253【マンスリーマンション問題】 L社に対して徹底的に取り組む理由

竹下昌成

竹下昌成

テーマ:賃貸経営実務



コラム253 マンスリーマンション問題 L社に対して徹底的に取り組む理由

「竹下さん、よくやりますよね。カネも手間も大変でしょ」

「楽しそうですね」

「なんでそこまでやるんですか?」

マンスリーマンション問題について、周囲からこんなことを言われます。

コラムへの反応もさまざまです。

確かに、警察、保健所、消防、宅建協会、福岡県の宅建業担当課、国土交通省、厚生労働省、観光庁、金融庁、保証会社、建物管理会社、報道機関など、幅広い関係先に資料を送付し、情報提供や照会を行ってきました。

現在、L社に対しては、建物明渡しと損害賠償を求める民事訴訟も提起しています。

なぜ、ここまでやるのか。

理由はいくつかあります。

■ 火災や事件・事故が怖い

最初の理由は、安全性への懸念です。

私が所有するマンションの一室は、住居用としてL社に賃貸していました。

ところが、私の承諾なくマンスリーマンションとして募集され、短期利用の営業に使われていたことが判明しました。

通常の住居と、不特定多数の利用者が短期間で入れ替わる宿泊施設とでは、利用実態が異なります。

消防設備や避難体制は適切なのか。

利用者の身元確認や鍵の管理はどうなっているのか。

万一、火災や事件・事故が発生すれば、利用者だけでなく、同じマンションの居住者にも被害が及ぶ可能性があります。

宿泊施設として営業するのであれば、それに応じた設備や管理体制、法令への対応が必要です。

だから、警察、保健所、消防にも資料を送り、確認や対応を求めています。

■ 自分だけ得をするスキマ商売がずるい

次に、ビジネスの仕組みそのものへの疑問です。

オーナーから住居用として部屋を借り、短期利用者に貸し出す。

オーナーには通常の家賃を払い、運営会社は短期利用料金を受け取る。

もちろん、オーナーの承諾があり、管理規約や関係法令にも適合しているなら、問題はありません。

しかし、オーナーに無断で用途を変え、管理規約にも反するような営業をしているとすれば、話は違います。

運営会社が収益を得る一方で、火災や事故、近隣トラブルなどのリスクは、事情を知らないオーナーや居住者にも及びます。

今回、私が保存した予約サイトの募集資料には、7日以上30日未満の「スーパーショートプラン」が掲載されていました。

私は不動産投資を長く続けています。

利益を上げること自体は当然のことだと思っています。

ただし、契約やルールを守ることが前提です。

「借りて貸すだけ」で利益が出るとしても、そのために必要な承諾や手続きを省略してよいわけではありません。

■ 裁判所を信用しきれない

実は、これが私にとって最も大きな理由です。

私はこれまで、家賃改定や無断転貸について、何度も調停や裁判を経験してきました。

その経験から、現時点では裁判所は入居者寄り、被告寄りの判断をする傾向があると感じています。

契約書に何が書かれているのか。

実際に何が行われていたのか。

どのような客観的証拠があるのか。

私は、そうした事実を重視して判断してほしいと考えています。

しかし、実際の調停や裁判では、契約内容や証拠だけでなく、入居者側の事情や現状維持が重視されていると感じることがありました。

もちろん、これは私自身の経験に基づく評価です。

裁判所が常に間違っていると言いたいわけではありません。

ただ、契約違反があれば裁判所が当然に是正してくれる、と楽観視することはできなくなりました。

今回も、L社に対して明渡しと損害賠償を求める裁判を進めています。

しかし、裁判だけに頼るつもりはありません。

警察には警察の、保健所には保健所の、消防には消防の役割があります。

宅建協会や福岡県の宅建業担当課には、不動産会社としての業務の問題があります。

国土交通省、厚生労働省、観光庁、金融庁にも、それぞれの所管に関係する問題を情報提供しています。

保証会社には保証契約の問題があり、建物管理会社には管理規約や管理組合への対応という問題があります。

それぞれ確認すべき内容も、判断する立場も異なります。

「裁判だけでなく、できることは全部やっておく。」

その考えで、関係先への情報提供や照会を続けています。

■ 同じ状況のオーナーにも注意喚起したい

今回の問題では、L社が掲載していた複数のマンションについて、募集資料を保存してきました。

建物管理会社も14社を特定し、そのうち12社に物件ごとの資料を送付しています。

私以外のオーナーが、どこまで営業実態を把握し、承諾しているのかは分かりません。

しかし、私と同じように、住居用として貸しているつもりの部屋が、知らない間に短期利用の営業に使われているオーナーがいるかもしれません。

管理組合も、予約サイトに自分たちのマンションが掲載されていることを知らない可能性があります。

だから、調べたことや関係先からの回答を、できるだけコラムで公開しています。

削除前の募集画面を保存し、掲載しているのもそのためです。

同じような状況にあるオーナーや管理組合が、契約書、管理規約、予約サイトの掲載状況などを確認するきっかけになればと思っています。

自分の物件の問題だけを解決して終わり、とは考えていません。

むしろ、「ヤミ宿泊業」として社会問題化してほしいと思っています。

■ ムカついている(笑)

最後は、極めて個人的な理由です。

正直、L社にはムカついています。

そもそも、家賃改定交渉の当初から、L社は「裁判所でしか話さない」というスタンスでした。

こちらは相場よりも低い家賃の是正を求めているだけなのに、話し合いでは解決できない。

その挙句、むちゃくちゃなマンスリーマンション利用が判明しました。

しかも、その料金設定には驚きました。

私がL社に貸している家賃は、月額54,500円です。

一方、予約サイトに掲載されていた料金は、

- ショートプラン(1か月以上):月額176,800円
- スーパーショートプラン(7日以上30日未満):30日換算で276,880円
- 初期費用:37,500円

ショートプランで約3.2倍、スーパーショートプランでは約5.1倍です。

もちろん、これがそのまま利益になるわけではありません。

しかし、月額54,500円で借りた部屋を、これだけの料金で募集していたわけです。

その一方で、家賃改定裁判では、私の増額請求について「信義則としてどうなのか?」とまで言われています。

相場よりも低い家賃で借りながら、貸主に無断でマンスリー営業を行っていた。

その一方で、家賃の増額を求める貸主の信義則が問題にされる。

こちらからすれば、信義則を問われるべきなのは、どちらなのかと言いたくなります。

しかも、L社自身が不動産会社です。

賃貸借契約や転貸、マンションの管理規約について、一般のオーナー以上に理解しているはずです。

一般のオーナーなら、そこまで調べない。

裁判まではやらない。

そんなふうに考えていたのではないか、と疑いたくもなります。

「一般オーナーをなめていませんか?」

そりゃ、怒るでしょ(笑)。

ちなみに、L社のホームページには、立派な企業理念が掲載されています。

「お役に立ちたい」

「正しくありたい」

「進化していきたい」

そして、こんな言葉もあります。

「粉骨砕身頑張ります!」

「公正であること・正しき判断を行うことを第一に心がけています」

素晴らしい理念だと思います。

ぜひ、実際の対応でも示していただきたいものです。

粉骨砕身! 砕け散ってほしいと願っています。


これまでの経緯は、マンスリーマンション問題のコラムシリーズで紹介しています。

■ 関連コラム

219【マンスリーマンション】マンスリーマンションは「民泊・旅館」と違う!?
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