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宅地建物取引業法違反のコンサル契約などが散見される

2019年2月20日 公開 / 2022年8月20日更新

テーマ:宅建業法

コラムカテゴリ:法律関連

不動産ビジネスは、宅建業者でなければできず、また、宅建業に違反することも許されません。これらをすると刑罰の制裁を受けます。また、行政処分として営業停止や免許の取消も受けることになります。

1 潜脱契約
最近、不動産ビジネス、すなわち宅地建物取引に関与するビジネスが増えてきていますが、トラブルも増えてきています。
目についてところでは、宅地建物の売買の媒介を目的とした契約でありながら、「コンサルタント契約」だとか、「業務委託契約」という名で契約を結び、宅建業法上の義務を免れ、かつ、宅建業法で制限されている手数料を超える報酬を約束させているものが見られます。

これらの契約の多くは、下記の3から5までに書いたすべてをあいまいにしたままの宅建業法を蝉脱したものになっています。

2 宅建業法の目的
宅建業法の目的は、宅地等の購入者の保護と宅地建物の流通の円滑化を図ることにありますが、このような脱法的なコンサルタント契約や業務委託契約が横行するようでは、宅地建物の購入者だけでなく、売主の権利も侵害され、宅地建物の流通の円滑化は疎外されてしまうでしょう。

3 取引態様の明示義務(34義務)
宅地建物取引業法(宅建業)34条には、宅建業者は、
①自己が契約の当事者となつて当該売買若しくは交換を成立させるか、
②代理人として当該売買、交換若しくは貸借を成立させるか、
③又は媒介して当該売買、交換若しくは貸借を成立させるかの別(「取引態様の別」)を明示しなければならないと定められています。
コンサル契約では、このような取引態様は、無論、明示されていません。依頼者に大きな損をかけさせます。

4 媒介契約を結ぶ場合
 取引態様にうち媒介契約を結ぶ場合は、宅建業法34条の2で、宅地建物取引業者は、遅滞なく、多くの事項を記載した書面を作成して記名押印し、依頼者にこれを交付しなければならないと定められています。
この中には、
①依頼者が他の宅地建物取引業者に重ねて売買又は交換の媒介又は代理を依頼できるのかどうかに関する事項、つまりは当該媒介契約は、一般媒介契約なのか、専任媒介契約なのか、専属専任媒介契約なのかを明示すること
② 媒介契約の有効期間及び解除に関する事項が法律で制限されているので、その内容を明示すること

③ 報酬に関する事項は、これも法律で制限されているので、その制限内での報酬の計算式など

5 重要事項の説明等
 宅建業者は、同法35条で、売買契約が成立するまでの間に、宅地建物取引士をして、重要事項(図面を必要とするときは図面も)を交付して説明をさせなければならないことになっていますが、その重要事項には、実に多くのものがあります。

6 コンサルタント契約を結ぶ動機
いうまでもなく、宅建業法に違反する内容になるからです。
なお、コンサル契約が実質的に宅地建物の売買を媒介するものである場合、コンサル契約や業務委託契約は宅建業に違反したものとして無効になります。

この記事を書いたプロ

菊池捷男

法律相談で悩み解決に導くプロ

菊池捷男(弁護士法人菊池綜合法律事務所)

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