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コラム
成長できる経営者は、事業投資と資産運用を、こう戦略的に行う
2024年3月3日
1、経営とは、資本を事業に投資し、売上から利益をあげて、その利益を事業投資する活動のこと
企業の経営とは何でしょうか?
この問いに、あなたは、どうお答えになりますか?
僕は、企業の経営とは、事業を構想・計画し、事業資本を集めて(貯めて)、それを事業の経営資源に投資し、その売上から利益をあげ、その利益を事業に再投資して、拡大を続ける活動であると答えます。
企業は、人件費(役員の報酬を含む)を中心とする、高い固定費が増え続ける組織です。したがって、その組織を継続的に維持するためには、利益を上げ続けることが必要です。
加えて、企業が販売する商品やサービスには、商品ライフサイクルがあり、どんなに売れている商品でも、競合の参入と需要の減退の両輪に突き当り、その販売は、必ずどこかでピークアウトする運命にあります。
そのため、企業が存続するためには、今の事業から利益をあげ、それを商品・サービスの質的向上をはじめとするマーケティング活動や、新規商品サービスやソリューションを生み出すイノベーションに投資を続け、それを継続しなければなりません。
今の利益を投資し続けることが、企業の存続の条件となります。経営資源に対する事業投資こそ、企業の経営の本質的な活動です。
2、成長する経営者の事業投資に、資産運用は、こう位置付ける
一方、事業投資という活動は、事業の計画に基づき、行うべきものです。小口の運転資金レベルの事業投資は、日常的な事業活動の中で行われますが、設備投資や店舗出店などの事業投資は、数年間の検討期間と計画をえて、実行されるものです。
そのため、経営者は、事業活動の中でえた利益を、利益留保の形で、純資産の中に保留し、現預金を流動資産として蓄える必要が出てきます。
しかし、1990年代から2000年代の日本のような、デフレ時代は別として、経済の健全な状態下では、常時、インフレが進行しています。そのため、事業が長年にわたって、現預金を保留すると、その価値は、目減りをしてゆきます。
2024年現在、日本のような低成長の先進国でも、約2%のインフレが進行しています。まして、世界の中の新興国では、4%~10%のレンジでインフレが進行しています。
このような状態の中で、企業は、現預金の価値の目減りを回避する行動をとらなければなりません。ここに、営業活動とは別に、資産を健全な形で運用をし、インフレ率を超える運用率をあげてゆく必要性が発生します。
企業における投資の基本は、あくまでも事業投資であり、資産運用は、利益の発生と投資時期のタイムラグを埋めるための、インフレによる資産価値減少を避ける施策と考えるのが、健全な経営者発想です。
3、資産運用のポートフォーリオポジションニング
資産運用投資の重要な点は、それを、ギャンブルのような趣味にしない、ということです。
資産運用は、あくまでも利益を事業投資するまでの留保期間に、インフレ進行による資産の価値の目減りを避けるために行う目的の行動なのであって、それを、ギャンブルのように行うことは、会社の利益をかえって毀滅する行動に繋がります。
例えば、ビットコインなどの暗号資産を使ったアクティブ運用などは、どこの管理下にもおかれていない、需給関係だけの価格乱高下を利用した、単なる「博打」であり、完全に投資行動を逸脱して、投機行動になってしまっています。
資産運用のポートフォーリオの基本
長年の資本主義の歴史の中で、インフレ進行による資産の目減りを回避するために編み出されてきたのが、資産のポートフォーリオを組む金融資産の投資方法です。
資産運用のポートフォーリオは、資産運用のポジションを、株式と債券、国内と海外のファクターにわけます。
つまり、国内株式・国内債券・海外株式・海外債券の、4つのポジションにわけ、環境の状況にあわせて、そのポジションの構成比率を操縦する投資運用法です。
資産家の資産を預かる、プライベートバンクのファンドマネージャーは、この方法で、資産を管理し、それを増やして、インフレに対する資産の目減りを回避しています。
なぜ、ポートフォーリオは、インフレに対して資産の減少を止められるのか?
資産をキャッシュポジションにしておくと、資産価値は目減りしてゆきます。
現在の日本は、およそ2%のインフレ率を政府が目標としています。つまり、現時点と1年後では、物価が2%値上がりしているという状態にあります。そうすると、現在の貨幣の価値は、1年後には、1×100/102=98.04に下がることを意味しています。
この状態で、5年間経過すると、通貨価値は、物価に対して約10%目減りをすることになります。
この通貨を、株式(ここでは日経平均株価に完全に連動する投資ファンドと考えます)と債券(ここではわかりやすく国債と考えます)に変えておくとします。
日経平均株価は、日本経済を読み込み、変動します。同時に、金利の動向に変動します。日経平均株価が上昇すると、国債の利回りが低下し、国債が下がります。一方、日経平均株価が下落すると、国債の利回りが上昇し、国債があがります。一方で、日経平均株価も国債も、インフレ率に、長期的には連動して利回りがあがると考えられています。
そのため、通貨を、株式と債券に分散して変えておくと、先にあげたインフレ率分の通貨目減りを、リスク少なく、運用益で防ぐことができます。
通貨価値を目減りさせるのは、インフレ率だけではありません。為替もまた、通貨を変動させます。例えば、対ドルで円安が進んでいる現在のような状態では、同じ日本円でも、円安が進行した分、日本円の価値は下がります。
つまり、円という通貨価値の価値は、インフレ率と円安のダブルパンチで、目減りを続けているのです。
従って、資産を、国内と海外に沸け、それぞれを株式と債券にわけて、国内株式・国内債券・海外株式・海外債券という4つのポジションに変えておくと、円安とインフレ率による通貨の価値減少を防ぐことができるのです。
4、事業家にとって、資産投資は、ゲームではなく、利益の発生と事業投資のタイムラグを埋める価値維持策と位置付けるべき
特に、1980年代のバブル期には、多くの企業が、株価や不動産価格の急騰に踊らされ、事業投資を放り出して、資産のアクティブ投資に走りました。そして、このような企業の末路は、貴重な事業で生み出した利益の価値をあげるどころか、株や不動産の急速な下落の中で損切りし、大きな損失を計上し、それを本業で埋めるといった、本末転倒な行為を行いました。
近年では、ビットコインをはじめとする仮想通貨に投資し、その乱高下に踊らされていた事業家もいました。
株式や、不動産、ましてや通貨の裏付けがなく、(個人の場合)所得が雑所得という高税率の所得税が課税される仮想通貨投資などのアクティブ投資は、利益を上げ続けることは、ギャンブルと同様に難しく、平均の利回りは、圧倒的に事業投資に劣ってしまいます。
従って、事業の構想と企画力・実行力を持っている事業家は、資産投資ではアクティブ投資を行うべきではなく、あくまでも、利益が生み出す現預金が、インフレと為替によって、価値減少を起こすことを防ぐという位置づけで、資産投資を考えるべきです。
事業家にとって、基本は事業投資により、高い投資利益率の事業の創造を目指すべきであって、そのタイムラグによって生じる現預金ポジションの価値の維持の位置づけとして、資産投資を位置づけるべきでしょう。
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