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福味健治

建築主の思いを形にする注文住宅の専門家

福味健治(ふくみけんじ) / 一級建築士

岡田一級建築士事務所

コラム

安くて良い家は実現可能か【コラム】

2016年8月19日 公開 / 2016年8月21日更新

テーマ:【賢い家造り】

コラムカテゴリ:住宅・建物

安くて良い家は可能です。但しそれなりの努力が必要です。
他人にお任せの家では安くて良い家は不可能です。何故なら造り手の考える安くて良い家と、住まい手が考える安くて良い家が異なる為です。

造り手の考える安くて良い家

安い→大量生産によるコストダウン可能な材料・工法の選定
    規格モジュールによる施工ロスの省略
    設計費用等諸費用の圧縮
    標準仕様による大量発注によるコストダウンetc
良い→施工が簡単な製品の選択
    メンテナンスに施工者が対応しなくてもメーカーが対応してくれる製品
    値引き率の高い製品
    市中に多く出回っていて価格競争がし易い製品・工法etc
となります。

住まい手の考える安くて良い家

安い→建築総額が安い家
    任せておけば簡単に手に入る家etc
良い→資産価値の高い家
    耐震性能の優れた家
    温熱性能の優れた家
    維持管理にお金が掛からない家etc
といったところです。

具体的にどう違うのか

施工者と住まい手の利害が一致している部分があるようにも思いますが、実は不一致な部分の方が多いのです。
例えば、
①大量生産によるコストダウンは資産価値と云う点においてマイナス要素となります。ありふれた材料は希少性を伴いませんので、飽きられる(資産を売却する事を考えると価格競争しなければならない)建物になります。
②設計を許認可申請のみに制限してコストダウンを図るのは、既にあるプランの中から間取りを選ぶか、少しアレンジを加える程度で、既製服に袖を通すような窮屈さを伴います。服なら失敗したで済まされますが、一生の買い物と云っても過言ではないマイホームに建築士が不在の家づくりは、弁護士を立てずに裁判に臨むようなものです。
③大量一括発注によるコストダウンは、施工者にメリットがありますが、そのコストダウンがそのまま住まい手の購入金額に値引きとして反映されているとは限りません。
④良いと勧める商品・製品にしても施工者にとって都合が良い商品・製品を勧める場合が多く、住まい手に寄り添って材料を推薦する訳ではありません。

どの様に努力すれば良いか

安くて良い家を実現しようと思えば住まい手も努力する必要があります。具体的にどう努力すれば良いかですが、建設金額の大小に係らず、親身に向かい合ってくれる建築士(設計事務所)を探すことです。これが唯一の努力です。
そこでディスカッションを行いながら、必要なもの・不要なものの取捨選択を行い、コストダウンを計ります。
自分たちの意図を正しくくみ取ってくれそうな設計事務所に設計図書を描いてもらい、耐震や温熱性能と云った数値で表せる性能を明確にして、一つの土俵をこしらえた後で工務店の見積もりを取ることです。設計図書と云うひとつの物差しを作成しておいて、複数社の工務店に競争見積もりすれば、単純に金額の比較だけで工務店を選らぶ事が可能です。営業マンが丁寧だったとかブランド力があるからとか住み心地に関係の無い主観的な業者選びを、価格比較の一点のみで客観的に選ぶ事が可能になります。

設計費用は高くないのか

2000万円の建物であれば、設計費用は監理料や長期優良住宅等申請料を含めて160万円前後です。金額だけ見れば決して安くはない金額ですが、2000万円の建物になるよう設計された設計図書で競争見積もりを行えば、工務店の得意不得意や発注時期・現場までの距離等で一割前後の差が出るのは普通です。金額で云えば1800万円~2200万円と実に400万円の開きが発生します。
同じ要望を、設計事務所を通さずに直接工務店に伝えれば、2200万円の見積書が出て来てしまう可能性が有ると云う事です。建築主に建築の知識があれば、値段交渉が可能ですが経験上殆どの方が見積書を鵜呑みにして、2200万円で契約してしまいます。
設計事務所に依頼すれば、同じ物差しでの競争見積もりが可能になりますので、1800万円で工事発注することが可能になります。設計料を160万円とすれば、1960万円の出費となり40万円安く理想の建物を得る事が可能となります。

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