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福味健治

建築主の思いを形にする注文住宅の専門家

福味健治(ふくみけんじ) / 一級建築士

岡田一級建築士事務所

コラム

なんと!木造住宅は鉄骨や鉄筋コンクリートの家より地震に強い

2018年3月6日 公開 / 2018年3月20日更新

テーマ:【賢い家造り】

コラムカテゴリ:住宅・建物

木は鉄より地震に強い!


木の棒と鉄の棒で打ち合うとどちらが折れるでしょうか?
同じ大きさ、同じ太さでは、木の棒が折れてしまいます。想像通りですよね^^
では、大地震が発生した時、木の家は鉄の家より弱いのでしょうか?

物理的な回答としては、木の家の方が強いのです!!何故でしょう。。。。。。

「前にならえ」して、同じ体積の木と鉄の棒を持ち比べた時、どちらが大変ですか?鉄の方が重いので大変ですよね。
地震の時もそれと同じ力が建物に働きます。但し下向きにではなく横向きにです。
その力に対して、抵抗しようと思えば軽い構造体の方が地震に強いのは理屈でなくても感覚で分かりますよね。
地震に対してどれだけ強いのか比較するには、重さに対してどれ位の強度があるかを調べる必要があるのです。
それをちょっと小難しく理屈で説明します。

鉄は木より19.5倍も地震の影響を受ける!

材料の強さの種類として、引っ張り強度・圧縮強度・曲げ強度の三つが地震に抵抗する代表的な強度です。
同じ体積で木と鉄を比較しますと・・・・・・・
木は引張・圧縮・曲げ=900・380・700kg/cm2程度あります。
鉄は引張・圧縮・曲げ=4000・3500・1000kg/cm2あります。
鉄は木に対して4.4・9.2・1.4倍強い事が判ります。
鉄と木で同じ太さ・長さの棒で打ち合えば木が折れてしまうのはこの為です。
しかし、先ほども書きました様に、地震の場合軽いほど有利ですので、今度は木と鉄を比重で比較します。
木は比重が0.4程度であるのに対し鉄は7.8あります。なんと19.5倍も地震の影響を受けてしまうのです。

その為、同じ体積ではなく、同じ重さで木と鉄を比較をしますと、木は引張・圧縮・曲げ=4.4倍・2.1倍・15.4倍も鉄より強い事がわかります。不思議でしょ^^

それでは何故木造家屋が多く倒壊するのか!!

それでも、大地震のたびに木造家屋が多く倒壊しますよね。これはどう云う事なんでしょう。
木造の家が地震に弱いと感じていたのは、構造計算をせずに、ヤマ勘や経験で木造の家が建てられて来た為です。
建築基準法では構造計算によって安全を検証する事が義務付けされているのですが、確認申請を提出する時に、構造計算書を提出する義務がないザル法になっているのです。現在建築確認申請書を合法的に出しているビルダーさんでも、構造計算によって安全を検証した家は多くはありません。
逆に検査機関で、構造計算書を添付して確認申請すると、検査機関はチェックする義務が発生しますから、計算書を添付するなと指導する始末です。

勘や経験で家を建てるのは自殺行為

今まで培ってきた経験やノウハウでは、構造計算の代わりになりません。今までの地震による、木造建物倒壊事例の多さが構造計算を行わず建てた結果なのです。
構造計算によってどの部材にどの程度の力がどの部材に加わるのかを数値で検証して、それに耐えうる材料で建物を構成する事のみが、地震に耐えうる家となるのです。
子供にでも判る簡単な理屈が、政治的理由でないがしろにされています。

今後30年以内に南海地震が発生する確率が70%から70~80%に引き上げられました。今から新築する家がほぼ間違いなく南海地震に遭遇します。
新築時に僅かな経費を始末して、大事な家族の命を危険にさらして良いはずがありません。今後新築する家は必ず構造計算を行い、安全を数値で検証しましょう。
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「木造住宅の構造計算は不要」を信用してはいけない

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福味健治

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福味健治(岡田一級建築士事務所)

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