237【マンスリーマンション】保健所に質問してみた L社の旅館業許可は「なし」

竹下昌成

竹下昌成

テーマ:賃貸経営実務



237【マンスリーマンション】保健所に質問してみた L社の旅館業許可は「なし」

■ まず結論

私が所有するマンションの一室について、福岡市保健所博多衛生課に直接質問しました。

質問したのは、

「7日以上30日未満」などの短期利用者を入れ替えながら反復継続して提供する場合、定期賃貸借契約等の形式であっても旅館業に該当する可能性があるのか?

ということです。

回答は、

「ある」

でした。

さらに、私が所有する702号室を特定して、旅館業法上の許可の有無を確認しました。

回答は、

「なし」

でした。

これは公開データを検索して「見つからなかった」という話ではありません。

所管する博多保健所から、本件702号室について「旅館業許可なし」と明確な回答を得た、ということです。

これで、大きな確認事項が一つ終わりました。


■ そもそも「旅館業」と「民泊」は違う

宿泊営業について考える場合、大きく二つの制度があります。

一つが、

「旅館業法による営業」

こちらは許可制です。担当は市(保健所)。

もう一つが、

「住宅宿泊事業法による民泊」

こちらは届出制で、営業日数は原則として年間180日以内です。担当は県。

ただし、

「1か月未満なら旅館業、1か月以上なら普通の賃貸」

と単純に分かれるわけではありません。

今回の博多保健所の回答でも、旅館業への該当性について、

・宿泊料や寝具提供の有無
・施設の維持管理責任
・利用者に生活の本拠があるのか
・利用期間

などから判断する考え方が示されています。

つまり、

1か月以上であっても、営業実態によっては旅館業に該当する可能性があります。

「マンスリー」
「定期借家契約」
「一時使用契約」

という名称だけで決まる話ではありません。


■ では「民泊」なのか?

旅館業許可がないのであれば、

「住宅宿泊事業法による民泊では?」

という可能性も考えました。

しかし、分譲マンションで民泊を行う場合、まず重要になるのが、

「マンションの管理規約」

です。

福岡県の住宅宿泊事業の届出手続では、分譲マンションの場合、住宅宿泊事業が管理規約で禁止されていないことを確認する必要があります。

しかも、

「管理規約に民泊禁止と書いていない=自由に民泊できる」

という単純な話ではありません。

管理規約に住宅宿泊事業について定めがない場合には、管理組合に住宅宿泊事業を禁止する意思がないことを確認する書類も必要になります。

私が所有・確認している分譲マンションでも、

「民泊禁止」

を明記した管理規約は珍しくありません。

もちろん逆に、民泊を可能としているマンションもあります。

要するに、

民泊が認められているマンションで、所定の手続きを行ったうえで営業する必要があります。

ということです。


■ 本件は賃貸物件 貸主の承諾は?

さらに、本件にはもう一つ重要な点があります。

L社は本件702号室の所有者ではありません。

賃借人です。

賃借した住宅で住宅宿泊事業を行う場合には、

賃貸借契約の確認

に加えて、

住宅宿泊事業を目的とした転貸について貸主が承諾していること

も必要になります。

そして私は、

本件702号室の所有者であり、貸主です。

私は、

民泊として使用することも、住宅宿泊事業を目的として第三者へ転貸することも、一度も承諾していません。

つまり、本件について民泊を考えるなら、

①管理規約上、民泊は認められているのか

②管理組合に住宅宿泊事業を禁止する意思はないのか

③賃貸借契約上、民泊利用は認められているのか

④貸主は住宅宿泊事業を目的とした転貸を承諾しているのか

という確認が必要になります。

全部NGです。

さらに念のため、福岡県が公開している住宅宿泊事業の届出データも確認しました。

本件702号室について、届出は確認できませんでした。


■ 旅館業についてはもっと明確だった



民泊については、

管理規約、
管理組合、
賃貸借契約、
貸主承諾、
届出、

と確認事項があります。

一方、旅館業については非常にシンプルでした。

博多保健所に、

本件702号室を特定して質問した。

その回答が、

「旅館業法上の許可 なし」

です。

したがって、私の確認結果は、

旅館業法上の許可
→ 博多保健所が明確に「なし」と回答

住宅宿泊事業法による民泊
→ 管理規約等の確認が必要
→ 賃貸借契約の確認が必要
→ 貸主の承諾が必要
→ 私は承諾していない
→ 福岡県の公開データでも届出を確認できない

となりました。

以上から私は、

本件702号室について、宿泊営業の根拠となる許可・届出はない

と判断しました。


■ では「マンスリー」と書けばいいのか?

