コラム
建物の老朽化による立退き要求。「築35年経過した建物の老朽化は正当な事由に当るのか?」
2017年1月7日 公開 / 2021年3月2日更新
どれくらいの老朽化が正当な事由なのか?
Q:築35年を経過する一戸建てを借りて家族で住んでいます。
先日、家主から「建物の老朽化により、安全が保てなくなったので、1DKのアパートに建替えたい。
1年後に着工するのでそれまでに退去してほしい。」と記載された書面が送られてきました。
確かに建物は古くなっていますが、居住や生活には何ら支障はありません。このまま借りていたい
のですが家主は認めてくれません。
退去しなければばらないのでしょうか?
(考え方と対応)
●まず、築35年が経過した建物の老朽化が立退き要求の「正当な事由」に当たるか否かが問題
となりそうです。
建物の老朽化は正当事由の判断の一つであることは間違いありませんが、あくまでも判断要素の
一つにしか過ぎず、老朽化=正当事由になるとは思えません。
過去の裁判例では、
築後68年の住宅でも、老朽化が正当な事由と認められず、明渡し請求を棄却した判例や、築
後90年の住宅においては、立退き料200万円を持って建物の明渡しを認めた判例もあります。
従って、築後35年を経過したことによる建物の老朽化が「正当な事由」に当たるとは通常考えら
れないと思います。
仮に、耐震診断等により建物の安全性に問題があり、耐震補強工事が必要であった場合におい
ても、その費用が建替えと同等の費用が必要になる等の特別な事情がない限り、家主は安全性
を理由に契約の解除をすることはできないと考えられています。
逆に、安全性に問題があることが判明したときには、補強工事を行なう等の義務が生じます。
ただし、家主と入居者との立退き条件の交渉が優先されるので、その内容によって、柔軟な対応
をすることが得策かと思います。
賃貸借契約 借主の義務
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