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コラム

幼稚園・保育所における労務トラブル事例

2018年6月5日

テーマ:労務トラブル

コラムカテゴリ:法律関連

コラムキーワード: 退職 手続き

幼稚園・保育園はストレスの多い職場です。近年は、幼稚園・保育園に対し、保護者などからさまざまな要求や要望が寄せられるようになってきたため、職員の負担は増えるばかりです。

こうしたなか、幼稚園・保育園の労務トラブルが目立つようになってきました。幼稚園・保育園は一般的に労務管理の意識が低いため、労務トラブルの種が非常に多いのが実態です。

この記事では、残業代やメンタルヘルスなど、幼稚園・保育園の労務トラブルについて解説しながら、女性の働きやすい職場づくりについても言及します。

多岐にわたる幼稚園・保育園の労務トラブル

全産業で慢性的な人手不足が続いていますが、幼稚園・保育園はより深刻な状況です。

現在、首都圏を中心に自治体が待機児童を一掃するために、幼稚園・保育園を新規に建設しようとしているものの、人手不足が足かせになって、一向に進んでいない状況が続いています。

こうしたなか、新規採用が難しいことが世間で認識されつつあり、職員の定着を図る必要性がクローズアップされています。幼稚園・保育園の労務管理は、正直な話、今までほとんど行われてきませんでしたが、ここに来て、その重要性が認識されてきたのです。

幼稚園・保育園の職員は、日々ストレスフルな生活を送っています。好奇心いっぱいの子どもたちはどのような行動を起こすのか、予測不可能です。そのため、目を離すことができません。近年は、モンスターペアレントなど、ささいなことでクレームをつける保護者もいるため、業務の厳しさはさらに増しています。

幼稚園・保育園の労務管理は、上記で挙げたメンタルケアのほか、変形労働時間制や管理監督者の範囲の設定、就業規則など、多岐にわたります。幼稚園・保育園で働いている人の特徴は、なんといってもほとんど女性であることです。そのため、労務管理は「女性にやさしい職場づくりはどのようなものか」を念頭に置いて行う必要があります。

変形労働時間制の誤解など、具体的な労務トラブル事例

まずは「メンタルケア」について取り上げます。幼稚園・保育園で行われる業務は「子どもの世話」というデリケートなものです。職員は有資格者であることから、ある程度の知識や経験は持ち合わせているものの、思いがけない事故を起こしてしまい、メンタルを壊してしまう恐れあります。

幼稚園・保育園では、ぜひ「メンタル相談室」のような職員の悩みを聞く仕組みを設けましょう。話を聞いてくれる人がいると思えるだけで、人の心はだいぶ軽くなるものです。

近年は、専門の心理カウンセラーと提携し、相談体制を整える幼稚園・保育園が増えてきました。新規採用が難しい昨今、定着のための施策として検討したいものです。

次に「変形労働時間制」です。幼稚園・保育園の業務時間帯は、早朝から深夜までに及ぶため、変形労働時間制やシフト制を採用しているケースが大半です。「変形労働時間制」は、労働基準法の時間規制を1週および1日単位ではなく、単位期間における週あたりの平均労働時間によって考える制度です。

「変形労働時間制」は、労働時間をコントロールするには便利な制度ですが、誤解して運用している事業者があまりに多いです。

その誤解とは、「変形労働時間制を採用していれば、残業代を支払う必要はない」ということです。労働が定めた労働時間を超過した分、残業代は支払わなければなりません。近年、残業代を請求する労働者は増えてきましたが、「変形労働時間制」に対する無知が、残業代請求訴訟を引き起こす恐れがありますので、注意しましょう。

幼稚園・保育園は職員の定着に注力すべき

幼稚園・保育園においては、「管理監督者の範囲」をあいまいにしているケースも散見されます。飲食店の労務管理では「名ばかり管理職」が有名ですが、幼稚園・保育園においても同じことが行われています。

管理監督者の考え方において特に重要なことが「管理監督者の実態があるかどうか」です。管理監督者とされているのに、「指揮権がない」「了解を取ることが義務づけられ、自分の意思で業務を進めることができない」などが確認される場合は、管理監督者とはとても言えないので注意しましょう。

女性活躍が叫ばれるなか、幼稚園・保育園においても女性が定着するための施策は必要不可欠です。有給休暇は当然ですが、バケーション休暇や生理休暇など、職員にメリットのあるさまざまな制度を設けてワークライフバランスを整えていきましょう。

幼稚園・保育園の職員は、結婚や出産を機に退職するケースが多くなっています。
たとえいったん退職しても、職場に戻りやすい雰囲気を作ることで、定着率が上がります。働きやすい環境が整備されれば、職員の士気が高まり、仲間意識も芽生えてきます。このような良い循環があれば、労務トラブルの減少を目指すことは可能です。

今回は、幼稚園・保育園における代表的な労務トラブルについて解説しました。もちろん、就業規則など、必要な規定を整えることが先決です。こちらに手をつけることができていない場合は、早急に対処しましょう。

この記事を書いたプロ

鈴木圭史

労務相談の専門家

鈴木圭史(ドラフト労務管理事務所)

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