年収のカラクリ ~年商5億円を超えた経営者たちの、自分の年収の決め方の技~
目次
1、年商1億円を超えると、社長が組織管理に悩み始める理由
会社を設立し、社長自身が営業、商品開発、顧客対応、採用、資金繰りを担いながら売上を伸ばしていくと、やがて年商1億円という一つの節目を迎えます。
この段階まで会社を成長させたオーナー社長の多くが、次に直面するのが、「ヒト」と「組織」の問題です。
年商1億円程度までの企業は、オーナー社長が先頭に立ち、現場を直接指揮することで成長するケースが一般的です。
まだ事業基盤が固まっていない段階で、社長が現場から離れ、大企業の組織管理を形だけ真似して部下に仕事を任せてしまうと、営業力や意思決定のスピードが低下します。その結果、売上が横ばいになり、場合によっては減少に転じることもあります。
会社が小さいうちは、社長自身が誰よりも働き、顧客と向き合い、商品やサービスを磨き続けることが、企業成長の原動力になります。
ところが、年商1億円を超え、社員や外注先が増えてくると、今度は、社長がすべてを直接管理する方法に限界が生じます。
社長が一人ひとりの仕事を確認し、細かな判断を行い、問題が起きるたびに対応していると、社長の時間が日常業務に奪われます。
その結果、本来、社長が取り組むべき新規事業、採用、資金調達、経営戦略、重要顧客との関係構築に時間を使えなくなります。
これが、年商1億円前後の会社で起きやすい「社長依存の壁」です。
社長が先頭に立つ会社では、社長を補佐する人材として、アルバイトや業務委託、外注先を活用することもできます。この段階では、担当業務を正確かつ迅速に遂行できる、即戦力としてのスキルが重要です。
ところが、年商1億円を超えたあたりから、個人のスキルを重視して採用してきた人材だけでは、組織全体を動かすことが難しくなります。
各担当者が自分の仕事をこなすだけでは、部門間の調整、進捗管理、部下の育成、問題の早期発見、経営方針の浸透までは担えないからです。
この段階で必要になるのが、社長の経営方針と経営戦略を理解し、それを現場の行動に落とし込むことができる中間管理職です。
中間管理職には、単に仕事ができるだけでなく、次のような能力が求められます。
・経営者の意図を理解する能力
・部下に仕事を任せ、進捗を管理する能力
・部下を教育し、成長させる能力
・部門間の利害を調整する能力
・問題を経営者に上げる前に整理し、解決案を提示する能力
・経営目標を現場の数値目標と行動計画に落とし込む能力
しかし、これまで個人の実務能力を重視して採用してきたスタッフや外注先が、自然に中間管理職へ育つとは限りません。
優秀な実務担当者と、優秀な管理職に必要な能力は、同じではないからです。
この違いに気づかないまま、仕事ができる社員を形式的に管理職へ昇格させると、本人が部下を管理できず、現場の混乱を招く場合があります。
一方で、社長がすべてを抱え続ければ、社長の処理能力が会社の成長限界になります。
この板挟みの状態に陥り、多くのオーナー社長が、組織管理に悩み始めるのです。
僕の経営支援サービスでは、この段階に至り、ヒトの問題、管理職の不足、組織管理、権限移譲に悩む経営者を支援するケースが増えています。
目指すのは、単に人員を増やすことではありません。
社長が一人で会社を動かす経営から、管理職と組織によって会社が動く経営へ転換し、年商3億円、5億円という次の成長段階を目指せる経営基盤をつくることです。
松本尚典の中小企業経営者支援コンサルティングサービス
年商1億円前後で直面する、社長依存、管理職不足、権限移譲、組織改革の課題を、経営者とともに整理し、次の成長段階に向けた仕組みを構築します。
https://mbp-japan.com/tokyo/yoshinori-matsumoto/service1/5002501/
2、組織管理は、売上規模に合わせて進化させなければならない
企業に必要な人材、組織設計、権限分担、会議体、評価制度、組織管理の方法は、企業の成長段階によって異なります。
創業期に有効だった組織管理が、年商1億円を超えた会社でも有効であり続けるとは限りません。
組織は、売上規模や社員数の増加に合わせて、蛇が脱皮するように進化させる必要があります。
