257 【マンスリーマンション問題】いよいよ裁判! 今回の見どころは? 「昔からやっていた」は通用するのか

竹下昌成

竹下昌成

テーマ:賃貸経営実務



257 【マンスリーマンション問題】いよいよ裁判! 今回の見どころは? 「昔からやっていた」は通用するのか

所有するマンションの一室が、僕の承諾なくマンスリーマンションとして営業利用されていた問題。

福岡地方裁判所 806号法廷で、2026年11月16日に第1回口頭弁論が予定されています。

事件番号は、令和8年(ワ)第2671号  

これまで警察、保健所、消防、保証会社、国土交通省など、さまざまな関係先に質問や情報提供を行ってきました。

調べれば調べるほど、問題が増えてきました(笑)。

今回は、裁判の見どころと、裁判所・行政それぞれに何を求めているのかを整理してみます。

■ 見どころ① 住居として借りて、宿泊営業をしてもいいのか?

今回の裁判の中心は、意外とシンプルです。

僕は住居として部屋を貸しました。

ところが、借主の会社はマンスリーマンションとして営業利用していました。

僕は承諾していません。

しかも、確認してみると、

・賃貸借契約は住居用
・マンションの管理規約も住居専用
・保証会社ジェイリースも住居契約として保証

という状況です。

賃貸借契約、管理規約、保証契約。3つとも住居が前提。

一方、実際には短期間の利用者を入れ替えながら営業していました。

予約サイトには短期利用プランも掲載され、寝具や清掃などのサービスも提供されていました。

一般的な住居の賃貸借とは、ずいぶん違うように思います。

もちろん、契約違反があれば必ず解除できるわけではありません。

裁判では、違反の内容や程度、貸主と借主の信頼関係が破壊されたといえるかどうかが問題になります。

さて、今回の営業利用はどう判断されるでしょうか。

単なる契約違反なのか。それとも、契約解除と明渡しを認めるほど重大な違反なのか。

ここが最大の見どころです。

■ 見どころ② 「昔から公然と営業していた」は通用するのか?

被告は、以前から管理会社に説明していた、公然と営業していた、といった主張をしています。

でも、僕は営業利用を承諾していません。

そもそも、管理会社に説明したことと、貸主が営業利用を承諾したことは同じではありません。

管理会社が、どのような説明を受け、何を承諾する権限を持っていたのか。

ここも重要な問題です。

そもそも、建物管理会社は「本件を今回初めて把握した、宿泊業は管理規約で認めていない」と回答しています。

L社の言う「管理会社」はどこなのか!?

さらに、2025年の家賃増額調停では、従前の賃貸借契約に基づくことを双方で確認しています。

その契約は住居用です。

被告の説明と、調停で確認した契約内容は、どう整合するのでしょうか。

また、管理規約は個々の貸主と借主だけの問題ではありません。

マンションには、ほかにも多くの区分所有者や居住者がいます。

貸主が知らなかった、という問題だけでなく、建物全体のルールとの関係もあります。

「昔からやっていた」「誰にも注意されなかった」から問題ない。

果たして、そんな理屈が通用するのでしょうか。

僕としては、裁判所がこの点をどう評価するのかにも注目しています。

■ 見どころ③ 旅館業法の問題まで出てきた

調査を進めるうちに、もう一つ問題が出てきました。

「そもそも、このマンスリー営業は旅館業法上、問題ないのか?」

博多保健所に質問したところ、本件702号室について、旅館業法上の営業許可は「なし」との回答でした。

また、7日以上30日未満などの短期間、利用者を入れ替えながら反復継続して提供する場合、定期賃貸借契約という形式でも、営業実態によっては旅館業に該当する可能性があるとの回答も得ています。

つまり、契約書に「賃貸借」と書いてあれば、必ず旅館業法の対象外になるわけではない、ということです。

実際の利用期間、寝具の提供、清掃、利用者の生活の本拠となっているかどうかなど、営業の実態が問題になります。

京都市では、2024年に無許可営業の疑いがあるウィークリーマンション等267施設を調査し、全施設が営業中止・撤退した事例もあります。

では、福岡ではどう判断されるのでしょうか。

ただし、ここは今回の裁判と区別して考えています。

僕の民事裁判の本丸は、賃貸借契約違反による明渡しと損害賠償です。

旅館業法違反の疑義は、営業の実態や契約違反の重大性を補強する材料として主張します。

旅館業法違反の有無については、関係行政機関等の判断に委ねます。

■ 見どころ④ 裁判所と行政、それぞれに何を求めているのか?

ここは少し整理しておきます。

【裁判所に求めること】

第一は、本件702号室の明渡しです。

住居として貸した部屋を、貸主の承諾なく営業利用していた。

この契約違反を理由とする解除の有効性を認めてもらい、部屋を返してもらうことです。

あわせて、契約違反によって生じた損害について賠償を求めています。

僕が明渡しにこだわる理由は、火災、事故、事件などのリスクです。

短期利用者が次々と入れ替わる営業では、通常の居住用マンションとは異なる問題が生じます。

利用者は建物のルールを理解しているのか。

火災が発生した場合、適切に避難できるのか。

事故や事件が起きた場合、誰がどのように対応するのか。

同じ建物には、普通に生活している居住者がいます。

僕は大家として、このようなリスクを抱えた営業を認めるつもりはありません。

仮に家賃を2倍にすると言われても、答えは変わりません。

【行政に求めること】

こちらは、旅館業法や消防関係法令などに照らして、実際の営業が適法なのかを調査・判断してもらうことです。

法令違反が確認されれば、法令に基づいて適切に対応してもらいたいと考えています。

そのため、警察、保健所、消防などに資料を提供してきました。

僕が行政に代わって違法性を確定するわけではありません。

また、行政の判断が出るまで、民事裁判を進められないという話でもありません。

契約違反は裁判所で争う。営業の適法性は行政に判断してもらう。

この二つを並行して進めています。

■ 見どころ⑤ 部屋が戻ってきたら、それで終わりなのか?

僕の第一の目的は、702号室を取り戻すことです。

明渡しが実現すれば、少なくともこの部屋での無断営業は終了します。

火災、事故、事件など、短期宿泊営業に伴うリスク要因も、この部屋については取り除けます。

では、それですべて解決するのでしょうか。

残念ながら、そうはいきません。

同じマンションには、別のマンスリー業者が利用している部屋もあります。

さらに、調査を進めると、ほかのマンションでも同様の営業形態が確認できました。

僕の部屋が戻ってきても、別の業者、別の部屋の問題は残ります。

もちろん、僕が所有していない部屋の賃貸借契約まで、僕が解除できるわけではありません。

しかし、営業実態や許認可について行政に情報提供することはできます。

その先の調査や判断、必要な対応は行政の仕事です。

今回の裁判で、住居として締結した賃貸借契約のもとで、貸主の承諾なく行われたマンスリー営業がどのように評価されるのか。

そして、行政が短期宿泊営業の実態をどのように判断するのか。

それぞれの動きに注目しています。

ちなみに、裁判では損害賠償も請求しています。

こちらは、認められたらきっちり回収するつもりです。

大家ですから(笑)。

また、引き続き、裁判や行政判断の経緯や結果を関係機関、報道関係者に提供していきます。

福岡県宅建課、宅建協会、銀行、保険会社、保証会社、建物管理会社、予約サイト、金融庁、国交省、厚労省、観光庁・・・

その時の各所の判断にも期待しています。



これまでの経緯は、マンスリーマンション問題のコラムシリーズで紹介しています。

■ 関連コラム

219【マンスリーマンション】マンスリーマンションは「民泊・旅館」と違う!?
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