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福味健治

建築主の思いを形にする注文住宅の専門家

福味健治(ふくみけんじ) / 一級建築士

岡田一級建築士事務所

コラム

近鉄南大阪線の架橋事故で顕著になった防災の盲点

2018年4月26日

テーマ:【免震住宅・地震対策】

コラムカテゴリ:住宅・建物


災害時にライフラインは大丈夫なのか

平成30年4月25日朝のラッシュ時に合わせた様に、近鉄南大阪線の大和川に掛かる橋脚が傾き、電車が運休する事態となりました。翌26日15時にようやく復旧しましたが、二日間の運休で抜本的に修復されたのか、仮設的に復旧したのか定かではありません。

造られた橋脚は大正年間に出来た橋脚で、過去にも大和川の水量が増すたびに同様の事故の発生を繰り返していました。河川の水の影響で橋脚廻りの土砂がえぐられ、地面が橋脚を支えきれなくなり傾いたものと思われます。
しかし、前日近畿地方に低気圧が通過し、降雨により普段より水量が増したものの、他の公共施設に影響は出ておらず、ひとえに老朽化・経年劣化による事故の可能性が高いです。今回は近鉄南大阪線に影響がでましたが、都市のライフラインの中には、この橋脚よりも古い工作物が存在し、現在も手を加えず又は僅かな改修で現在も使っている物がいたるところにあります。

道路に比べ路線の健全化が遅れている

阪神大震災以降、阪神高速道路の柱脚は補強工事がなされ、以前の柱脚に比べ1.5倍程度の太さになり、見た目にも防災対策が施されているのが窺えます。しかし鉄道の路線は全く補強されていないか、揺れ幅に対処できる様に僅かな橋梁を受ける顎を増設したりしてお茶を濁しています。

構造の違いで、鉄骨の柱脚そのものは縦方向の力しか伝達しない構造になっていますので、貧弱な鉄骨造の柱脚でも問題はないのでしょうが、仮設的に増設されたようにも思える橋梁の受けで本当に大丈夫なのでしょうか。
近鉄の各路線だけに止まらず、JRを含めその他私鉄の各路線にも同様の事が言えます。都市のライフラインは相当無理して騙しながら利用している様に思えてなりません。
地震等の災害が発生して破損事故が発生してから修復するより、転ばぬ先の杖で災害が起こる前に対策を講じる方が、はるかに安価に対処できますし、人命を守る事になります。

この事故を対岸の火事としない

阪神大震災の時、地震が発生して住宅が半壊して補修するのに平均1000万円を超える費用が発生したのを何度も経験しています。壊れる前に補強すればその半額程度で補強可能です。
また自治体より、耐震改修工事に数十万円~100万円程度の補助金が支給されます。
30年以内に南海地震が発生する確率は70~80%と政府が発表しています。今回の事故を「対岸の火事」とせず、ご自宅の耐震診断を受けて下さい。耐震診断費用も90%行政が負担してくれます。
耐震診断・耐震改修についてもお気軽にお問い合わせ下さい。

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