この進化に失敗すると、商品やサービスには需要があるにもかかわらず、社内の処理能力が追いつかなくなります。
そして、次のような問題が起き始めます。
・社長の判断待ちで、仕事が止まる
・社員ごとに仕事の進め方が異なる
・顧客対応の品質にばらつきが出る
・同じミスやトラブルが繰り返される
・忙しい社員に仕事が集中する
・社員同士の不満や対立が増える
・売上は増えているのに利益が残らない
・社長が現場から離れられない
これらは、社員個人の能力だけが原因ではありません。
売上規模に対して、組織の仕組みと管理方法が追いついていないことによって発生する、経営上の問題です。
年商1億円を超えた企業が、その後も成長を続けるためには、人材の質的な転換が必要になります。
すべての仕事を社長が直接指示する組織から、経営方針を理解した管理職が、チームを動かす組織への転換です。
これは、経営者にとって非常に難しい課題です。
経営者自身が、これまでの成功体験を見直し、組織マネジメントの考え方を変える必要があるからです。
僕の経営支援では、経営者に対して、単に「部下に任せてください」と助言することはありません。
業務の内容や重要度を整理し、社長が引き続き担う仕事、管理職に移管する仕事、担当者に任せる仕事を明確にします。
権限移譲とは、社長が仕事を放棄することではありません。
誰に、何を、どこまで任せるのかを決め、数値や報告によって状況を把握できる仕組みを構築することです。
しかし、経営者だけが変われば、組織改革が完成するわけではありません。
僕の仕事で特に難しいのは、会社の成長に合わせて、経営者の部下にも役割を変えてもらうことです。
これまで社長から直接指示を受けていた社員にとって、中間管理職を介した指揮命令系統への変更は、必ずしも歓迎できるものではありません。
「これまでは社長に直接相談できた」
「自分の仕事に口を出されたくない」
「管理職より自分のほうが実務に詳しい」
このような反応が生まれることもあります。
経営者が部下を教育し、新しい役割を理解させられるように変わることが重要です。
それでも、すべての部下が会社の成長に合わせて変わってくれるとは限りません。
その場合には、既存社員の上に、組織管理ができる中間管理職を配置することや、外部から管理職人材を採用することも必要になります。
さらに、企業が成長を続ける限り、組織の進化は一度で終わりません。
社員数、事業数、拠点数、顧客数が増えるたびに、役割分担や権限、会議、評価、情報共有の仕組みを見直す必要があります。
時には、その進化を実現するために、配置転換、役割変更、人事評価の見直しなど、痛みを伴う改革も必要になります。
企業は、そのような変革を乗り越えながら、売上と利益を持続的に成長させていくのです。
3、落下傘方式と、チーム制のメリット・デメリット
年商1億円に達していない規模の企業において、経営者が部下を効率的にマネジメントする方法を、僕は「落下傘方式」と呼んでいます。
年商1億円以下の企業を、できるだけ早く年商1億円を超える会社へ成長させるためには、意思決定と実行のスピードが重要です。
この段階では、複雑な階層組織をつくるよりも、経営者が各担当者へ直接指示を出す落下傘方式のほうが、効率的に機能します。
一方で、落下傘方式には明確な限界があります。
社員数、顧客数、案件数が増えると、経営者一人では、すべての仕事を把握し、判断することができなくなるからです。
年商1億円を超えたあたりから、落下傘方式によるマネジメントは徐々に機能しにくくなります。
そこで、次の段階として必要になるのが、年商5億円程度までの成長を支える「チーム制」です。
落下傘方式
落下傘方式とは、経営者を中心として、社員、アルバイト、業務委託先、外注先などのスタッフを、それぞれ個別に管理する方法です。
飛行機から複数の落下傘が、それぞれ独立して伸びている形をイメージしていただくと、理解しやすいと思います。
中小企業では、企業の全体像、経営計画、顧客との関係、商品やサービスの内容が、経営者の頭の中に集約されていることが少なくありません。
そのため、各担当者同士の横の連携に任せるよりも、経営者が各担当者に直接指示を出し、個別に進捗を管理するほうが効率的です。
企業規模が小さい段階では、この方法が、スタッフにとっても会社にとっても合理的です。
