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松田友和(まつだともかず) / 内科医

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コラム

糖尿病と眼の関係(1) ~眼底から血管を観る~

2020年10月20日

テーマ:糖尿病合併症

コラムカテゴリ:医療・病院

はじめに

糖尿病が原因で失明することがあることをご存知でしょうか。実は、糖尿病網膜症は日本における失明原因の3位で、年間約3000人の方が糖尿病網膜症で視力が奪われています(1位 緑内障、2位 網膜色素変性症)。糖尿病による網膜症は、自覚症状がほとんどない状態で進行していきますので、視力低下に気が付いた時には、既にレーザー治療や手術が必要になっていることも稀ではありません。大切な視力を守るために糖尿病と眼の関係について調べてみましょう。

網膜とは

網膜は眼をカメラで例えるとフィルムに相当します。 カメラは、レンズを通過した光がフィルムに像として焼き付けられることで写真を作ります。眼の場合は、瞳から入った光が水晶体(カメラのレンズに相当)を通過して、網膜(カメラのフィルム)で像を作ります。

                参天製薬のHPより

眼に入った光はまず角膜という透明な膜を通過します(カメラではレンズの前のフィルターに相当)。角膜の奥にある虹彩が、カメラの絞りに相当し、瞳孔の大きさを調節することで、眼に入る光の量を調整しています。その後、水晶体(レンズ)で屈折した光は網膜(フィルム)で像を結びます。その網膜(フィルム)には、光の明るさや色合いを感じとるための細胞である視細胞が密集しています。ここに到達した光の情報は、視神経を通り、脳の中の視覚野という、フィルムの現像プリント工場にあたる部分に送られて、ようやく映像となります。この視細胞に栄養や酸素を送るために、網膜には血管が張り巡らされています。
ちなみに、網膜のことを眼底と言います。これは、瞳孔を正面から覗いたときに見える眼球の奥(底)に網膜が見えるためです。眼は光を感知する感覚器官ですから、当然、奥の方まで覗けるわけです。したがって、眼底検査をすれば、網膜や網膜に張り巡らされている血管を観察できるのです。



                日本網膜硝子体学会HPより

眼底の血管を観ることで、全身の血管の状態を推測できる

糖尿病の最大の問題点は、高血糖や血糖スパイクを放置することで、全身の血管が障害されることです。血管は全身にありますので、血管が障害されることで様々な合併症を引き起こす可能性があります。心臓を栄養している冠動脈が障害されることで生じるのが心筋梗塞ですし、脳の血管が障害されることで脳梗塞を引き起こします。しかし、冠動脈や脳の血管を調べるためには、カテーテル検査やMRIなど、大掛かりな仕掛けが必要になります。身体の奥にある血管を評価することは簡単ではありません。しかし、網膜の血管は眼底鏡で直接目視することが出来る貴重な血管です。糖尿病であれば、全身の血管は平等に高血糖にさらされていると考えられます。糖尿病はいつから発症したのか、つまりどれくらいの期間、血管が高血糖にさらされてきたのか、わからないことが多いのですが、眼底の血管が障害されていなければ、おそらく全身の血管もそれほど障害されていないだろうという推測がなりたつことになります。

(糖尿病と眼の関係(2)に続く)

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