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松本尚典

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松本尚典(まつもとよしのり) / 経営コンサルタント

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コラム

トランプ前大統領が本気で公約する「闇の政府打倒」に観る、現代アメリカの闇

2024年3月20日

コラムカテゴリ:ビジネス


1、「闇の政府打倒」 これ、少年向けSFドラマの主題ではありません



「闇の政府」の実態解明のため、特別委員会を設置


「闇の政府打倒」というのは、少年向けSF番組の主題ではありません。上記の主張は、共和党の大統領候補となった、トランプ前大統領の公約です。

映画「Xファイル」の世界を髣髴とさせる、この奇妙な公約に、今、全米のトランプ支持者が、真剣にこれに熱烈な支援を送っているのです。

日本であれば、泡沫政党が、このような公約を掲げても、殆どの選挙権を持つ日本人は、耳も傾けないでしょう。ところが、アメリカでは、これが、二大政党の野党、共和党の大統領の公約となり、かつ、それに対する熱烈な支持が、全米で起きているのです。

僕は、1994年に大学院留学でアメリカにわたり、1996年から2007年まで、ニューヨークで仕事をしてきました。この間、9・11テロをニューヨークで経験しました。そして、ITバブルや、金融工学が生み出した奇怪なサブプライムローンなどの問題を、当事者として経験しました。そして、その破綻が現実化した2008年のリーマンショックの前年に、僕は、10年間のキャリアを打ち切り、アメリカを捨てて、祖国日本に帰国し、日本で、大手企業の役員のポストを続けながら、起業をして、URVグローバルグループを作りました。

日本での生活の次に、アメリカでの生活が長く、そのアメリカの異常さを経験して、日本に帰ってきた僕にとって、このトランプ前大統領の公約は、今のアメリカ人の異常さと、その追いつめられた状態を、よくあらわしていると、思っています。

そこで、今回のコラムでは、このトランプ前大統領の公約を題材に、今のアメリカ人と、アメリカ社会の異常性について、書いていきたいと思います。

2、トランプ前大統領の支持層の囲い込みの異常さ


まず、トランプ前大統領というヒトが、アメリカ合衆国のどのような層から絶大な支持を受けているのか、それは何故、起きたのかについて、僕なりの見方で書いて参りたいと思います。

トランプ前大統領とは?


トランプ前大統領は、不動産で財をなした大富豪であり、大統領選に出馬する以前には、人気テレビ番組に出演するような、人気事業家でした。自社で所有する高層高級マンションに、「トランプタワー」という名称をつけるほど、自己顕示欲の強いタイプの事業家です。

そして、そのPR戦略に基づく知名度を利用した、強いインフルエンサーでもあります。

大統領選に出馬する以前、彼は、共和党でも、完全な泡沫候補でした。ある意味、日本で例えるなら、山本太郎氏を大富豪の事業家にしたようなイメージです。

ところが、彼は非常に豊かな財力があり、それを利用して、選挙対策のブレインを高額な報酬で雇いました。そのブレインが生み出した大統領選に向けた対策は、徹底的な大衆を味方につけた、ポピュリズム戦略でした。

トランンプ支持層は、どうやって生まれたのか?


アメリカ合衆国は、元々、移民政策を基本に国を発展させてきた国家です。アメリカ合衆国を建国した東部の白人たちの先祖も移民ですし、黒人は奴隷としてアメリカに強制的にアフリカから連れてこられた奴隷の子孫です。

アメリカ西部に金が発掘され、ゴールドラッシュが起きて、アメリカ合衆国が北米大陸を横断する大国として広がり、南北戦争の試練を乗り越えました。そして、欧州が焼け野原になった第一次世界大戦で、モンロー主義と呼ばれる孤立政策を貫き、戦争双方への輸出と、戦後復興のおかげで、未曽有の工業大国として経済成長しました。第二次世界大戦に勝ち、世界中から移民を受け入れて、世界に君臨した大英帝国を抜き去り、西側先進自由主義国の盟主として、ソ連と対峙しました。そして、ソ連が崩壊した後、唯一の超大国として、世界をリードしたのです。

このアメリカ合衆国の発展を支えた教育システムは、非常にユニークなものでした。日本のように、小学校から高校までの初等中等教育を、徹底的に充実させるシステムを採用しませんでした。アメリカの小学校から高校までの教育システムや教育内容は、はっきり言って、非常に「いい加減」なレベルです。そして、その代わりに、大学と大学院を徹底的に磨き上げました。その結果、大学と大学院に、世界から、多くの優秀な留学生が集まるようにしたのです。

僕もまた、日本の銀行から、その社費留学で、アメリカの大学院に入りました。このように、世界各国の政府や企業から、その頭脳の代表選手のような人物が、アメリカの大学院を目指しました。アメリカの大学や大学院は、その入学以上に、その過程が過酷です。

このような状態になれば、当然のことながら、アメリカのトップ大学の大学院では、アメリカで教育を受けてきた人たちよりも、海外からやってくる外国人のほうが、成績的に優秀になってしまいます。自由の国アメリカは、公正な機会のもとに、優秀な勝ち組であれば、自国のアメリカ人よりも、外国人でも高収入で責任ある職と地位につけます。

