弁護士の心得 専門に特化しながら、専門外から謙虚に学ぶべし
弁護士が,法律相談者に対し,根拠を具体的に示さず,「・・・と思います。」と答えるのは,正しくはありません。
「思います」は推測であり,憶測であるからです。
弁護士が推測や憶測で回答した場合で,それが間違っていたとき,相談者に思いがけない損害を与えてしまいます。
それを避けるためにも,弁護士は,法律の条文,判例又は裁判例を示して,「回答は・・・です。」と答えるか,少なくとも,「判例(又は裁判例)は,・・・と判断していますので,あなたの問題についても,・・・という判断がなされる可能性が大きいと思います。」と答えるべきです。
これは間違った回答をしないというだけにとどまらず,正確な法律知識を積み重ねることにつながり,弁護士の力量を増すことになるからです。
すなわち,条文を調べると,条文の内容を知り,その条文を含む法律制度の趣旨,目的を知り,判例や裁判例を調べると,そこは,法律知識の宝庫であり,知らなかった世界の事実の知識の宝庫であり,裁判官が推敲に推敲を重ねて苦心の末に表現した文章の力の源泉であるが分かります。
条文に当たり,判例を調べ,裁判例を調べることを,繰り返す毎日が,弁護士を作るのです。
言葉の意味
①判例・・・最高裁判所の判決の中に示された法解釈
➁裁判例・・相談されている事実関係と同種又は類似の事実関係における裁判例のこと。これがあると,相談されている事実関係に対して裁判所がどんな判断をするかがある程度予測されることになるので参考資料として重要なもの。