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コラム

下請中小企業振興法の改正~働き方改革に伴うしわ寄せ防止~

2019年9月24日

テーマ:法律

コラムカテゴリ:法律関連

コラムキーワード: 働き方改革

働き方改革により、2019年4月より大企業に罰則付きの時間外労働の上限規制等が適用されました(中小企業は2020年4月施行)。これにより、大企業が自社の残業を減らすために、下請け等中小事業者に負担をかけるといった事態を防止し、下請等中小事業者の働き方改革の妨げとならないよう、2019年6月26日『大企業・親事業者の働き方改革に伴う下請等中小事業者への「しわ寄せ」防止のための総合対策』(以降「しわ寄せ防止総合対策」という。)を策定しました。
 「働き方改革の推進」および「取引適正化」推進する為、厚生労働省・公正取引委員会・中小企業庁が連携を図りながら、実施するとしています。

●「しわ寄せ防止総合対策」の4つの柱
①関係法令等の周知広報
②労働局・労基署等の窓口等における「しわ寄せ」情報の提供
③労働局・労基署による「しわ寄せ」防止に向けた要請等・通報
④公取委・中企庁による指導及び不当な行為事例の周知・広報

①関係法令等の周知広報
・新たに11月を『「しわ寄せ」防止キャンペーン月間』と位置づけ、大企業・中小企業経営トップセミナーの開催等、集中的な取組を実施。
・窓口、相談指導及び監督指導等のあらゆる機会を通じ、労働時間等設定改善法に加え、
下請事業者が払うべき努力の方向性や親事業者が行うべき協力の在り方を示した「振興基準」等についてもリーフレット等を活用し周知。
・労基署が行う働き方改革関連法に関する説明において、地方経済産業局の職員による働き方改革に伴う「しわ寄せ」防止に向けた周知啓発を行い、必要に応じて相談に応じる。 等

②労働局・労基署等の窓口等における「しわ寄せ」情報の提供
・労働局及び労基署等の窓口において、下請等中小事業者から相談が寄せられた場合や下請等中小事業者に対する監督指導時等において、大企業等の働き方改革に伴う「しわ寄せ」を把握した場合、リーフレット等を活用し「振興基準」等の説明を行うとともに、地方経済産業局に相談情報を提供。

③労働局・労基署による「しわ寄せ」防止に向けた要請等・通報
・労働局は、管轄の大企業等に個別に訪問し、取引上必要な配慮をするよう努めなければならない(労働時間等設定改善法第2条第4項)とする規定に関する要請等を重点的に実施。
・下請等中小事業者に対する監督指導において、賃金の支払い(労基法第24条)・労働時間(労基法第32条)違反等の労働基準関係法令違反が認められ、その背景に親事業者による下請代金支払遅延等防止法(以下「下請法」)等違反行為の存在が疑われる場合には、公取委・中企庁に通報。

④公取委・中企庁による指導及び不当な行為事例の周知・広報
・大企業等の働き方改革に伴う下請等中小事業者へのコスト負担を伴わない短納期発注等の下請法違反の疑いのある「しわ寄せ」にいて、公取委・中企庁は下請法等に基づき、厳正に対応。
・「しわ寄せ」に関して実際に行った指導事例や不当な行為事例について、業界団体・個別企業へ周知、広報の実施。

 厚生労働省では、時間外労働の上限規制や年次有給休暇5日取得義務の施行に伴い、改正労働時間等設定改善法(平成31年4月1日施行)において、他の事業主と取引を行う場合において、長時間労働につながる短納期発注や発注内容の頻繁な変更を行わないよう配慮すうように努めることを義務づけています。
 
また、中小企業庁でも、下請中小企業振興法に基づく「振興基準」を改正(平成30年12月28日施行)、親事業者に対して、
①自らの取引に起因して、下請事業者が労働基準法関連法令に違反することのないよう配慮すること
②やむを得ず、短納期または追加の発注、急な仕様変更などを行う場合には下請事業者が支払うこととなる増大コストを負担すること
③親事業者は、下請事業者の人員・業務量の状況を可能な限り把握することに努め、適正なコスト負担を伴わない短期発注や納期遅れを理由とした受領拒否や減額等の行為をはじめ、下請事業者の働き方改革を阻害し、不利益となるような取引や要請は行わない者とすること
といった規定を新設しています。
下請法の「運用基準」についても、2016年12月に改正があり違反事例が大幅に増加(66事例から141事例)となりました。2017年度の立入検査では、958社のうち867社に対して書面による改善指導が行われました。また、違反が認められた親事業者のうち270件に対しては、減額した下請代金・支払遅延に係る遅延利息等の返還指導が行われています。
下請法では、下請事業者を個人又は資本金額もしくは出資の額が一定以下の法人の事業者と定めています。企業対企業だけ気を付ければよいわけではありません。個人事業主に対しても適正な取引を実施していきましょう。

この記事を書いたプロ

鈴木圭史

労務相談の専門家

鈴木圭史(ドラフト労務管理事務所)

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