改正法の下では、特別損害の範囲が変わる 主観から客観へ
現行民法には、規定はありませんが、新法では、新しく「定型約款」という名で、一つの契約形態が、つくられました。
1 定型約款の意義
契約は、本来、契約当事者ごとに、内容を定めて結ぶものですが、バスや電車の運送契約、電気・ガスの供給契約、預金契約、ソフトウエアの利用契約など、不特定多数を対象とし、その内容の全部又は一部が画一的であること、しかも契約内容が画一的であることが契約当事者双方にとって合理的なもの、については、事業者が一方的に決めた契約内容を、原則として有効と認め、それに関する規律を設けることになりました。
実はこのような契約は、前記した契約のほかにも、生命保険契約に添付された約款など、契約を結ぶ国民からは内容の変更などは全く認められないものとして存在し、これには「附合契約」という名称が与えられてきております。
そして、近時ますます、このような附合契約ないし定型契約は増えてきているところから、法律で明文をもって規律する必要が生じたのです。
2 定型約款の有効要件
定型約款が有効になる要件は、
①不特定多数を対象とし、
②その内容の全部又は一部が画一的であり、
③契約の内容が画一的であることが契約当事者双方にとって合理的であり、かつ、
④その内容が、信義誠実の原則に反しないもの
とされています。
ですから、定型約款は、常に事業者が作るもの全てを有効なものとするのではなく、
(ⅰ)相手方の権利を制限し、又は義務を加重する条項であって、(ⅱ)相手方の利益を一方的に害すると認められるものについては、合意をしなかったものとみなされます。
具体例1:「定型約款に関することにつき事業者は一切責任を負わない。」という条項は、④に違反し、無効になります。
3 定型約款の成立要件
定型約款による契約が成立したとされるのは、
(1)定型約款を示して契約を結んだ場合
(2)あらかじめ定型約款をインターネットなどで公表していた場合では、契約を結んだとき
に契約の成立が認められます。
4 事業者がする一方的な定型約款の変更が有効になる要件
契約内容の変更は、当事者双方が合意しないとできないのが、原則ですが、定型約款の場合は、事業者の一方的な意思表示で、契約内容の変更ができます。
それには、民法548条の4に定めるように、
① 定型約款の変更が、相手方の一般の利益に適合するとき。
② 変更後の内容が契約目的に反せず、かつ、変更の必要性、変更後の内容の相当性、定型約款の変更をすることがある旨の定めの有無及びその内容その他の変更に係る事情に照らして合理的なものであるとき。
という要件を満たす必要があります。
具体的には、今後、裁判例の集積を待って、どういう場合は変更が有効か、どういう場合は無効になるかが、論じられてくるようになるでしょうが、いかんせん、現時点では、この①と②の要件を満たすときが定型約款の一方的な変更ができる、という解釈しかありません。
なにせ、出来上がったばかりの法律の条文なのですから。