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福味健治

建築主の思いを形にする注文住宅の専門家

福味健治(ふくみけんじ) / 一級建築士

岡田一級建築士事務所

コラム

現行法規では建物は震度6強で倒壊する。

2018年2月27日 公開 / 2018年6月20日更新

テーマ:【免震住宅・地震対策】

コラムカテゴリ:住宅・建物

混乱している震度階


「先ほどの地震は震度〇〇でした。尚津波の心配はありません云々」地震のたびに気象庁から発表される定型文です。震度〇〇を震度階と云います。阪神大震災以前の震度階は、気象庁の担当者が被害状況を観測し、主観で震度を決めていました。外壁にヒビが入れば震度5、家屋が倒壊すれば震度6と云う風に被害状況に沿った震度階を当てはめていました。
阪神大震災以降は、迅速化や客観性を重視する観点から、建築基準法の構造計算に用いる重力加速度(gal)による震度階の運用が開始されました。地震波を観測し発生した(gal)の大きさで震度階を即座に発表するようになったのです。

400gal以上(震度6強)の地震が来れば倒壊の危険

そこでは600gal以上が震度7と規定されています。
しかし、建築基準法では400galの揺れに耐えられたら合法とされているのです。つまり、構造強度が建築基準法ギリギリでクリアした建物は、震度6強で倒壊する恐れがあるという事です。400galの設計強度で建てられた建物が倒壊しなければそれは幸運だったに過ぎません。
ちなみに、過去に発生した地震のgalを調べますと阪神大震災で880gal。東日本大震災で2900galと云うとてつもない揺れを観測しています。

震度階と建物強度の関係


ただ不思議に思うのは、2900galを記録した東日本大震災では地震による倒壊例が少なかったのに対し、880galの阪神大震災や同規模の熊本地震の方が建物が多く倒壊している事です。
震源域が遠いか近いか、また、重力加速度(gal)よりも定速運動(Kain)の方が建物の倒壊と密接に関係しているとか諸説ありますが、まだ体系化されて地震が建物に及ぼす影響を検証するに至っていません。

今、私たちに出来る自衛策は、建築基準法に適合させるのは勿論のこと、それ以上の強度を建物に持たせる様に努力する事しかないのです。

重力加速度(gal)とは?定速運動(Kain)とは?


重力加速度(gal)とは、常にかかり続ける力を言います。満員電車で出入口付近の人が常にドアに向かって押されている様な状態です。ドアが開くとどうなるか考えただけでも恐ろしい話しです。
満員電車を例に挙げましたが、他にも常に受け続ける力はあります。普段は何も感じる事はありませんが、私たちは地球に対し常に980galの重力加速度を受けているのです。980galと云うより1Gと表現した方がピンと来る人の方が多いかもしれません。980galの力で常に地球に引っ張られています。阪神大震災の地震波は一時的にではあるにせよ、家が添付画像の様な状態になったのと同じなのです。
定速運動(Kain)とは言い換えれば速度です。最初に力を加えられると、何も抵抗もなければ力を加えられた方向に定速運動が続きます。時速60kmの車に乗っている人が目を閉じていると、加速や減速しない限り早さを感じない運動の事です。
最近地震に関しては、galよりもKainの方が建物被害状況に則しているのではないかと云われています。どれくらい与え続けられた力が加わるかではなく、1秒間に何m移動したかの方が建物の被害に合っているのではと云われています。

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福味健治(岡田一級建築士事務所)

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