指揮命令系統が明確であり、指示も直接伝わるため、スタッフが判断に迷いにくいというメリットがあります。
また、経営者の考えが、途中で変形されずに現場へ伝わります。
一方、年商1億円に達していない小規模企業が、大企業の形だけを真似して中間管理職を配置すると、かえって非効率になることがあります。
社員数が少ないにもかかわらず階層を増やせば、情報伝達が遅くなり、経営者の意図が現場に正しく伝わらなくなるからです。
年商1億円程度までの企業では、売上の上昇スピードが、経営者自身の営業力、商品開発力、現場指揮力に大きく左右されます。
したがって、この段階では、経営者が最も効率的に動けるように、スタッフが実務面から経営者を支援する体制が有効です。
ただし、落下傘方式には、経営者の管理可能人数を超えると機能しなくなるというデメリットがあります。
担当者が増えるほど、報告、相談、確認、判断が経営者へ集中します。
その結果、社長が会社の中で最大のボトルネックになってしまうのです。
チーム制
落下傘方式は、年商1億円を超え、社員や案件が増え始めた企業では、次第に機能しにくくなります。
売上規模に比例してスタッフが増え、仕事が細分化されると、経営者一人の力だけで組織を動かすことに限界が生じます。
一方、年商1億円の会社をつくり上げた経営者は、仕事に大きな手応えを感じている時期でもあります。
自ら動けば売上が増え、利益も上がり、自分の判断によって会社が成長していくため、経営者として非常に充実した状態です。
しかし、その成功体験が、組織改革を妨げることがあります。
「自分が直接指示を出したほうが早い」
「管理職に任せると、仕事の質が落ちる」
「社員は、自分ほど会社のことを考えていない」
このように考え、従来の方法を変えられない経営者は少なくありません。
しかし、組織はすでに、社長一人で管理できる限界に近づいています。
即戦力を重視して採用してきたスタッフは、担当業務には詳しくても、組織全体を俯瞰し、他の社員を動かす能力を備えているとは限りません。
仕事量が増えれば、社員からは、業務負担や不公平感に対する不満が出始めます。
各スタッフが自分の担当業務だけを優先し、会社全体の目標に対して、ばらばらに動く状態になることもあります。
社長は、社員の判断や行動に不満を感じるようになり、社員は、社長の指示が細かすぎると感じ始めます。
この状態が続くと、社長と社員の双方にストレスが蓄積します。
さらに、顧客対応の遅れ、品質低下、社員の退職、利益率の低下などが発生し、会社の売上が減少局面に入る可能性があります。
一度、組織の混乱によって売上が減少し始めると、その減少を止めることは容易ではありません。
その前に、組織管理の方法を変える必要があります。
それが、落下傘方式からチーム制への移行です。
チーム制では、経営者がすべての社員を直接管理することをやめ、複数の社員をまとめる中間管理職を配置します。
中間管理職は、経営者から経営方針や目標を受け取り、担当するチームの行動計画に落とし込みます。
経営者は、個々の社員を直接管理するのではなく、中間管理職と経営目標、数値、進捗、課題を共有します。
これにより、経営者は日常業務から徐々に離れ、経営戦略、新規事業、採用、資金調達、重要顧客への対応に時間を振り向けられるようになります。
チーム制への移行は、単に管理職という役職を設けることではありません。
・管理職の役割と権限を明確にする
・部下に対する指示命令系統を統一する
・数値目標と責任範囲を定める
・定期的な報告と会議の仕組みをつくる
・評価制度と役割を連動させる
・社長が管理職の権限を守る
こうした仕組みを同時に整える必要があります。
落下傘方式からチーム制への移行が、最も難しい
落下傘方式からチーム制への移行は、企業が創業後に経験する、最初の本格的な組織変革です。
この変革は非常に難しく、移行に失敗した企業は、売上の停滞や組織の混乱に直面します。
難しさの第一の理由は、経営者の過去の成功体験が、変革を妨げることです。
経営者は、自分が直接指揮する方法で年商1億円まで会社を成長させています。そのため、その方法を変えることに、強い不安を感じます。
第二の理由は、中間管理職となる人材の採用と育成が難しいことです。
