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使用者のための労働問題 セクハラ委員会

菊池捷男

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テーマ:労働

Q 当社は従業員が800名程の会社です。最近セクハラ委員会を設けて私が委員長になったところですが,早速,女子従業員2名から,当社の幹部Aが,酒の席上でセクハラ発言をしたという理由で,懲戒解雇をしてくれという訴えがありました。そこで,私と1名の委員が,セクハラ被害を訴えてきた2名の従業員から,Aの発言内容を聴取し,Aに弁明の機会を与えたのですが,Aは発言したことは認めたものの,それがセクハラになるという自覚がない状況です。Aについては,規則に従って手続を進めていきますが,それ以外のことで,セクハラ委員会としては,セクハラの根絶のためには,今後,どのようなことをすべきなのでしょうか?

A
セクハラに関しては,加害者と被害者の意識が,大きく異なります。
あなたの会社で起こった例のように,被害者は,加害者を懲戒解雇にして欲しいと訴えるほどの被害体験あるいは被害意識を持っているのに,加害者とされた従業員は,セクハラをしたという意識が弱い,ということはしばしばあることです。そこで,全社的に,セクハラについての意識を共通にする必要があります。セクハラ意識の共通化は,規範意識の高まりにつながりますので,それをするだけで,セクハラが減少するものと思われます。
セクハラ意識の共通化を図るためには,セクハラに関する情報の共有化が必要になります。
そのためには,当該女子従業員のみでなく,広く従業員から,セクハラになると思う言動を,具体的に,匿名によるアンケート方式によって,収集してみてはどうでしょうか?
その上で,セクハラ委員会は,セクハラと判断する基準(抽象的なものではなく具体的なもの)及び,それに対する懲戒の程度に関する委員会の見解の試案を,全役員全従業員に公表してみてはどうでしょうか?試案については,いろいろな意見がでると思いますので,できるだけ多くの従業員の納得の得られるものに,改めていき,確定していくことが大切だと思います。
なお,注意すべきは,セクハラ行為を具体的に例示する必要はありますが,絶対にセクハラ被害の体験をした個人が分からないようにすることだと思います。

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菊池捷男(弁護士)

弁護士法人菊池綜合法律事務所

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