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福味健治

建築主の思いを形にする注文住宅の専門家

福味健治(ふくみけんじ) / 一級建築士

岡田一級建築士事務所

コラム

超大手ハウスメーカーが台風被害でぼったくり

2018年9月15日 公開 / 2018年9月17日更新

テーマ:【カフェテラス】

コラムカテゴリ:住宅・建物

瓦が数枚壊れただけなのに屋根全体を葺き直す様に云われた

先日、遠い親戚から、台風被害で困っているとの電話がありました。内容を尋ねると、この家は、10数年前にHMのS社で新築したとの事。全国的に展開している超大手メーカーの為、ブランド力や超大手の技術力、メンテナンス力等を信用して、s社に新築をお願いしたそうです。
今回の台風は関空の被害も然ることながら、近畿一円に大きな被害をもたらしました。知り合いの工務店も、台風当日だけで120件の被害相談を受けたと聞いています。
今回の家も、この台風の為に、何かが当たって屋根瓦の一部が破損してしまったそうです。電話の内容から被害の詳細は伺えませんでしたが、問題はこれからです。

一般の方が信用している、ブランド力や技術力は、こう云う不測の事態の時に、迅速な対応をして頂けるからと思っているのではないでしょうか。

この家の場合、数枚の屋根瓦が、飛んで来たモノに当たって、割れたりズレたりした為に、s社に連絡しました。するとs社のリフォーム担当部署の人が数名やってきて、建築主の要望も聞かないで、10数年前と今とでは、製品の規格が違う事を理由に、屋根全体を葺き替えると言い出して、ざっと300万円必要と云われたそうです。
300万円の根拠は保険金が300万円下りるからだそうで、こちらサイドの家に対する思い入れとか、予算とか(保険が下りると云っても免責があり自己負担は発生するのです)を全然考慮していません。これでは、自社の利益のみを追求しての発言と思われても仕方ありません。
オマケに、足場を掛けるついでだから外壁も塗り直しましょうとか言い出して、明細も何も示さず200万円かかります。と云ったそうです。
そんな工事は保険金も下りるはずも無く、お金がありませんと断ると「家のメンテにお金が掛かるのは当然でしょ。何故積み立てないのですか!」と逆切れされたそうです。
仕方なく、300万円もの保険金をどうやって下すのかを尋ねると、保険金の取得の代行等は個人情報保護の観点から一切出来ません。建築主サイドで行って下さい。とダメを押されたそうです。保険金を引き出すのは建築主の責任と云っている様なものです。
そもそも瓦が数枚欠けただけで300万円も保険金が下りるのでしょうか。
保険会社を納得させるには、専門家のそれなりの根拠提出が必要になるのではないでしょうか。
s社の見積もりはブランドだから、メクラ判で保険金を下ろしてくれるのでしょうか。

他の建築業者が手出し出来ない仕組み

このs社は、建築基準法に則らず、大臣認定を取得して、建物を建てています。すなわち、外壁の塗り替えや壁紙の貼替と云った、法規制のないメンテナンス以外は、このs社の独占になっているのです。瓦の破損も、一般工務店では、交換材料が手に入らず、手出しできません。在来工法で建てた一般的な家なら少々の材料と手間賃だけで10万円前後の補修費が、s社では三百万円の見積もりになって出て来るのです。
瓦だけの補修・交換であれば、その部分だけ新しくなり、他との釣り合いが取れませんので、ミテクレは悪くなります。しかし機能的には何等支障がありませんし、何年かすれば、それなりに馴染んできます。何故、全面葺き替えしないといけないのでしょうか。
屋根全体をやり直す姿勢の裏側に、みっともない継ぎ接ぎ補修を、世間に晒す事は出来ないという、s社側のエゴを感じます。

一社独占が招く悲劇

あまりにも横暴なメンテ担当者の発言なので、もっと強い姿勢でs社と交渉した方が良いとアドバイスしますと、s社のメンテ担当者にクレーマーと思われて、対応してもらえなくなったら困るので、怖くて出来ない、との返事でした。一般的な在来工法の場合なら、一つの工務店の見積もりが高くても、替わりは幾らでもありますから、建築主の主導で話しが出来ますが、独占的な工法だとメーカーの言いなりになってしまうのだと実感しました。

s社の、なんとなく良さそうに感じるブランド力と、大手に依頼していると言う安心感で、工事を依頼した結果がこの扱いです。

私でも、地震や台風と云った災害の後には、私が手掛けた家に対しては、別状ないかお見舞いに回っています。少しでも異常があれば、施工した工務店を呼び対処に当たらせます。
何故大手メーカーにこの様な対応は出来ないのでしょうか。
営業が仕事を取るだけで、契約してしまった顧客には関心がない。
工事部は建てるまでが付き合いでその後の面倒は見ない。
メンテナンスはリフォーム部門に任せきり。
人と人との付き合いが出来ていないから、対応がおざなりになるのではないでしょうか。云い方を変えれば、出会いから竣工・メンテまで一人で面倒を見る人がいない為に起こるトラブルではないでしょうか。
契約してくださいと頭を下げた営業マンが、メンテナンスの対応もしていたら、先ほどの様な高圧的な態度を取れたでしょうか。
メンテまで対応していたら、次の契約なんて取れないとの考えが、今回の様なトラブルを起こしているのではないでしょうか。

町の工務店さんであれば、起こり得ない下手くそな対応です。町の工務店さんがこの様な対応をしていれば、会社は一年と持ちません。

これだけ書いても、ブランドと云う実体のないモノに憧れて、すがってしまう人が後を絶たないのでしょう。

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秀光ビルドの家に調査に入りました

この記事を書いたプロ

福味健治

建築主の思いを形にする注文住宅の専門家

福味健治(岡田一級建築士事務所)

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