従業員との間の競業避止契約は、代償措置がとられていないと、無効
コーポレートガバナンス・コードの基本原則5は、「株主との対話」であるが、この原則は、スチュワードシップ・コードの内容でもある。
すなわち、スチュワードシップ・コードとは、スチュワード(steward)という語が、執事,財産管理人等を意味することからも分かるように、「責任ある機関投資家の諸原則」と訳されている。
このスチュワードシップ・コードは,リーマンショックを機に,その反省を踏まえて、2010年にイギリスで策定されたのが最初であるが、わが国もこれを参考に,2014年2月26日に,金融庁が日本版スチュワードシップ・コードを策定した。目的は,機関投資家の投資先である上場会社の、持続的な成長と中長期的な企業価値の向上である。
スチュワードシップ・コードは七つの原則から成るが、その内容は抽象的であるため、原則ごとに「指針」という名で、やや具体的なものが書かれている。「指針」は2017年(平成29年)に一部改正されている。
我が国の機関投資家のほとんどは、日本版スチュワードシップ・コードの受け入れを表明しており、その数は,2017年12月末時点で214に上る。
なお,スチュワードシップ・コードに書かれた原則は,いまや世界共通のものであり,アジアの新興国でもこれを採用する国が増えている。
以上の次第であるから、コーポレートガバナンス・コードとスチュワードシップ・コードの目的は同じものであり、それは、上場会社と株主(機関投資家)との、建設的な「目的を持った対話」を通して、上場会社の持続的な成長と中長期的な企業価値の向上を図ることである。
上場会社はコーポレートガバナンス・コードに従い、また、機関投資家はスチュワードシップ・コードに従い、お互いが対話をすることにより、上場会社の持続的な成長と中長期的な企業価値の向上を図ることである。
なお、上場会社と機関投資家との「建設的な対話」が正しく実施される限りにおいて,インサイダー取引まがいの取引や,機関投資家が大量に買った株式を投資先企業に買わせるようなこと(グリーンメーラー・greenmailer)は起こらないはずである。