232【民泊・マンスリーマンション】普通の分譲マンションでやる必要ある? できる建物でやればいい

竹下昌成

竹下昌成

テーマ:賃貸経営実務



232【民泊・マンスリーマンション】普通の分譲マンションでやる必要ある? できる建物でやればいい


今回は、少し趣向を変えます。

これまで私は、マンスリーマンションについて、

・旅館業
・管理規約
・保証会社
・予約サイト
・建物管理会社
・保険
・宿泊税
・宅建業

など、いろいろな角度から調べてきました。

今回は、ここまで調べてきた私自身の考えを、少しはっきり書いてみます。




■ 私は民泊にもマンスリーマンションにも反対していない

私は、民泊に反対しているわけではありません。

マンスリーマンションにも反対していません。

観光、長期出張、単身赴任、研修、一時帰国、仮住まい。

ホテルと普通の賃貸住宅の間を埋めるサービスには、当然ニーズがあります。

私が疑問に思っているのは、

「民泊やマンスリーマンションをやっていいか?」

ではありません。

「どこで、どんな建物で、どんな契約で、どんな手続きをして営業するのか?」

です。


■ 普通の分譲マンションでやる必要ある?

ここは、私の考えをはっきり書きます。

普通の人が生活している分譲マンションの一室を借りて、そこで宿泊に近い短期利用を繰り返す。

私は、かなり無理のある事業モデルだと思っています。

もちろん、

「分譲マンションでは絶対にできない」

と言っているわけではありません。

実際、私が所有する別の分譲マンションには、管理規約で民泊可能と明記されている物件もあります。

できる分譲マンションもあるんです。

だから余計に思います。

なぜ、わざわざ普通の住居用分譲マンションでやるのでしょうか。


■ 「書いていないからできる」?

今回のマンションの管理規約・使用細則を改めて読みました。

住居として使用することが前提。

転貸についても制限があります。

他の居住者に迷惑や危害を及ぼす行為についての規定もあります。

さらに、

「入居者は、地域コミュニティー活動に参加協力するようにする」

とまで書かれています。

つまり、普通の人が継続して共同生活を送るマンションです。

分譲マンションは、自分の部屋だけで完結していません。

エントランス。

廊下。

エレベーター。

避難経路。

消防設備。

すべて他の人と共有しています。

だから管理規約や使用細則には、

他人に迷惑をかけない。

危険な行為をしない。

生活環境を害さない。

お互いに配慮して共同生活を送る。

そんな考え方があります。

ところが、

「マンスリー禁止とは書いていない」

「短期利用禁止とは書いていない」

だからできる。

私は、この読み方に違和感があります。

管理規約は、世の中で考えられる行為を全部列挙するものではありません。

「書いていないからできる」

ではなく、

「この使い方は、規約や共同生活のルールと整合しているのか?」

を確認する。

順番は、こっちでしょう。







■ できる建物でやればいい

だったら、最初からできる建物でやればいい。

戸建てでもいい。

一棟のアパートでもいい。

管理規約で民泊可能とされている分譲マンションでもいい。

もちろん、その用途地域や建物で事業ができることが大前提です。

賃借するなら、所有者に事業内容を説明して承諾を得る。

必要な許可・届出をする。

必要な消防・安全対策をする。

保険も実際の利用方法に合わせる。

税金も適切に処理する。

できない建物を、できるように解釈する必要はありません。

最初から、できる建物でやればいいんです。






■ 東急ステイを調べてみた

そんな話を知人としていたところ、

「東急ステイは短期と長期を分けているようですよ」

という話になりました。

そこで私も調べてみました。

東急ステイは、ホテルとして長期滞在にも対応しています。

一方、長期居住向けには「東急ステイレジデンス」という別の商品があります。

私が確認した公開情報では、青山レジデンスや四谷レジデンスについて、

契約形態は、

「定期借家契約(1ヶ月以上)」

用途は、

「住居」

取引態様は、

「貸主」

と明記されています。

宿泊として提供するものと、

住居として賃貸するものを、

きちんと分けているわけです。

当たり前なんですよね。

宿泊なら宿泊。

住居なら住居。

やりたい事業に、建物と契約を合わせる。




■ 「借りて貸すだけ」「低リスク」

以前のコラムでは、大手コンサル会社がマンスリーマンション事業について、

「借りて貸すだけ」

「手続き不要」

「低リスク」

「撤退しやすい」

といった趣旨で説明していることを紹介しました。

確かに、事業者にとっては魅力的です。

建物を買わない。

大きな設備投資もしない。

一室借りる。

家具・家電を置く。

第三者に貸す。

うまくいかなければ撤退する。

さらに本件では、掲載されているマンスリー料金は通常家賃の約4倍です。

正直に言います。

こんなビジネスモデルが本当に問題なく成立するなら、

僕もやってみたいです(笑)。

建物購入なし。

大きな設備投資なし。

借りて貸すだけ。

低リスク。

撤退しやすい。

そして通常家賃の約4倍。

こんなに条件のいい商売は、なかなかありません。





■ 平たく言えば、ズルい

ただ、ここまで調べてきた私からすると、別の見方もできます。

自分は建物を持たない。

自分は撤退しやすい。

一方で、

オーナーがいる。

普通に暮らしている住民がいる。

区分所有者がいる。

管理組合がある。

建物には管理規約があり、消防や保険などの問題もあります。

その建物や周囲の人が抱えるリスクまで含めて事業を考えるのではなく、

自分に都合のいい部分だけを取り出して、

「書いていないからできる」

「借りて貸すだけ」

「低リスク」

と考える。

平たく言えば、

私は「ズルい」と思います。

事業者にとっての低リスクが、

社会全体の低リスクとは限りません。


■ リスクは消えない

事業者が建物を所有しなければ、撤退はしやすいでしょう。

でも、建物は残ります。

住民も残ります。

区分所有者も残ります。

管理組合も残ります。

事故が起きれば、

「撤退します」

では終わりません。

事業者が負わなくなったリスクは、消えたのではなく、

オーナーや住民、区分所有者、管理組合など、

別の誰かに移っているだけかもしれません。

だから私は、

「低リスクって、誰にとって?」

と思うのです。






■ 「東急だからできる」 確かにそうです

もちろん、

「それは東急だからできる」

という面はあります。

資本力がある。

建物を確保できる。

設備にもお金をかけられる。

法務、消防、保険、税務にもコストをかけられる。

でも、私が見ているのは会社の大きさではありません。

事業の利益を取る会社が、

その事業のコストとリスクも引き受けているか。

そこです。

小さな会社なら、小さくやればいい。

一棟のアパートを借りてもいい。

戸建て一棟から始めてもいい。

4室しかできないなら4室でいい。

1室しかできないなら1室でもいい。

資本が小さいなら、

リスクを他人に移すのではなく、

事業の規模を小さくする。

私は、それが普通だと思います。


■ なぜ東急は、そうしていないの?

最後に、一番単純な疑問です。

もし本当に、

普通の分譲マンションを一室借りる。

「マンスリー禁止とは書いていない」

だから大丈夫。

借りて貸すだけ。

手続き不要。

低リスク。

撤退しやすい。

そして通常家賃よりずっと高い料金で貸せる。

そんな事業なのであれば、

なぜ東急は、そうしていないのでしょうか。

東急ほど不動産に詳しい会社なら、その方法を思いつかないはずがありません。


それでも、

宿泊は宿泊。

住居は住居。

建物と契約を事業に合わせています。

なぜ、わざわざそんな面倒なことをするのでしょうか。


私は、それが答えだと思います


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