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谷津吉美(やつよしみ) / 薬剤師

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コラム

萬金丹は伊勢、そして落語の話

2022年5月10日

テーマ:漢方商品のご紹介

コラムカテゴリ:医療・病院

コラムキーワード: 東洋医学

萬金飴

 3月に水戸黄門の第26部最終回を見ました。忍者の飛猿が薬屋の格好をして、手には「萬金丹」書かれた小さいのぼり旗を持っていました。その上の方には「伊勢」ではなく、「越中富山」とありました。むつごろう薬局で伊勢くすり本舗の萬金飴を売っているので調べてみました。萬金飴には和漢植物の阿仙薬(アセンヤク)、甘草、桂皮が配合されています。

『 "古さ"がいま、とても新鮮 日本の伝統薬』よりまとめてみます。
 伊勢の萬金丹(まんきんたん)は、江戸時代、越中富山の反魂丹(はんごんたん)と並ぶ全国的知名度を持つ薬でした。反魂丹が配置行商で普及したのに対し、萬金丹は伊勢講(町や村ごとに積立金で伊勢参りをする)の土産物として名を馳せました。
 伊勢神宮の鬼門(伊勢神宮からは北東ではなくほぼ真東にありますが)を護る金剛證寺は、朝熊岳(あさまやま)にあります。野間家の祖、宗祐は虚空蔵菩薩(こくうぞうぼさつ)から、秘法を感得し創製したとされるのが「萬金丹」です。
 今は野間製薬の萬金丹は販売されていないようですが、朝熊岳を書いた商標が印刷された包み紙に、1日分の丸薬57粒が長方形に包まれていて、開くと、包み紙そのものが能書きになっていたそうです。1日量5.7g中の成分 アセンヤク末1.0g、カンゾウ末1.5g、ケイヒ末1.0g、チョウジ末0.5g、モッコウ末1.0g、結合剤0.7gで、銀箔の丸衣。成人1回19粒、1日3回服用。この19粒というのも授けられたのでしょうか?「お伊勢参らば朝熊にかけよ 朝熊かけねば片参り」と伊勢音頭にうたわれているそうです。

 万金丹という落語を聞いてみました。宿を求めた寺で、住職の留守中に坊主として葬式に呼ばれます。口から出まかせのお経をあげたあと、戒名をいただきたいと言われ、字が書いてあるものを渡します。それが、萬金丹の包み紙でした。「戒名ってのは、タテに長いもんだけんど、真四角だ」と言われ、新型だと答えます。「官許伊勢朝熊霊方萬金丹、薬の袋でないか」と言われ、いろいろ説明します。「万屋金兵衛(よろずやきんべえ)だろ!だから、よろきんのまんきんでいいじゃねぇ~か!」‥「ただし、白湯(さゆ)にて用うべし。なんでぇこれ戒名に但し書きがあるでねぇか。」「改めてこの仏へ、お茶湯(ちゃとう)には及ばない…」で終わります。最後のお茶湯は、お供えするお茶のことだと調べて分かりました。
 落語は、客が自分の頭の中で映像を作ると言いますが、昔の萬金丹のことを知らないと少し難しいですね。上の本では秘法と書いてありましたが、霊方萬金丹なので秘方が正しいのかもしれません。

現在、小西の萬金丹は健康維持食品として販売されていて、伊勢くすり本舗の萬金丹は指定医薬部外品で販売されているようです。萬金飴には、'からだ'にやさしい'のど'にうれしいと書いてあり、のどが痛くなってきた時に、愛用していらっしゃる方が多いです。


伊勢参りのときにひしゃくを持参していたそうです
https://mbp-japan.com/shizuoka/mutsugoro/column/5104849/
印籠の中にも萬金丹が入っていたのでしょうか
https://mbp-japan.com/shizuoka/mutsugoro/column/5107882/

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