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松田友和

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松田友和(まつだともかず) / 内科医

糖尿病内科まつだクリニック

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コラム

砂糖入り飲料と健康の関係

2023年12月18日

テーマ:食事

コラムカテゴリ:医療・病院

はじめに

「食を楽しむ」ことを出来るだけ妨げないようにしたい。これは、糖尿病の療養支援において気を付けていることの1つです。血糖値をマネージメントして、元気で長生きをするためには、食事に無頓着というわけにはいきません。その一方で、食事を制限することは、人生を窮屈なものにしてしまう可能性もあります。したがって、糖尿病を持つ方と食事内容についてお話させていただく際には、それぞれの方の食生活を出来るだけ尊重しながら、血糖値の管理と、食生活の満足度を両立できるような方法を一緒に模索するようにしています。
しかし、「砂糖入り飲料(甘い飲み物)」に関しては、糖尿病の有無に関わらず制限が必要だと考えています。それは、甘い飲み物により、簡単に多量の糖分を摂取してしまうからです。砂糖入り飲料が健康に及ぼす影響については、これまでの多数の報告がありましたが、ハーバード大学の研究グループから、15000人を18.5年間追跡することにより、飲み物が健康に及ぼす影響を調べた結果が報告されましたので、紹介させていただきます。

Beverage consumption and mortality among adults with type 2 diabetes: prospective cohort study
日本語タイトル: 2型糖尿病の成人における飲料の消費と死亡率:前向きコホート研究
BMJ 2023;381:e073406
doi: https://doi.org/10.1136/bmj-2022-073406

この研究により明らかになったこと

  • 2型糖尿病の成人では、砂糖入り飲料の摂取量が多いほど、死亡率(原因を問わない)と心血管疾患の発生率が高くなりましたが、コーヒー、お茶、普通の水、または低脂肪ミルクの摂取量は死亡率(原因を問わない)と逆相関していました。
  • 糖尿病診断の前から後にかけてのコーヒーとお茶の消費量の増加は、死亡率(原因を問わない)の低下と有意に関連していました。
  • 砂糖入り飲料をコーヒー、お茶、または普通の水に置き換えることは、糖尿病の成人の死亡率(原因を問わない)の低下と統計的に有意に関連していました。




研究の方法

米国内の看護師や医療従事者を対象とした大規模コホート研究(病気の発症要因や予防因子を推定するために、大勢の人を長期間観察する研究手法の一つ)です。
2型糖尿病と診断されていた1万5,486人(平均年齢61.3歳、女性73.6%)を解析対象として、食事調査から、砂糖入り飲料やその他の飲料の摂取量を把握して、それらの摂取量と、全死亡(原因を問わない)、心血管疾患の発症、心血管死のリスクとの関連を検討しました。

研究の結果

  • 平均18.5年の追跡で、3,447人(22.3%)が心血管疾患を発症し、7,638人(49.3%)の死亡が記録されていました。
  • 解析結果に影響を及ぼし得る因子(年齢、性別、人種/民族、糖尿病罹病期間、喫煙・飲酒・運動習慣、摂取エネルギー量、内服薬の使用状況、家族歴、閉経状態など)を調整後、砂糖入り飲料の摂取量が多いほど死亡リスク(原因を問わない)が高いという関係があることが明らかになりました。
  • 砂糖入り飲料の摂取量が1日当たり1杯多い場合、死亡リスク(原因を問わない)が8%有意に上昇していました。心血管疾患の発症や心血管死についても、同様の関連が認められました。
  • コーヒーの摂取量が1日当たり1杯多い場合は死亡リスク(原因を問わない)が9%有意に低くなりました。普通の水の摂取量が多いことも死亡リスク(原因を問わない)の低さと関連が見られました。
  • 砂糖入り飲料を摂取している2型糖尿病患者が、その一部をほかの飲料に置き換えた場合に、それらのリスクが低下する可能性も示されました。具体的には、1日1杯の砂糖入り飲料をコーヒーに変えた場合は死亡リスク(原因を問わない)が18%低下し、お茶や普通の水に置き換えた場合は16%、低脂肪乳では12%リスクが低下すると推算されました。また、人工甘味料を用いた飲料に置き換えた場合も、全死亡リスクは8%低下すると見積もられました。
  • 糖分が多いながらも栄養素を多く含んでいるフルーツジュースは、リスク低下との関連が示された飲料と砂糖入り飲料との中間に位置付けられました。具体的には、フルーツジュースの摂取量が多い場合に死亡(原因を問わない)や心血管疾患の発症、心血管死のリスクの上昇は見られませんでしたが、砂糖入り飲料をフルーツジュースに置き替えたとしても、リスクの低下は生じないと予測されました。


研究結果の解釈

この研究結果から、2型糖尿病を持つ人にとって、砂糖入り飲料を控えて、他の飲料に置き換えることが、健康に繋がるという可能性が示唆されます。他の飲料とは、コーヒー、お茶、水ということになりますが、お茶の種類については言及されていません。米国の研究になりますので、そのまま日本人に当てはまるとは限りませんが、少なくとも砂糖入り飲料が健康によくないという、強力なメッセージになっています。
食事内容を変更することは、とても難しいことです。それでも、砂糖入り飲料を出来るだけ控えて、他の飲料に置き換えることには、大きな価値があるではないでしょうか。

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