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省エネリフォーム(断熱改修)の検討手順

2021年3月12日

テーマ:断熱改修・耐震改修の手順

コラムカテゴリ:住宅・建物

コラムキーワード: DIYリノベーション工事断熱材 効果

|まずは窓から考えてみる

中空ポリカで
断熱改修の最も効果的な方法は、窓をどうにかすることです。
一般的には、今ある窓はそのままで「内窓を追加する」という方法があります。
最近はホームセンターで手軽に入手ができる材料を用いて、DIY作業で楽しみながら内窓風の断熱戸を製作して窓ガラスから逃げる熱を抑制している方もいると思います。プチプチシートを貼っている方も多いと思います。
DIYの様子は動画サイトでも紹介されていますよね。
デザイン的に凝りながら、愉しみながら製作し、
「どうだ~、これであったかくなるね~」

ええ、まあ・・・。

DIY内窓は、従前のアルミサッシが相当断熱性能的に劣悪だっただけに一定の効果があるように設置当初は感じるのですが、
この手法、私はあまりおすすめしていません。
まったく意味がなくはないですが、当然気密性はありませんので、場合によってはガラスの結露を増加させてしまう場合があります。


”断熱性能の高い樹脂製ペアガラスの内窓”
をつけた場合は、窓表面の温度が大幅に改善されます。
その違いは歴然。オーダーしてから1週間程度で設置可能ですし、FIX窓(開閉できない)なら1窓あたり3万円から程度で、安価です。
ホームセンターでいろんな材料を購入すると、それなりの出費になりますので費用対効果からすると疑問が残ります。
そうはいってもDIYでつくる愉しみはプライスレス。やるなら徹底的につくりこみ、気密性にもこだわりましょう('ω')ノ

内窓は2重になるので、窓の開閉が大変です。
費用と時間が許されるならば、窓枠ごと樹脂か木製のサッシに「交換」するのが、やっぱりすご~く効果があります。

開閉しない窓なら、いっそ窓をつぶして、断熱材で覆ってしまう方がよいのでは?
しかし部屋がかなり暗くなりますし、万が一火災の場合に排煙もできませんので、浴室やトイレなど”居室でない場合”に限ります。

|解体をどこまで抑えることができるのかが費用決定に


解体
断熱リフォームを検討する場合「まずは窓から考えてみる」というのは鉄則のように感じますが、
次は 天井・壁・床 の順に検討をすすめてゆきましょう。
天井は案外簡単につくられており、場合によっては解体せずとも屋根裏に入って断熱強化ができるかもです。
暖かい空気は上にのぼってゆきますので、天井面をピッチり断熱・気密すると、思いのほか家があたたかくなることも。

いずれにせよ、解体する範囲が少なければ少ないほど、費用は抑えられます。
よく骨組みだけにしてしまうスケルトンリフォームの実例を目にしますが、「壊して、つくって」の作業は、ゼロからつくる新築以上の費用がかかる場合もあります。
残しても差し支えがないものは手を付けず、「加えてゆく」ことを意識したほうがコストは抑えられるわけです。
築年数や劣化の程度から、想定される建物残存期間を推定し、解体範囲は慎重に見極める必要があります。ここはやはりインスペクター(建築士)の目利きが必要です。

|壁の断熱は面積大なので、工法により最も費用差が出やすい

外壁にグラスウールで付加断熱
窓→天井、の次は壁です。
壁は最も断熱面積が大きいところで、多額の費用がかかります。
今ある壁の外側に断熱材を張り付ける方法(=「外ばり断熱とか、付加(ふか)断熱」といいます)もあり、住みながら断熱リフォームが可能ではありますが、
あらたに外壁材を準備しなくてはいけませんし足場代もかかる。
電気メーターやボイラー、エアコンの室外機など、外壁にはじつにさまざまな物体が取り付いているので、そうしたものも一時的に撤去さざるをえません。

ではあらたに部屋内側に断熱材を設けるのはどうか?
・各部屋が狭くなる
・住みながらリフォームができない
・ユニットバスが入らない
などの克服課題事項が発生します。
経験的に平屋建てや、部分2階建ての場合は、内側断熱にした方が良い場合が多いです。
内側か、外側か? あるいはそのどちらもか?
この工法選定が費用に大きく関わりますし、リフォーム後の冷暖房ランニングコストにも大きく影響します。
断熱リフォームにおける最重要課題となります。

|地面の状態によっては、2重床も検討

床のこす
これまであった床の上に、あらたな床を重ねてつくるということもあり得ます。
リフォーム前の床をそのまま残し、解体をしないやり方です。
床が無断熱で、潜って断熱を施工することが困難な場合は検討に値します。
床下の土が湿っている場合は、すでに床板がぶよぶよしている場合も多く、防湿シートを敷く等の措置が必要です。
結果的に「床はいったん撤去しましょう」ということに。
しかし、床下が乾いている。シロアリ被害もない。床組み木材も乾いている。
という状況であれば、防腐防蟻消毒だけして床の上に床を重ねてつくると大工の作業性もよく、工期の短縮にもかなり貢献します。
当然床にも断熱材がほしいので、10~15cmほど天井が低くなってしまいます。
従前の天井高さが2.4m以上あれば、リフォーム後も2.2~2.3mほどの天井があれば普通に生活できるはずです。
とにかく解体はプラスの作業ではなく、マイナスの作業ですから、ここでも解体作業をいかに少なくできるかが費用を決定づけることになるのです。

|耐震性も同時に必ずアップさせましょう

これが筋交い?
床壁天井の断熱リフォームをする際はやはり大掛かりにはなってしまいますが、室内環境は劇的に改善されます。
そして併せて行いたい耐震リフォーム。
リフォーム工事を行っていると、このように筋交いをぶった切ってしまっていたり、図面上当然あるはずの筋交いがなかったり、
耐震性がかなりおろそかになってこの家は建てられている、ということがしばしば起きています。
大きな地震がなければ耐震部材は生活上まったく支障ありませんが、いざ巨大地震が起きた場合は命にかかわります。
筋交いは車のシートベルトと同じです。

冒頭、内窓から検討するのがよいと書きましたが、ちょこちょこやってゆくよりはやはり”床・壁・天井・窓”、ごっそり全部位を高断熱化する方が良いに決まっています。
劣化部位のリフォーム、耐震性を改善するリフォーム、そして省エネ性(断熱性)を改善するリフォームをワンセットで行うと、最大で300万円の現金補助金が受給できる場合もあるのでかなりお得感があります。(国土交通省:長期優良住宅化リフォーム・高度省エネ型)

すでにこうした選択をされて、築数十年余の中古住宅をドラマチックにリフォームし、あらたな生活を営んでいる方の声を聞いてみてください。
暮らしのことば(RebornのHPへリンク)

この記事を書いたプロ

塩原真貴

木造住宅を耐震・断熱構造に生まれ変わらせるプロ

塩原真貴(株式会社Reborn)

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