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福味健治

建築主の思いを形にする注文住宅の専門家

福味健治(ふくみけんじ) / 一級建築士

岡田一級建築士事務所

コラム

木造住宅は一階が弱い

2016年4月17日

テーマ:【免震住宅・地震対策】

コラムカテゴリ:住宅・建物

熊本地震で被害に遭われた方に心よりお見舞い申し上げます。
発生するのは分かっているけど、「いつ」「どこで」が分からない為悲劇は繰り返まれます。
これは、交通事故と同じで、決まり事の有り方を変えるだけで、随分と悲劇を抑える事が出来ると思います。
下の画像の建物が原型を留めているのは二階部分です。建物はアパートですので、一階と二階がほぼ同じ間取りであったと推測されます。

木造の建物は、二階より一階部分の方が弱いのです。鉄骨や鉄筋コンクリートの様に接合部が剛接合になっていれば、どの階が破損するかは一概にいえないのですが、木造の様な接合部がピン接合の場合は一階と二階が同じ間取りであれば、一階の方が弱くなってしまうのです。
一階は二階の重量を支えている為、地震の様な横揺れが発生すると、それだけ大きな力が加わります。その為二階より大きな地震係数を定めて二階より一階の方を頑丈にするように定められているのですが、その地震係数が甘い為に一階に被害が集中するのです。現行の建築基準法では、木造住宅の場合同じ悲劇が繰り返されます。
法律と現実のギャップがこうして如実に現われているのですから、建築士は法律に頼る事なく、より一階の剛性を高める努力を果たさないと、責任を果たしたとは言えません。


上記のグラフは地震の強さを示すものです。縦軸にカイン横軸にガルと云う単位で表現されたグラフです。
建築基準法では、400ガルに耐えられれば安全とされているのですが、400ガルを超える地震が当たり前の様に観測されています。また実際の被害状況はこのグラフで見ていますと、ガルよりカインに比例している様に思われますが、構造の基準ではカインでの規定はありません。
●剛接合とは? 柱と梁の接点が一体に固定されていて、動く余地のない接合方法。
●ピン接合とは?柱と梁が接合されているものの、接点が自由に動く接合方法。
●カインとは?等速運動を示す単位です。時速300kmで走っている新幹線に乗っていても、景色が見えなければどれだけの速さで走っているのかわからないのは、等速運動をしている為です。
●ガルとは?加速度を示す単位です。加速度と云うのは力が常に加わり続ける力を云います。腕を真横に伸ばすと重力で下の方に引っ張られている力を感じます。この様に常に加わり続ける力が加速度です。

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福味健治(岡田一級建築士事務所)

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