大企業で管理職を経験した人材を採用しても、経営資源の限られた中小企業で、同じように力を発揮できるとは限りません。
中小企業の管理職には、部下を管理するだけでなく、自らも実務を担いながら、経営者と現場をつなぐ能力が求められます。
第三の理由は、既存社員が新しい管理職を受け入れない場合があることです。
これまで経営者と直接仕事をしてきた社員が、新しく配置された中間管理職の指示に従わず、社長へ直接相談を持ち込むことがあります。
このとき、社長が従来どおり社員へ直接指示を出してしまうと、中間管理職の権限が失われ、チーム制は機能しません。
チーム制へ移行するためには、経営者が中間管理職に権限を与え、その権限を組織内で守る覚悟が必要です。
また、中間管理職を配置するだけでなく、管理職本人に対して、目標設定、部下育成、進捗管理、会議運営、問題解決の方法を教育しなければなりません。
こうした難しさを乗り越え、落下傘方式からチーム制へ移行できるかどうかが、年商1億円程度の会社が、年商3億円、5億円へ成長できるかどうかを左右する、大きな経営上の分岐点であると僕は考えています。
4、組織管理は、目標とする売上規模に合わせて進化させるもの
落下傘方式からチーム制への移行は、年商1億円を超えた企業が、年商3億円、5億円を目指すために必要となる、組織基盤と管理方法の転換です。
ただし、チーム制も、永久に機能し続けるわけではありません。
事業や拠点が増え、年商5億円を超える規模になると、複数のチームを統括する部門責任者や経営幹部が必要になります。
さらに、経営計画、予算管理、部門別採算、評価制度、採用計画、教育制度、経営会議などを整備しなければなりません。
つまり、企業の成長段階に応じて、組織管理は次のように変化します。
・創業期から年商1億円前後までは、社長が直接指揮する
・年商1億円から5億円前後までは、中間管理職を中心とするチーム制へ移行する
・年商5億円を超える段階では、部門別管理と経営幹部組織を整備する
・複数事業や複数拠点を展開する段階では、経営管理機能をさらに高度化する
正常な企業成長は、売上の増加だけによって実現するものではありません。
売上の増加に合わせて、組織基盤、権限、管理方法、人材の質を変え続けることによって、初めて成長を維持できます。
組織を進化させないまま、売上だけを勢いで伸ばしていくと、やがて社内の処理能力が限界に達します。
現場の混乱、顧客対応の遅れ、品質低下、社員の退職、資金繰りの悪化が連鎖し、顧客からの信用を失います。
そして、売上が失速し、企業は衰退局面に入ります。
企業を、永続的な存在であるゴーイングコンサーン(継続企業)として発展させるためには、売上と利益の拡大だけでなく、組織の不断の進化を追求しなければなりません。
経営者が目指すべきものは、単に年商1億円を達成することではありません。
社長が現場に張り付かなくても、社員と管理職が自ら考え、顧客に価値を提供し、利益を生み出せる会社をつくることです。
僕自身も、URVグローバルグループを創業から約9年で年商数十億円規模へ成長させる過程において、事業の拡大に合わせて、組織基盤と組織管理の方法を繰り返し見直してきました。
社員や拠点が増えれば、以前の管理方法は通用しなくなります。
経営者である僕自身の役割も、現場の指揮から管理職の育成へ、さらに経営幹部との戦略共有へと変化してきました。
僕の経営コンサルティングサービスは、教科書上の組織論を説明するだけのサービスではありません。
僕自身が企業経営の現場で経験してきた、社長依存からの脱却、管理職の配置、権限移譲、組織改革、事業拡大の実体験を基礎として、クライアント企業の成長段階に適した経営管理の仕組みを構築するサービスです。
年商1億円を超えたものの、社長が忙しくなるばかりで、組織が育たない。
社員に任せたいが、任せられる管理職がいない。
人を増やしても、売上や利益が伸びない。
こうした課題を抱えている場合、問題は、社長や社員の努力不足ではなく、会社の成長段階に対して、組織の仕組みが合わなくなっていることにあるかもしれません。
組織問題が深刻化してから改革を始めるよりも、売上が伸びている段階で、次の成長に備えた組織づくりに着手することが重要です。
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