ここが今回の問題の核心です。

「民泊」は社会問題になり、分譲マンションの管理規約でも、

「民泊禁止」

と名指しされるようになりました。

ところが、

「マンスリーマンション禁止」

まで書いている管理規約は、あまり見かけません。

すると、

「民泊ではありません」

「マンスリーマンションです」

「定期借家契約です」

という説明が出てきます。

しかし、

名称を「マンスリー」にすれば旅館業法の問題がなくなるのでしょうか。

私は、まさにそこを博多保健所に質問しました。

短期利用者を入れ替えながら反復継続して提供する場合、

定期賃貸借契約等の形式であっても旅館業に該当する可能性は「ある」。

これが回答です。

しかも、

「1か月を超えれば自動的に旅館業ではなくなる」

という話でもありません。

見るべきなのは、

「マンスリー」という名称ではなく、実際にどのような営業が行われているのか。

ということです。


■ 福岡市の旅館業許可データも調べてみた



せっかくなので、福岡市が公開している旅館業営業許可施設のデータも調べてみました。

許可施設は、

1,392件。

この中には、ホテル、旅館、簡易宿所、一棟型の宿泊施設など、さまざまな形態があります。

そこで今回問題にしているような、

「マンションの一室」

に近いものを探してみました。

まず、

客室数1室 472件。

さらに住所、建物名、号室などから、

共同住宅の一住戸を利用しているとみられるものは約155件。

しかも、この約155件がすべて分譲マンションではありません。

賃貸マンションやアパートなども含まれています。

したがって、

普通の分譲マンション一室型だけなら、さらに少なくなります。

一方、実際に調べてみると、

普通の分譲マンションの一室で、正式に旅館業許可を取得している実例

も確認できました。

つまり、

「分譲マンションだから旅館業許可を取れない」

という話ではありません。

必要な条件を満たして正式に許可を取得している部屋は、

マンション名+号室

という形で、公的データにもきちんと掲載されています。


■ 一方、予約サイトAだけで福岡市906件

ここで、私が調べている予約サイトAを見てみます。

2026年9月24日時点で、

福岡市だけで906件。

しかも、

これは一つの予約サイトだけです。

ほかのマンスリーマンション・短期賃貸の予約サイトまで合算すると、一体何件になるのでしょうか。

もちろん、

906件が無許可営業だと言っているわけではありません。

通常の賃貸借として適法に運営されている物件もあるでしょう。

正式な旅館業許可を取得している施設もあります。

住宅宿泊事業法による民泊もあります。

ただ、

旅館業許可施設 1,392件



客室数1室 472件



共同住宅一住戸型候補 約155件



分譲マンション一室型はさらに少ない

一方、

予約サイトAだけで福岡市906件。

この数字を並べると、

「この906件は、それぞれどの制度に基づいて営業しているのだろう?」

という疑問が出てきます。


■ ある事業者では約400室すべてに短期商品

さらに調べると、別の興味深い事例もありました。

福岡市内で多数のマンスリーマンションを掲載している、ある事業者です。

私が確認した時点で、

約400室。

そして、その全掲載室に、

「7日以上30日未満」

の短期商品が設定されていました。

実際の募集ページでも、

「スーパーショート 7日以上~30日未満」

「7日間からのご契約が可能」

と表示されています。

ここでも疑問が出てきます。

仮に、その営業実態が旅館業に該当するのであれば、

約400室の旅館業許可はどうなっているのでしょうか。

もちろん、

400室あるから400室すべてに旅館業許可が必要

と、私がここで決めつける話ではありません。

通常の賃貸借に該当する部屋もあり得ます。

しかし、

約400室すべてに7日以上30日未満の商品が設定されている

のであれば、

それぞれどの制度に基づいて営業しているのかは、確認する価値があると思います。


■ 私の物件では「7日以上30日未満」を販売

では、本件702号室に戻ります。

予約サイトでは、

「スーパーショート 7日以上~30日未満」

の商品が設定されています。

さらに、

「1日単位で利用期間を選択できます」

と明記されています。

家具・家電等が用意され、

