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コラム

大阪府立清水谷高校教職員研修「生徒の自尊感情を育てる関わり」

2023年12月6日 公開 / 2023年12月9日更新

テーマ:教育・人権講演会の感想

コラムカテゴリ:出産・子育て・教育

12月4日(月)は大阪市のJR玉造駅近くにある大阪府立清水谷高校で教職員研修がありました。



テーマは「生徒の自尊感情を育む関わり」

自尊感情と自己肯定感


 自尊感情とは「自分をかけがえのない価値ある大切な存在と捉える気持ち」のことです。
 自己肯定感とは「自分はそのままの自分でOKだ、と思える自分自身に対する信頼感」のことです。
 ニュアンスは少し違うのですが大体の意味は重なることも多く、今日はニュアンスの違いは置いといて
 「そのままの自分を大切だと思える気持ち」
 「そのままの自分をOKだと肯定する気持ち」
 「そのままの自分を好きだと思える気持ち」
 これらの気持ちの総称として自尊感情または自己肯定感と呼ぶことにします。
 ですから私が自己肯定感の話をしている時も「ああ、これは自尊感情と言い換えてもいいんだな」と思って聞いて下さい。



自己肯定感が高まるのはどんな時か


 自己肯定感というのは何かに成功した時に高まるものではありません。
 自己肯定感というのは失敗した時や挫折した時に「こんな自分なのに受け入れてもらえる、愛されている」
 そう感じた時にこそ高まるものです。
 自己肯定感とは自信満々な心のことではなくて
 「ダメな自分、弱い自分も許し受け入れる。だからこそ人も許せるし、受け入れられる」
 そういう自己受容他者受容の心が根底にあるのだと思います。

自尊感情や自己肯定感を育てる関わり




1、子どもの話を聴く(考えや気持ちを聞く)

子どもの考えや気持ちを聞こうとして問いかけるようにすると対話が成立して子どもの話を聴くことができます。
そして聴いたことを否定しないで尊重していく。
すると「先生は私の気持ちを大切にしてくれる」とみなさんのその子に対する愛情とその子を尊重する態度を示すことになります。
それが先生と生徒との信頼関係を育むと同時に生徒の自尊感情を育むことにもなります。

2、気持ちを理解しようとする(押し付けない)

子どもの話を聴く時に「そう思う気持ちもわかるよ」と理解していこうとする姿勢が大切です。
生徒は共感してもらうことで「受け入れられ体験」をし、この体験が多ければ多いほど自尊感情や自己肯定感は高まります。

3、管理者ではなく援助者になる(信頼する)

先生や親が管理者である場合、決定権は管理者にあります。なぜなら責任を負うのは管理者だからです。
その場合、管理する者とされる者という対立構造を生むことになり生徒の反抗を招きがちになります。
援助者である場合は、提案することはあっても生徒本人に関わることについては生徒側に決定権があります。この「自己決定」する経験が自尊感情や自己肯定感を育みます。

4、子どもの善さを見る(尊敬する)

子どもの欠点ではなく良いところを見る。良いところを見て褒める。
ピグマリオン効果の例にもあるように「この子は素晴らしい。この子は伸びる。」と指導者が見ると実際にその子の成績が伸びるということがあります。
子どもをどう見るか。それが自尊感情や自己肯定感に大きな影響を与えます。

5、弱さや欠点を受け入れる(受容する)

自尊感情や自己肯定感はどのようにして身につくのか。
それは「受け入れられ体験」を積むことによってです。
受け入れられ体験とは、失敗したり挫折した時にそれにもかかわらず「この私のままで受け入れられている、愛されている」と感じる体験のことです。
ですから、生徒が何か失敗したり問題を起こした時にただ叱るのではなく、それにもかかわらず温かく受け止める姿勢が重要になります。

教師である自分自身の自己肯定感をいかにして高めるか




ここまでは生徒の自尊感情や自己肯定感を育てる関わりについてお話ししてきたのですが、それができるためには私たち教師も自尊感情や自己肯定感をしっかり高めておかないとそんな関わりもできないと思います。
そこで後半は自分の自己肯定感を高めるにはどうしたらいいのかについてお話しさせていただきます。
それでは資料「大人の自己肯定感を高める10の方法」をご覧ください。



1、自分に対する要求水準をうんと下げる

実は自己肯定感の低い人ほど自分のことを過大評価する傾向があります。
自分のことを実力以上に「もっとこうあるべきだ」と常に思っているということです。
こうなると「ここもできていない、あそこもできていない」と自分のことをマイナス評価ばかりしてしまうことになります。
まずは自分にあまり多くのことを要求しないで、もっと自分に優しくなることが大切です。

2、我慢グセをやめる

人間というのは自分に我慢を強いる人というのは嫌いになります。
自分に我慢ばかり強いていると自分のことが嫌いになってしまいます。
だいたい「我慢」というのは仏教用語で「自分を高く、相手を低く見て自分が正しいと思う」という驕りや慢心のことであって決していいことではないんです。
「自分が我慢している」という思いは慢心であって、本当は相手が我慢してくれているのかもしれないのです。