このような状態のもとに、アメリカのトップ大学院の成績優秀卒業者の多くが、外国人ということになりました。その外国人たちが、政府や企業で、アメリカの初等中等教育を受けてきた白人よりも、上位につくことになります。

このチカラこそ、アメリカの強さの源泉でした。先進国の中で、唯一、アメリカは人口減少がなく、常に、世界の最も優秀なヒトが、アメリカの戦力になります。

しかし、これは、逆をかえせば、アメリカで生まれ育ち、アメリカで初等中等教育を受けてきた人たちを、大学や大学院が排除することを意味します。アメリカの初等中等教育の現場は、非常に自由な環境のもとに教育を行いますが、それは、中国や韓国などの競争過激な教育環境のもとで能力を磨いた人たちよりも、学力的に相対的に低いことを甘受しなければならないことを意味します。

このような状態が続いた結果、アメリカの大学院は、アメリカ合衆国出身の白人の割合が減り、外国人が増えていきました。そして、それに比例して、政府機関や大企業の管理職、そして僕が活動していたウオール街のコンサルティングファームなど、高収入の職から、アメリカで生まれた白人層が減少する結果になりました。

アメリカで生まれえた白人たちに、高卒の割合が増え、賃金の安い単純労働者が増えます。その横では、外国人の高所得者が増え、政府の中にも増えてゆきます。

これが、白人たちに、彼らが、今、「闇の政府」と呼ぶ、陰謀組織幻想を生み出しました。エスタブリッシュなよそ者が、アメリカをわがものとする、陰謀を企んでいる、というような、子供じみた妄想が、低学歴の白人たちの間に、流行します。

この現象は、僕がアメリカで仕事をしていた1990年代後半から2000年代に、どんどん進んでいました。日本人で、ウオール街の金融系コンサルティングファームのシニアコンサルタントであった僕は、白人たちから受ける視線が、どんどん厳しいものになってくるのを肌で感じていました。

その結果、分断がどんどん、進んだのです。

3、トランプ支持層の本音と現実


この分断を、政治的な支持の力として、最大に活用したのが、トランプ元大統領でした。

本来、大富豪のトランプ前大統領は、分断するアメリカの「最大の勝ち組」ですから、経済的に不満を持つ層からみると、敵視の対象であるはずです。ところが、彼は、高卒以下の白人たちという、アメリカで最大の層に的を絞り、彼らの共通の敵を作って、そこを徹底的に攻撃する選挙戦略を実施しました。

この共通の敵こそ、「自由の国アメリカ」を護るエスタブリッシュな層でした。彼らは、自由主義を標榜し、機会の平等の前提で自由競争をした結果の勝ち組であり、非白人を含むアメリカの支配者たちです。このエスタブリッシュ層への、大衆の「負け組」意識を駆り立て、自分への支持に結びつけました。

トランプ支持層というのは、低学歴の白人層が中心です。しかし、彼らこそ、アメリカの選挙権を握る多数者であって、彼らの不満と怒りを、トランプ元大統領は利用して、泡沫候補のレベルから、共和党を牛耳るまでになってしまいました。

僕は、2007年にアメリカを離れて、日本に本拠を移しました。これは、その翌年にアメリカを襲ったリーマンショックによる経済的な混乱を予測したことも一因です。ウオール街にいた僕は、当時、アメリカ経済の没落を肌で感じていました。

でも、単なるリーマンショックという一時現象ゆえに、アメリカを離れたわけではありません。非白人で、高所得者だった僕のような層に対するアメリカの多数者の嫉妬心と逆恨みによって、僕のような立場の人間が、活躍しにくい国に、アメリカが落ちていっていることを、感じたからなのです。

4、第二次トランプ政権が誕生しなくても、トレンプ支持層は消えない


僕がアメリカ合衆国を離れたのは、2007年でしたが、この時、既に、アメリカ社会は、その発展の原動力であった、世界から優れた人材や、働き者の移民を受け入れてきたために、深刻な分断に陥っていました。アメリカ生まれの白人たちは、子供のころから自由に育ち、勉強もあまりせず、それゆえに、世界から入ってくる外国人の下に甘んじなければならなくなっていました。

この状態を、政治的に最大限活用して、彼らの逆恨みを支持率に変えて、大統領まで上り詰めたのが、トランプ前大統領です。

今のアメリカで選挙権の多数勢力を握る白人たちは、既に、自分たちが、世界のリーダーである必要はなく、世界からアメリカに入ってくる外国人を拒絶して、自分たちだけの国を作りたいと考えています。

ロシアがウクライナに攻めこもうが、中国が台湾に軍事侵攻しようが、合衆国本土に核が飛んでこない限り、どうでもよい、それよりも、自分たちの経済状態を引き上げてほしい、という考え方に、彼らの多くが立っています。

仮に、第二次トランプ政権が誕生しなくても、彼らの意志を利用するポピュリストは、またアメリカに誕生します。そして、アメリカが、世界のスーパーパワーであった時代は、二度と訪れない、と、僕は、アメリカの中心であるウオール街で10年仕事をしてみて、感じたのでした。

グローバル情報サイト アウトオブジャパン
特集「アメリカというマーケット」
https://tsuziseppou.urv-group.com/market-usa/

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