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不要になった自社の土地を売っただけで、犯罪になるって、本当?

2017年3月16日 公開 / 2022年8月20日更新

テーマ:宅建業法

コラムカテゴリ:法律関連

 犯罪になる場合があります。それは、自社の土地の売買が、宅地建物取引業と評価される場合です。
その仕組みを、以下のとおり、解説します。

1宅建業法の仕組み
 宅建業法12条1項は「・・・免許を受けない者は,宅地建物取引業を営んではならない。」と規定し,これに違反した者は,同法79条により「3年以下の懲役若しくは300万円以下の罰金に処し,又はこれを併科する。」という罰則の適用を受けますが,宅建業を行うのに免許が必要とされる理由は,一にかかって消費者保護にあります。

 ところで,宅地建物取引業とは,宅建業法2条2号で「宅地若しくは建物(建物の一部を含む。)の売買若しくは交換又は宅地若しくは建物の売買,交換若しくは貸借の代理若しくは媒介をする行為で業として行うものをいう。」と定義されています。
ここから,貴社が自社所有地を売却する場合,「業として行う」とされるときは,宅建業違反とされ罰則の適用を受けることになるのです。

2「業として行う」との意味
 国土交通省が明らかにした解釈指針通達である「宅地建物取引業法の解釈・運用の考え方」によれば,「業として行なう」とは,宅地建物の取引を社会通念上事業の遂行とみることができる程度に行う状態を指すものであり,その判断は次の事項を参考に諸要因を勘案して総合的に行われるものとするとされ,判断基準としては,下記の事項が書かれています。

(2) 判断基準
① 取引の対象者
広く一般の者を対象に取引を行おうとするものは事業性が高く,取引の当事者に特定の関係が認められるものは事業性が低い。
(注)特定の関係とは,親族間,隣接する土地所有者等の代替が容易でないものが該当する。
② 取引の目的
利益を目的とするものは事業性が高く,特定の資金需要の充足を目的とするものは事業性が低い。
(注)特定の資金需要の例としては,相続税の納税,住み替えに伴う既存住宅の処分等利益を得るために行うものではないものがある。
③ 取引対象物件の取得経緯
転売するために取得した物件の取引は事業性が高く,相続又は自ら使用するために取得した物件の取引は事業性が低い。
(注)自ら使用するために取得した物件とは,個人の居住用の住宅,事業者の事業所,工場,社宅等の宅地建物が該当する。
④ 取引の態様
自ら購入者を募り一般消費者に直接販売しようとするものは事業性が高く,宅地建物取引業者に代理又は媒介を依頼して販売しようとするものは事業性が低い。
⑤ 取引の反復継続性
反復継続的に取引を行おうとするものは事業性が高く,1回限りの取引として行おうとするものは事業性が低い。
(注)反復継続性は,現在の状況のみならず,過去の行為並びに将来の行為の予定及びその蓋然性も含めて判断するものとする。
また,1回の販売行為として行われるものであっても,区画割りして行う宅地の販売等複数の者に対して行われるものは反復継続的な取引に該当する。

3 貴社の場合
貴社の場合は,
① 取引の対象者として,
広く一般の者を対象に取引を行おうとするときは、事業性が高くなります。
買主を隣地の所有者又は親族にした場合は,事業性は低くなります。売買対象の土地を直接消費者に売ると「業として行う」場合に当たる可能性が高く、ですから、造成・分譲可能な一団の土地を売る場合は、宅建業者に売るのがよいと思います。
② 取引の目的
利益を目的とするものは事業性が高く,特定の資金需要の充足を目的とするものは事業性が低いという通達の趣旨を生かしているかによりますが,貴社の場合,はたしていかに。
③ 取引対象物件の取得経緯
売却ご希望の土地が、長年自用地として使っていたものなら、特に問題にすべきことはないでしょう。
④ 取引の態様
自ら購入者を募り一般消費者に直接販売しようとすることは厳禁です。宅地建物取引業者に代理又は媒介を依頼して販売しようとするものは事業性が低いとされますので,一般消費者に売る場合でも、必ず、宅建業者に代理又は仲介を依頼するべきでしょう。
⑤ 取引の反復継続性
今後も,貴社所有の他の土地を,同じ目的で「反復継続的に取引を行おうとするものは事業性が高く」なりますので,注意が要るところです。反復継続性は,現在の状況のみならず,過去の行為並びに将来の行為の予定及びその蓋然性も含めて判断するものとされているからです。

なお,この問題については,宅建業法違反が即犯罪になるところから,警察は厳しい目を向けています。
そのため,リスクを避けるためには,監督官庁や警察に相談しながら売買手続を進めていくのがよいと思います。

注意:マンション分譲も規制の対象になる
 宅建業は、土地に限らず、建物(その一部を含む。)も対象になりますので、自宅を壊し、マンションを建て、専有部分の一部を所有者が使うが、他の専有部分(敷地権付き)は一般の人に売る、という場合も、宅建業になりますので、免許なしにはできません。

この記事を書いたプロ

菊池捷男

法律相談で悩み解決に導くプロ

菊池捷男(弁護士法人菊池綜合法律事務所)

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