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松田友和(まつだともかず) / 内科医

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コラム

腎性貧血に対する新しい治療法 ~注射薬から内服薬へ~

2020年11月19日

テーマ:糖尿病合併症

コラムカテゴリ:医療・病院

はじめに

糖尿病による腎障害などで、腎機能が低下してしまいますと、貧血を生じることがあります。この事を腎性貧血と言います。今までは腎性貧血の対処法としては、注射薬のみの選択肢だったのですが、最近になって腎性貧血を改善させるための内服薬が登場しています。

貧血とは

血液の主成分の1つである赤血球の数や、その赤血球に含まれるヘモグロビンの量が減少している状態を指します。ヘモグロビンはいわゆる赤い成分で、酸素を各組織に運搬するという非常に重要な役割を担っていますので、貧血になると、全身に酸素が送れなくなることで、様々な症状が出現します。なんとなく身体がだるいという症状から、動悸や息切れなど貧血以外にも起こり得る症状が多いため、身体の不調から貧血が起こっていることを連想しにくいことも特徴です。そのため、貧血は健康診断などの採血で始めて明らかになることが多いようです。

貧血の原因

赤血球の寿命は約120日と言われています。そのため、赤血球の量は,赤血球の産生量と壊れたり失ったりする量とのバランスで決まります。つまり、貧血の原因は大きく3つに分けて考えることができます。

貧血の3大原因
1、失血(出血)
2、赤血球産生低下
3、溶血の亢進(赤血球の崩壊)

1、の失血(出血)は、イメージしやすいかもしれません。鼻出血や外傷などになる少量の出血では貧血は起こりません。臨床的には、慢性的に出血が持続している場合に、貧血を呈している場面に遭遇します。女性では月経過多が貧血の要因となることもあります。胃潰瘍や十二指腸潰瘍、消化管の悪性疾患などで慢性的に失血している場合も貧血の要因となります。これらの場合は、鉄欠乏性貧血と呼ばれるように鉄分の不足を伴うことが多いことも特徴です。
2、の赤血球産生低下の原因は多種多様です。腎性貧血もその1つです。
実は、腎臓は血液から尿を作り出すという働きだけでなく、様々なホルモンを産生しています。そのホルモンの1つに、エリスロポエチンがあります。エリスロポエチンは、赤血球の産生を促進させる作用を持っていますので、腎機能が低下し、エリスロポエチンの産生が低下すると、赤血球の産生が低下し、貧血が生じてしまいます。

KYOWA KIRINのホームページより

3、の溶血の亢進(赤血球の崩壊)は、文字通り、何らかの要因で赤血球が壊れてしまうことで、赤血球数が減少している状態です。
赤血球の異常や感染症や薬剤による副作用などで赤血球が壊れてしまうことで、通常は120日程度ある赤血球の寿命が短くなってしまうことで生じる貧血です。

腎性貧血の治療

さて、話を腎性貧血にも戻しましょう。上述したように、腎性貧血は腎臓が作りだしているエリスロポエチンの量が減ることが原因です。そのため、今まではエリスロポエチン製剤と言われる注射剤でエリスロポエチンの働きを補うことが唯一の治療方法でした。
新しい治療薬は、内因性(もともとの腎臓がエリスロポエチンを作り出す力)のエリスロポエチンを増やすことができます。エリスロポエチンを増加させる低酸素誘導因子(hypoxia-inducible factor: HIF)を活性化させるため、「HIF活性化薬」と呼ばれています。内服薬ですが、今までの注射薬であるエリスロポエチン製剤と同等の効果があるのではないかと期待されています。新薬ですので、まだ2週間毎の処方しかできませんが、腎性貧血治療の大きな武器として注目されています。

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