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鈴木圭史

労務リスクの改善のプロ

鈴木圭史(すずきけいじ)

ドラフト労務管理事務所

コラム

派遣のよくある労務トラブル事例

労務トラブル

2018年5月24日

派遣労働の仕組みはとても複雑です。そのため、労務トラブルが発生しやすくなっています。
今、日本社会は「働き方改革」が声高に叫ばれており、働き方そのものが変わりつつあります。派遣労働もその例外ではなく、さまざまな改革が行われています。その最たる例が、改正労働契約法でしょう。

この記事では、派遣労働の仕組みについて簡単に概観した後で、発生しやすい労務トラブルについて解説します。また、業界で取りざたされている「2018年問題」についても言及します。

派遣労働は仕組み上、労務トラブルが起きやすい

派遣業界は、労務トラブルが発生しやすい業種のひとつです。
その理由は、労働者派遣の仕組みが複雑なことに起因しています。それでは、まず労働者派遣の仕組みについて簡単に解説しましょう。

労働者派遣のプレーヤーは、派遣元A社、派遣先B社、労働者Cの3者。労働契約は、派遣元A社と労働者Cが締結していることが特徴です。

通常の雇用契約の場合、労働者Cは、派遣元A社で就業することになりますが、派遣労働のケースでは、労働者Cが派遣先B社で就業することになります。

つまり、労働者Cは雇用契約を締結した派遣元A社に勤務しているのですが、実際は派遣先B社の仕事を手がけるわけです。

このような体制になると、派遣元A社は労働者Cの管理監督が難しくなります。
というのも、繰り返しますが、就業場所がB社であるためです。また、派遣先B社が労働者Cに対して、本来依頼するべきではない仕事を押しつけるおそれもあります。

ミスコミュニケーションに伴う労務トラブルの事例

労働者派遣の仕組みを概観したところで、労務トラブルの事例について見ておきましょう。

まず、よく見られるのが上述した労働者の管理監督の難しさに起因する労務トラブルです。
労働者Cは、雇用契約に定められた一定の業務のみを行うだけでよく、それ以外の業務をする必要はありません。しかし、日本の雇用契約は、職務の「無限定性」を基礎としているため、労働者Cに対して、雇用契約に定められていない仕事を押しつけるケースが散見されます。

「無限定性」とは、会社から「やりなさい」と命じられたあらゆる業務を受け入れること。
正規社員では一般的なものなので、企業もその意識で派遣労働者を使いがち。そんなことをしては、派遣労働者が不満を持つことは避けられず、「雇用契約に違反している」などという労務トラブルに発展するおそれがあります。

この労務トラブルに対処するためには、派遣労働者が手がける仕事の中身を明確化し、労働契約書の中身を絶えずブラッシュアップすることが大切です。派遣業界における労務トラブルは、派遣元と派遣先のミスコミュニケーションに起因するケースもあります。派遣元、派遣先、労働者の3者による適切なコミュニケーションこそ、労務トラブルの防止に役立ちます。

労務規定全般を見直す時期にある派遣業界

さて、2018年は派遣業界が岐路に立たされる年です。というのも、「2018年問題」が取りざたされているからです。

2013年に成立した改正労働契約法により、派遣労働者に対しても「5年転換無期ルール」が適用されることとなりました。「5年転換無期ルール」とは、簡単に言えば、5年間雇用契約が継続している派遣労働者を6年目に正規雇用しなければならないというルールです。2013年から5年経過する2018年に、この問題に直面する企業が続出しています。

「それならば、5年経過する前に退職させればいい」と思うかもしれませんが、事はそう単純ではありません。なぜならば、不当な辞めさせ方は、労務トラブルの発生につながるおそれがあるからです。

実際のところ、全国において「雇い止め」が大量に発生しています。「雇い止め」が起きて困るのは、派遣労働者だけでなく、派遣先も同じ。今まで派遣労働者が手がけていた業務を誰かが担う必要があるからです。派遣元は、「2018年問題」に対処すべく、優秀な派遣労働者の囲い込みと派遣先への説明を尽くすべきです。

近年、「働き方改革」が本格化していますが、派遣労働者もその例外ではありません。
派遣元は、派遣労働者への雇用の安定を図ることや教育訓練を施すことなどが義務づけられています。また、賃金や福利厚生などの労働条件を均衡にすることも求められています。

最後に昔からある労務トラブルである「偽装派遣」について触れておきましょう。
これは、派遣元A社が労働者Cと雇用契約を結ばずに、派遣するケースです。雇用契約を締結すると、派遣元A社は社会保険料の負担を余儀なくされます。この負担を避けるために、労働者Cを個人事業主扱いにして派遣する事例があります。「偽装派遣」は、相当に悪質な例として見られており、露見すると労働者派遣の許可が取り消される恐れもあります。

前述した通り、労働者派遣の仕組みは複雑です。そのため、労働者派遣における労務トラブルは多岐にわたります。ぜひ一度、オペレーション全体のみならず、労務規定全般も見直してみてください。

この記事を書いたプロ

鈴木圭史

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