コラム
債権法改正 心裡留保で保護される者の主観的要件の明確化
2015年4月28日 公開 / 2015年5月11日更新
(心裡留保)
民法93条
意思表示は、表意者がその真意ではないことを知ってしたときであっても、そのためにその効力を妨げられない。ただし、相手方がその意思表示が表意者の真意ではないことを知り、又は知ることができたときは、その意思表示は、無効とする。
2 前項ただし書の規定による意思表示の無効は、善意の第三者に対抗することができない。
コメント
1項本文の意味
心裡留保というのは,真意と違うことを表示することを指す。俗っぽくいえば,“ウソを言う”ということである。
例えば,甲が,A土地を売買する真意がないのに,乙との間にA土地の売買契約を結ぶような場合をいう。
このような心裡留保は,相手方を保護する必要があるので,表(おもて)に現れた意思表示に効果を認める必要がある。俗な言い方をすると“ウソをついた責任を取る”ということだ。
上記の前述の例でいえば,売買契約は有効になるということである。本条1項本文は,その意味である。
これまた,俗っぽく言えば,“ウソから出た真”ではなく“ウソを真にする”ということである。
1項ただし書の意味
とはいうものの,相手方が,表意者の意思表示が真意ではないことを知り、又は知ることができたときまで,相手方を保護する必要はない。その場合は,意思表示は無効になる。これが1項ただし書の意味である。
これも,俗っぽくいうと,ウソであることを知り、又は知ることができた相手方に対しては,ウソを真にする必要はないということだ。
2項の意味
ただ,ウソが作った権利移転の外形を信じて,第三者が,その上に新たな権利を取得した場合は,第三者を保護する必要があるので,その第三者が,善意である限り,心裡留保による意思表示であっても,有効になる。これが2項の意味である。
改正のポイント
相手方及び第三者を保護する場合の要件の違いを明確にしたこと
すなわち,心裡留保の相手方が,表意者の意思表示(例でいうと,売主が売買契約をするという意思表示)が,「真意ではないことを知り、又は知ることができたとき」は,保護されない。
一方,第三者の場合は,表意者の意思表示(例でいうと,売主が売買契約をするという意思表示)が心裡留保であることを知らなかった場合は保護されるということである。第三者の保護の方が厚いのである。
現行法の下では,この範囲が明確でないため,改正法では,明確にされたのである。
関連するコラム
- 債権法改正 契約上の地位の移転 2015-06-08
- 債権法改正 話し合い中でも,時効は完成するので,要注意,と援用権者 2015-05-11
- 債権法改正 不法行為による債権と人損についての時効の改正点 2015-05-09
- 債権法改正 大改正。債権の原則的な消滅時効期間は5年になる。短期はなし 2015-05-08
- 債権法改正 債務引受① 併存的債務引受 2015-06-04
コラムのテーマ一覧
- 時々のメモ
- コーポレートガバナンス改革
- 企業法務の勘所
- 宅建業法
- 法令満作
- コラム50選
- コロナ禍と企業法務
- 菊池捷男のガバナー日記
- 令和時代の相続法
- 改正相続法の解説
- 相続(その他篇)
- 相続(遺言篇)
- 相続(相続税篇)
- 相続(相続放棄篇)
- 相続(遺産分割篇)
- 相続(遺留分篇)
- 会社法講義
- イラストによる相続法
- 菊池と後藤の会社法
- 会社関係法
- 相続判例法理
- 事業の承継
- 不動産法(売買編まとめ)
- 不動産法(賃貸借編)
- マンション
- 債権法改正と契約実務
- 諺にして学ぶ法
- その他
- 遺言執行者の権限の明確化
- 公用文用語
- 法令用語
- 危機管理
- 大切にしたいもの
- 歴史と偉人と言葉
- 契約書
- 民法雑学
- 民法と税法
- 商取引
- 地方行政
- 建築
- 労働
- 離婚
- 著作権
- 不動産
- 交通事故
- 相続相談
カテゴリから記事を探す
菊池捷男プロへの
お問い合わせ
マイベストプロを見た
と言うとスムーズです
勧誘を目的とした営業行為の上記電話番号によるお問合せはお断りしております。