光熱費や清掃費等も設定されています。

入居時間は15時以降。

退居時間は10時。

現地も確認しています。

集合郵便受けにも、

702号室のドア付近にも、

旅館業施設であることを示す掲示は確認できませんでした。

そして今回、

所管する博多保健所に直接確認した結果、

本件702号室の旅館業許可は「なし」。

ここは、もう明確になりました。


■ 違法かどうかを私が決める話ではない

もちろん私は、

「旅館業法違反が確定した」

と言っているわけではありません。

旅館業に該当するかどうかは、

利用期間、
生活の本拠の有無、
施設の維持管理、
寝具等の提供、
実際の利用者の入れ替わり、
その他の営業実態、

などを確認して判断する必要があります。

個人では確認できないこともあります。

だから私は、

判断する権限や調査能力を持つ行政機関や捜査機関に、資料を提出して確認を求めています。

現在、警察にも相談しています。

また、同じ営業形態について消防にも質問しており、回答が届いています。

消防の回答については、次回別のコラムで整理します。


■ まとめ 大きな確認事項が一つ終わった

ここまで私は、

中央官庁の通知やQ&Aを調べ、

予約サイトを調べ、

契約関係を調べ、

管理規約を確認し、

現地も確認してきました。

そして今回、

所管する博多保健所に、本件702号室を特定して直接質問しました。

回答は、

「定期賃貸借契約等の形式であっても、営業実態によって旅館業に該当する可能性はある」

そして、

「本件702号室の旅館業許可はなし」

でした。

これで、

大きな確認事項が一つ終わりました。

私は最初から、

「違法だ」

と決めて調べているわけではありません。

分からないことを一つずつ、

契約書を見る。

公的資料を見る。

現地を見る。

所管する行政に聞く。

という順番で確認してきました。

その結果が、今回の保健所回答です。

ここまで確認できたのであれば、

そろそろ次に進む段階でしょう。

消防からの回答。

警察への相談。

そして必要であれば、

告発という次の手続き。

調べる段階から、

確認した事実を、権限を持つ機関に判断してもらう段階へ。

そんなところまで来たように思います。


■ 参考リンク

今回の記事で確認した福岡市・福岡県の公的情報です。

①福岡市「民泊サービスの提供をお考えの方へ」

旅館業法による許可、住宅宿泊事業法による届出、旅館業施設の掲示などについて確認できます。

https://www.city.fukuoka.lg.jp/hofuku/hokensho/kurashinoeisei/jigyosya/ryokan/minpakusa-bisuwookangaenokatahe.html


②福岡市「旅館業営業許可施設」

福岡市が旅館業の営業を許可している施設については、福岡市のオープンデータで確認できます。

福岡市ホームページで、

「福岡市 旅館業 オープンデータ」

と検索してください。


③福岡県「住宅宿泊事業の届出情報」

住宅宿泊事業法、いわゆる「民泊」の届出情報を確認できます。

https://www.pref.fukuoka.lg.jp/contents/juutakusyukuhakujigyouhou.html


④福岡県「住宅宿泊事業の届出方法等」

民泊の届出手続、賃貸物件における貸主の承諾、分譲マンションの管理規約などについて確認できます。

https://www.pref.fukuoka.lg.jp/contents/juutakusyukuhakujigyounotodokedehouhou.html


⑤福岡県「住宅宿泊事業法の概要」

住宅宿泊事業法による民泊や年間180日の営業日数制限などを確認できます。

https://www.pref.fukuoka.lg.jp/contents/juutakusyukuhakujigyouhounogaiyou.html


⑥福岡市「宿泊税に関するよくある質問」

ウィークリーマンション等の短期賃貸住宅についても、営業実態によって旅館業法上の営業施設と判断され、宿泊税の課税対象となる場合があることが記載されています。

https://www.city.fukuoka.lg.jp/zaisei/zeisei/life/syukuqa.html


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