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福味健治

建築主の思いを形にする注文住宅の専門家

福味健治(ふくみけんじ) / 一級建築士

岡田一級建築士事務所

コラム

木造三階建ての風対策

2019年9月12日

テーマ:【免震住宅・地震対策】

コラムカテゴリ:住宅・建物

木造三階建ては、風についての基準はけっこう甘い

令和元年9月に関東を襲った台風は東日本に多大な損害をもたらしました。思えば昨年も関西を中心に室戸台風クラスの台風21号が襲っています。地球の温暖化により、海水温が上昇している為、今後も大型台風の襲来や、今まで大きな被害の出なかった地域にまでも被害を及ぼすような台風が発生するでしょう。
しかし、木造住宅の場合、鉄骨や鉄筋コンクリート造の基準に比べ、風に関する検討が甘く設定されています。

鉄骨造や鉄筋コンクリート造ならアウトなのに、木造ならセーフ

木造の場合、建物の間口に対して、建物の高さが2.5倍を超えると注意が必要です。木造三階建ての建物の場合、建物の高さは約10mになりますから、間口4m以下の建物は気をつけないといけません。
建物が風で押されますと、何もしないでいると倒れようとする力(転倒モーメント)が働きます。転倒モーメントが働けば、建物に加わる力が倒れようとする方向にズレてしまします。どれくらいズレるのかと云いますと、風の当たる面積を建物の重さで割ったもので表されます。つまり、風を受ける面積が大きいほど、また建物の重量が軽いほど、転倒モーメントが大きく働くと云う事です。
また、平面的な建物の中心(図心)と、重量の中心(重心)は間取り形状により一致していないのが普通です。この平面的な建物の中心と重心の距離に、先ほどの転倒モーメントの数値を加えたものが、建物の図心からの偏心距離となります。
その偏心距離(e)を間口の長さ(L)で割った値が、0.5を超えなければ、木造住宅ではOKなのです。
それでは、鉄骨造や鉄筋コンクリート造ではどうなのかと云いますと、0.333を超えるとアウトになります。

基準が甘いのにはそれなりの理由がありますが。。。

木造住宅は他の構造に比べ軽く出来ています。つまり吹き飛ばされやすいのです。それにも関わらず、基準が甘いのは何故でしょう。
国交省のお役人に確認した訳ではありませんが、私なりに解釈しますと、木造住宅の場合、実質的に風の影響が比較的少ない、三階建ての建物ばかりです。また、木造三階建てが建設されるのは、主に密集地で建物単体で風圧をモロに受ける様な条件が少ない事も影響して他の構造よりも、条件が甘くなっているのではと考えています。

むやみにマニュアルを妄信すると大変な目に遭う

しかし、木造の基準が、いくらe/L<0.5でOKだと云っても、0.5に近い数値であれば殆ど建物が浮き上がった状態を示しています。まして野中の一軒家で間口の狭い三階建てとなると、幾ら0.5以下だからと云っても平気でいられる訳がありません。
マニュアルはマニュアルとして、別途設計者の実情を良く把握した判断が求められるところであります。

木造の家は揺れる

木造の家は他の構造に比べよく揺れます。拙宅は二階建てですが、強風が吹けば揺れています。それは揺れても良い構造になっている為ですが、これは幾ら耐風等級を上げたからと云って、揺れが止まる事を意味していません。特に間口の狭い家は良く揺れます。これは鉄骨造にも同じ事がいえますので、揺れるのが嫌だと思うのであれば、鉄筋コンクリート造をお勧めします。

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福味健治(岡田一級建築士事務所)

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