁の位置が揃うのでしょうか。この下りは、専門家のコメントではなく、素人の記者の、作文の可能性が高いです。

⑤”ダイライト”と呼ばれる耐力面材が継ぎ接ぎで張り付けられていました。これでは何の効力もありません・・・・
→ ここにも疑問を持ち、ダイライトの施工マニュアルを読み直しました。すると施工は、建設省告示1100号に準拠する、とありました。建設省告示1100号には、合板を耐力壁内で継ぐ事を認めています。継ぎ目さえ、適切に処理されていれば、何ら支障はありません。

秀光ビルドの家を調査

阪神間にある、閑静な住宅街の中に、その家はありました。新築まもない事もあり、外見からは、違反や構造的欠陥を認める事は出来ませんでした。
建築確認書を拝見しましたが、建築主が、企業名で申請されているにも関わらず、会社印でなく、認め印が押されていたとか、数点の書類的不備はありましたが、建築基準法に、違反した(図面と実際が違うとか)内容は、認められませんでした。
中間検査、竣工検査とも、検査機関の検査を受けており、検査済み書も発行されていました。
素人さんがよく気にする、ドアの軋みや、床鳴りと云った内容の、不備は散見されましたが、直ちに違反となるような内容はありませんでした。
私も、日頃散々ハウスメーカーの、家造りをこき下ろしていますので、別に秀光ビルドの、肩を持つつもりはありませんが、今回の、文春の記事は、興味本位で、覗き趣味的な要素が多いかと思いました。

私が本当に言いたいのはここ!!(劣悪な構造設計!!)

ただし、建築基準法に違反しない(週刊文春に書かれていたような違反建築ではない)家である、と云うだけであって、地震に強く、安全な家という訳ではありません。基準法上、違反か合法かを、検討する項目の中に「壁量倍率」があります。壁量倍率が1.0を上回れば、合法となりますが、この家は1.05でした。ギリギリセーフの範疇です。震度6強以上の地震が来れば、この家は倒壊します。新築でもです。
一般的な木造住宅の場合、構造計算(応力度計算)を行わず、簡易な壁量計算を、行う事が許されていますが、壁量計算で、合法になった家でも、構造計算を行うと、違法になる建物は、数多くあります。
簡易な壁量計算は、安全率を大きく見込まないと、危険なのですが、安全率はあまり強化されず、構造計算ばかりが、強化されてしまった為、ダブルスタンダード(二種類の基準)が出来てしまっています。
統計を取った訳ではありませんが、経験から私見を述べますと、簡易な壁量計算で、1.3以上の壁量倍率が無ければ、構造計算ではアウトになる建物が多いようです。
秀光ビルドの様な、大手ハウスメーカーでも、構造計算を行わず、簡易な壁量計算で、建物を建てているのです。
【正しい基礎の作り方はこちらから】
ここを修正しない限り、工事の見える化を宣言しても、多大な宣伝広告費を使ってイメージ造りをしても、安全性を担保出来るものではありません。
熊本地震では、壁量倍率1.25(耐震等級2)の家が倒壊しています。
この家の場合、阪神大震災や、熊本地震の様な地震に遭遇すれば、倒壊を免れません。
【危険な筋交い計算】
今年6月に発生した、大阪北部地震でも、計算上は、倒壊を免れるものの大破するレベルです。補修費に、数百万円を要する損壊レベルです。
現在の建築基準法は、建物の健全性を守るものではありません。人の生命を守る為の、最低基準だったのですが、その最低基準さえも、最近の地震結果から、怪しいものになっています。
建築基準法を守る意味は、建物が倒壊しても、合法的に建てられた建物だから、文句は言えない程度の、意味合いでしかありません。
調査に入った家の居住者には、破壊的な地震が発生したら、玄関から逃げる事は諦め、近くの窓を蹴破ってでも(蹴破る前に割れていると思いますが)外に飛び出す様に助言しました。ガラスの破片で、怪我をしても、下敷きになって死ぬよりましです。

又、建築基準法には、直接関係はありませんが、維持管理に関する問題が見受けられました。設備配管である、給・排水管が、コンクリートに埋め込まれていました。配管に、やり替えの必要が生じた場合、これでは、基礎コンクリートに、穴を開ける必要が生じます。構造の検討を、行わないまま穴を開けられるでしょうから、大事な鉄筋を、切断される恐れがあります。

同様に、秀光ビルドの家は、クーラー配管用のスリーブが、設置されていないので、クーラーを取り付けする際に、筋交い(地震の際に重要な耐力壁)を、切断する恐れもあります。筋交いを、切断すれば地震が発生した場合、建物の倒壊に直結します。
住宅業界も、建築基準法一本に頼る事を止め、住宅性能表示制度・長期優良住宅と云った、住宅の性能を高める法律を活用した家造りをすべきです。

安さで決めると家造りは失敗します

ハウスメーカーの家造りの良い点はワンストップです。お任せしていれば何もしなくても、一定品質の家を造ってくれます。
そこに良さを見い出して、積極的にハウスメーカーの家造りに賛同される方であれば、ハウスメーカーの家をお勧めします。

しかし、予算が無いから、安いから、ハウスメーカーの家しか仕方ない、と考えた方の失敗例を数多く見てきました。
ハウスメーカーの家は安いと考えるのは幻想です。ハウスメーカーに支払った建設費の1/4~1/3は宣伝広告費に使われています。
「ブランド」と云う、何の実体も無い、「良さそうに思える」と云う、雰囲気を維持する為に、大切な建築資金が、消えているのです。

家造りにこだわりたい方には、建築家との家造り、と云う方法があります。
大量一括購入によるコストダウン効果は望めませんが、その代わり標準仕様の制約がありません。好きなモノを、好きな様に組み合わせる事が可能です。構造にお金を重点的に掛けたり、エコを追求したり、自然素材にこだわるのも自由です。

オーダーメイドの家を設計するのですから、設計費は、ハウスメーカーと比べると割高ですが、宣伝広告費等に、お金は使いません。
トータルコストでは、建築家との家造りの方が、コストパフォーマンスが良くなります。ハウスメーカーの、設計従事者は、許認可申請を下ろすのが主な仕事で、工事現場を監理する事が殆どありません。
この事が多くの建築紛争の要因となっています。私は、大阪府建築士会の住宅相談員もしておりますが、建築紛争の相談を受けた時、設計監理者の存在すら知らない方が多くおられます。

建築家は、建築主の代理人(設計監理者)として現場が完成するまで、工事を監理します。住宅紛争の中で最も多いのが、建築主と、施工者間で起こるトラブルです。この手のトラブルの殆どが、設計監理者がいれば、未然に防ぐ事の出来たトラブルです。

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家造りを楽しみたい。
自分の目指す家を具体化したい。
そう思われる方は下のコラムもお読み下さい。

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