240【マンスリーマンション】「ヤミ民泊と同じやん」から始まった調査 正常化の第一歩は「情報の共有」 報道機関から業界団体・企業へ

コラム251 マンスリーマンション問題、銀行融資にも波及するのか? 金融庁と銀行にも情報提供しました
マンスリーマンションの短期宿泊営業を巡る問題について、福岡銀行、西日本シティ銀行、日本政策金融公庫の本店・福岡支店、金融庁の銀行監督部門に情報提供しました。
今回は、銀行の融資審査・与信管理、金融機関のコンプライアンスという観点から考えてみます。
■ マンスリーマンション事業と銀行融資
マンスリーマンションには、賃貸マンションを借り上げて運用するケースと、マンションを購入して運用するケースがあります。
購入型では、物件取得資金として銀行融資を利用することが一般的です。
借り上げ型でも、事業資金や運転資金として融資を受けることがあります。
さらに、マンスリーマンション事業そのものに融資を受けているとは限りません。
不動産売買、仲介、賃貸管理など、別の事業で銀行融資を受けながら、並行してマンスリーマンション事業を営んでいる会社もあるでしょう。
銀行が融資先として評価するのは、個別事業だけでなく、その企業全体の信用状態です。
■ 「一事が万事」「ビヘイビアー(姿勢)」
私が銀行員だった頃、上司からよく言われた言葉があります。
「一事が万事」「ビヘイビアー(姿勢)」
まだ「コンプライアンス」という言葉が一般的になる前の時代です。
銀行は決算書の数字だけで融資先を判断するわけではありません。
経営者の言動、約束を守る姿勢、問題が起きた際の対応なども重要な判断材料でした。
一つの事業で重大な法令違反や契約違反が判明すれば、ほかの事業や銀行取引についても確認する。
融資の資金使途が別であっても、取引先は同じ会社だからです。
■ 銀行取引約定書という問題
銀行融資では、個別の融資契約書だけでなく、銀行取引約定書などによって取引条件が定められている場合があります。
こうした契約には、報告義務、取引約定違反、信用状態の悪化、債権保全を必要とする事由、期限の利益喪失などに関する条項が設けられていることがあります。
仮に、マンスリーマンション事業で重大な法令違反や契約違反が判明した場合、融資の資金使途が別事業であっても、銀行取引全体に影響する可能性があります。
もちろん、法令違反があれば直ちに期限の利益を失うわけではありません。個別の契約条項や事実関係によって判断されます。
■ 法令違反は返済能力にも影響する
マンスリーマンション事業では、契約書を「定期建物賃貸借契約」としていても、実際の営業形態によっては旅館業の許可が必要となります。
また、物件を所有している場合でも、マンション管理規約や消防法令などの制約があります。
仮に必要な許認可を取得せず、あるいは所有者の承諾や管理規約に反して営業していた場合、行政上の措置、契約解除、建物明渡請求、損害賠償請求などが生じる可能性があります。
多数の物件で同様の問題が発生すれば、営業収益や資金繰りへの影響も大きくなります。
銀行にとって、法令遵守の問題は融資先の返済能力を左右するリスクです。
■ 銀行が問題のある事業を資金面から支えていないか?
今回、金融庁への情報提供で特に重視したのは、この点です。
金融機関が法令違反や契約違反の疑いを具体的に認識しながら、営業実態の確認や是正状況の把握を行わずに融資を継続・拡大すれば、結果として問題のある事業活動を資金面から支えることになりかねません。
特に、複数の物件を借り上げて事業を拡大する会社では、融資が別事業を対象としていても、会社全体の資金繰りを通じて事業継続を支える可能性があります。
これは単なる貸倒リスクだけでなく、金融機関自身のコンプライアンスや社会的信用にも関わる問題です。
ただし、融資先に法令違反の疑いがあるだけで、直ちに金融機関の責任が生じるわけではありません。
問題は、具体的な情報を得た後、金融機関がどのような確認を行い、どう判断するかという点です。
■ 福岡の主要銀行と日本政策金融公庫に情報提供
今回、福岡銀行、西日本シティ銀行、日本政策金融公庫の本店・福岡支店に「竹下レポート概要版」を送付しました。
福岡銀行と西日本シティ銀行を選んだのは、福岡の主要な金融機関だからです。
両行が本件事業者に融資しているかどうかは分かりません。
仮に取引がなくても、同種事業者への新規融資審査や既存融資先の与信管理に、今回の情報を活用することはできます。
私の所有する福岡市博多区の分譲マンションでは、住居専用の賃貸借契約にもかかわらず、所有者の承諾なく短期利用向けのマンスリーマンションとして営業されていたことが判明しています。
博多保健所への確認では旅館業の営業許可が確認されず、建物管理会社からは、こうした営業利用・宿泊利用は管理規約上認められないとの書面回答を受けています。
現在、福岡地方裁判所で建物明渡・損害賠償請求訴訟が係属しています。
■ 金融庁検査は銀行にとって一大イベント
私が銀行員だった頃、「金融庁検査(当時は大蔵省検査、略してクラケン)」は一大イベントでした。
通常業務に加えて、夜中まで検査対応に追われたものです。
当時の私はコピー係でしたが、コピーが少し曲がっただけでも、上司から厳しく叱られました(笑)。
それほど銀行にとって、金融当局の検査は緊張を伴うものでした。
今回、金融庁の銀行監督部門にも「竹下レポート概要版」を送付しました。
京都市では2024年、無許可営業の疑いがあるウィークリーマンション等267施設を調査しています。
旅館業法は全国共通の法律です。
金融庁が必要と判断すれば、銀行等に対して、マンスリーマンション事業の営業実態や許認可、物件所有者の承諾、管理規約との整合性について、融資審査・与信管理上の注意喚起を行うことも考えられます。
銀行側としても、将来の金融庁検査等で対応を説明できるよう、事実確認や判断の記録を残すことは合理的でしょう。
なお、金融庁が調査を開始したという事実は確認していません。
今回の情報提供は、特定企業への融資停止や銀行への処分を求めたものではありません。
銀行の融資審査・与信管理、そして金融機関が問題のある事業活動を資金面から助長するリスクについて、監督上の参考情報として提供したものです。
あとは情報を受け取った銀行、金融庁がそれぞれ判断することだと思います。
これまでの経緯は、マンスリーマンション問題のコラムシリーズで紹介しています。
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