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外国人の人材派遣会社の新規立ち上げ

2019年9月28日

テーマ:派遣

コラムカテゴリ:法律関連

コラムキーワード: 特定技能退職 手続き

派遣会社の立ち上げについて、派遣労働者として外国人を雇用するも日本人を雇用するも許可申請の手続き自体は同じです。
違いが出てくる部分といえば、実際に外国人を雇入れる(派遣する)ときでしょう。外国人には在留資格があるのでその在留資格に該当する職業へ派遣する必要が出てくる点や留学生等で資格外活動の許可を得ているものについては、上限時間(1週28時間以内)が決まっていること、雇用保険や社会保険の手続きに違いが出てくる点等です。
ここでは、新規で法人の派遣会社を立ち上げる場合について説明します。

【派遣の許可要件】
派遣の許可を得るためには
(ア)資産要件 
(イ)事務所の要件 
(ウ)派遣元責任者・職務代行者の選任 
(エ)社会保険の整備 
が重要です。

(ア)資産要件 
①基準資産が2000万円以上×事務所の数
②基準資産の額≧負債の総額の1/7
③現金預金1500万円以上×事務の数
*基準資産=資産総額(繰延資産および営業権を除く)-負債の総額

新規で法人を立ち上げる場合(事業所1つの場合)は、設立時の貸借対照表が
(借方)現金預金2000万円  (貸方)資本金2000万円
であれば問題ありません。

(イ)事務所の要件
④事務所の広さが20㎡以上である事
⑤鍵付きのキャビネットがある事(個人情報を保管するため)
⑥派遣元責任者・職務代行者の席がある事
⑦面談・教育訓練のスペース(仕切りなどでプライバシーが保護されていること)

(ウ)派遣元責任者と職務代行者の選任
⑧派遣元責任者を選任する。派遣元責任者は派遣元責任者講習を受講した者かつ成年に達した後3年以上の雇用管理経験を有する等一定の要件を満たしたものがなれます。
⑨職務代行者(派遣元責任者が不在の場合に対応する者)を選任する。経歴や派遣元責任者講習の受講義務はありません。
⑧⑨はその事業所に専属のフルタイムの者である必要があります。
代表取締役が派遣元責任者を担当されているのを見たことがありますが、仮にこの代表が他の企業でも代表取締役等である場合は、兼業とされ労働局で原則許可されません。

(エ)社会保険の整備
社会保険や雇用保険、労災保険(以下「労働保険」)の加入手続きをします。
社会保険は、法人の場合は強制です。また、労働保険(労災保険・雇用保険)についても、職務代行として労働者を最低1人は雇入れることになるので原則加入となるでしょう。

社会保険の新規適用届は提出後、事業所番号がわかるまで時間がかかります。許可申請の手続きの際、まだ番号が発行されていないという場合は、社会保険の加入手続きをしているということの証明ができれば問題ありません。加入者全員の資格取得届(控え)の写しを提出しましょう。

上記以外にも、登記簿謄本・定款に「労働者派遣事業」を実施する旨の記載が必要です。

労働局で派遣の新規許可申請が受理されてから許可証の発行まで少なくとも2か月はかります。また、派遣の許可証には有効期限があり、3年後に「許可更新」、以降5年毎に更新を繰り返す必要があります。その他にも、役員が引越した場合や派遣元責任者が変更になった場合に「変更届」の提出や毎年の「報告書」の提出が必要です。
許可をとれば終わりではなく、許可を取ってからが大変です。派遣業を始める前に「労働者派遣事業関係業務取扱要領」「労働者派遣事業を適正に実施するためにー許可・更新応手続きマニュアルー」「不具合な待遇差解消のための点検・検討マニュアル~改正労働者派遣法への対応~」等に目を通し、派遣法について理解しておきましょう。

【外国人の派遣】
雇入れようとする外国人が、手続きをしっかり行っているか確認しましょう。
●活動制限のない在留資格
「永住者」や「定住者」等が該当します。これらの在留資格は、活動制限がないので、日本人と同様に思っていてよいでしょう。

●在留資格に基づく派遣
「介護」や「技術・人文知識・国際業務」「技能」等、就労ビザの在留資格を持っている方は、その業務については派遣可能ですが、許可をとらずに資格外の業務に派遣することは違法となります。
すでにその在留資格を持っているとき:
出入国管理局に「所属(契約)期間に関する届出」が必要です。また、退職した場合も届出が必要となります。

まだ在留資格を持っていないとき:
「在留資格認定証明書交付申請書」を提出し、在留資格をえる必要があります。

●資格外活動許可
 外国人が許可された在留資格に応じた活動以外に収入を伴う活動を行う場合は、あらかじめ許可を受けなければなりません。在留資格によっては、資格外活動の許可がすこし異なります。
「留学」「家族滞在」等の方は、原則1週28時間以内であること及び活動場所において、風俗営業等が営まれないことを条件として企業等の名称・業務内容等を指定せず資格外活動の許可を受けることが可能です。
一方、「介護」「研究」等の在留資格の資格外活動も、資格外活動の許可を得た範囲で派遣が可能ですが、工場やコンビニ等の単純作業では認められません(翻訳や通訳等はOK)。雇用主である企業の名称や所在地、業務を個別に指定する必要があります(派遣先の概要や派遣契約書の提出が必要な場合もあります)。

●派遣禁止の在留資格
在留資格が「技能実習」や「特定技能(農業・漁業を除く)」の者を、派遣労働者として雇用することは禁止されています。また、特定技能の農業・漁業についても派遣事業者に一定の要件が課せられます。

外国人を雇い入れる場合は、「在留資格」がどうなっているか、しっかりチェックすることが重要です。

この記事を書いたプロ

鈴木圭史

労務相談の専門家

鈴木圭史(ドラフト労務管理事務所)

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