3、支配的で口出しの多い親や友人と距離を置く

たとえ心配からでも、こちらがしんどくなったりネガティブになるような口出しをしてくる相手とは距離を置きましょう。そうでないといつまでもネガティブ思考から抜け出られません。

4、時には好き嫌いで物事を決めてみる

自己肯定感の低い人は自分の判断に自信が持てない人が多いんです。
だから物事を決める時に他者から見てどうかという他人軸、世間軸で物事を決めたりする傾向が強いんです。



これらは他人から教えてもらったり等、自分の外側から得る情報です。

それに対して自己肯定感が高い人は自分軸で物事を決めることができるんです。



これらは自分の内面、自分の心から得られる情報です。
だから「好き嫌い」や「自分にとって楽しいかどうか」を基準に物事を決めるようにすると100%自分軸で決めることになります。この積み重ねで自分の心で物事が決められるようになります。
実は「自分の心で決めたかどうか」は幸福感にもとても影響を与えるんですね。
世間の常識や人の意見ではなく自分の心で決めることが大切です。

5、6、7 省略


8、人からほめられよう、認められようとしない




自己肯定感を高めるためには、
・いい人のフリするのをやめる
・優秀な人のフリするのをやめる
・努力する人のフリするのをやめる
・我慢する人のフリするのをやめる
そうして色々なものをやめたら残るのはありのままの自分です。
人間には普通2つの自己があります。
現実自己(ありのままの自分)と理想自己(あるべき自分、ありたい自分)です。



この現実自己と理想自己の乖離が大きいほど心は病みます。
葛藤に悩まされ精神的に不健康になります。
カウンセリングではこれを「自己不一致」と呼びます。

人は時にありのままの自己を隠したり否定して「いい人」のフリをします。
また自分が本当はやりたくないことであっても無理してやります。
同じように自分の心に嘘をついて我慢して人に合わせます。

このようにありのままの自分でない自己を演技し続けることが心が病む根本的な問題です。



では、どうすればいいのか?
簡単です。
フリをやめてありのままの自分を許し受けれればいいのです。
理想自己を設定せず、ありのままの自分でいるということです。



そうすると心のエネルギーが葛藤によって浪費されなくなり、心の平安を取り戻します。心が平安になり安心できると元気が出てきて意欲が出てきて前向きに生きられるようになります。

9、自分の素直な気持ちをそのまま伝える。

この「そのまま伝える」が大事です。
相手に対して変に気を使わず自分のありのままの気持ちを伝える。
自己肯定感の高い人は自分の感情に自信があって堂々と怒るし、堂々と喜ぶんですね。
自己肯定感の低い人は自分の感情に対しても自信がなくて「怒りの感情」とか「喜びの感情」に対しても「怒ってもいいの?」「喜んでもいいの?」て人に聞きたくなるんです。
腹が立てば怒ればいいし、嬉しかったら素直に喜んだらいいんですね。

10、自分や相手の弱さや欠点を受け入れる

これはありのままの自分もありのままの相手も許すということです。
そうできた時自己一致も自己受容も自己肯定も全てできています。



この状態が精神的に人間関係的に一番楽で、一番健康で、一番意欲的なのです。

ありのままの自分でいいと肯定し受け入れることは相手を許し受け入れることにつながります。
このことによって人間関係は楽になります。
ありのままの自分のダメなところや弱いところを否定するのではなく受け入れることによってその欠点や短所はコントロール可能になります。そうすることで仕事やプライベートでの失敗の多くが防げるようになります。結果うまくいくことが増えさらに自己肯定感は高まります。

そのようにお話ししました。
講演後の質疑応答では「教師という仕事柄、なかなかこのように心がけることが難しいこともあるのですが、その辺りはどう考えればいいですか?」との質問がありました。

「確かに。では自分に対して『よく頑張ってるよ』『少し休みなよ』『君は素晴らしいよ』と親友のように接するようにしてみたらどうでしょう。自分が自分の親友になる。一番の理解者になる。そういう視点で今の10項目を自分で自分に語りかけるようにされたらいいと思います。」とお答えしました。

講演の最後にお一人お一人それぞれ違う詩をプレゼントしました。

今回の講演の感想を清水谷高校の校長先生が書いてくださっています。
https://www.osaka-c.ed.jp/blog/shimizudani/principal/2023/12/04-248227.html






 教育講演・人権講演のテーマや内容、お問い合わせについては
 http://mbp-japan.com/hyogo/hasegawa/column/64075/

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    < 最近行った講演会 >

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 2023年10月 兵庫県加西市立加西中学校PTA人権講演会
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 2023年9月 兵庫県多可町立中町南小学校PTA人権講演会
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 2023年9月 大分県豊後高田市主催
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 2023年9月 東京都港区芝浦小学校人権講演会
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 2023年8月 朝来市教職員組合・養父市教職員組合主催
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 2023年7月 島根県奥出雲町立布勢小学校
 オンライン講演「自信と意欲を引き出すプラスの問いかけ」
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 2023年7月 御津子育てつどいの広場
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この記事を書いたプロ

長谷川満

子どもの自信とやる気を引き出す教育のプロ

長谷川満(家庭教師システム学院)

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