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7.不祥事が発覚した後の調査は、誰がすべきか?

菊池捷男

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テーマ:コーポレートガバナンス改革

7.不祥事が発覚した後の調査は、誰がすべきか?

(1)第三者委員会
上場会社に不祥事が発覚したときの調査で、主流をなすのは、外部の弁護士による第三者委員会の調査である。
そのため日本弁護士連合会(日弁連)は、「企業等不祥事における第三者委員会ガイドライン」を策定し、いつ弁護士に第三者委員会の組成を求められても、そのニーズに応えられるよう準備しているところである。

(2)会社内調査委員会
会社内で不祥事が発生したときの調査は、会社の社外取締役が中心になって会社内調査委員会をつくって調査をするべきだとの見解もある。

そのような見解の一つに、2023年2月27日付け日本経済新聞電子版「社外取締役主導で質高めよ」との記事に登場した、社内調査委員会の委員を経験した弁護士の談話要旨が見られる。

これによれば、
①日弁連の第三者委員会調査指針によれば、第三者委は報告書の内容を提出前に当該企業に開示しないこと、
②会社の顧問弁護士は第三者調査委員会に入れないこと、としているが、
③会社の内情を全く知らない第三者委が、わずかの時間を調査しただけで、また、
④会社の顧問弁護士や会社の言い分を十分理解しないまま調査を終え、
⑤その結果として会社に不利になる報告書を作成したときは、たちまち会社には信用失墜や訴訟リスクが発生する、それに加えて、
⑥現状の第三者委は、誰からもガバナンス(統治)されていないため、誰がどのような責任を負うのか責任の所在が明確にされておらず、さらには,
⑥第三者委員会に支払う調査費用や報告書の質を検証する仕組みもないことが問題だ、
⑦それに比べれば、社外取締役は株主総会で選ばれており、日本流の第三者委よりガバナンスが効いている。
⑧以上の理由で、社外取締役を中心に社内の調査委員会による調査を優先させるべきではないか、というものである。

(3)二項対立は、アウフヘーベン(止揚)することが肝要

東芝のコーポレートガバナンスの欠如は前述のとおりであり、取締役会も責任を果たしておらず、監査委員会も責任を放棄していること火を見るより明らかである。
これらは、社外取締役が、経営陣からの独立性を、制度的に保障されていないことが大きな一因をなしていると思われる。
したがって、現時点では、会社に不祥事が発生した後の調査は、会社とは利益相反の関係のない弁護士を中心にした第三者委に調査してもらうことがベターである。

しかし、第三者委員会調査も、前記(2)の①から⑧までの問題点もあるので、
①会社の顧問弁護士に随時、第三者委の委員とコンタクトをとる自由を認め、②会社の主張などがあれば経営陣を代表する者と顧問弁護士から、第三者委に対して事情を説明する道を設けること、また、
③会社の顧問弁護士が第三者委のガバナンスや調査方法や費用について第三者委と意見を交換できる道も開くべきであろう。

このような方法論は、第三者委にとっても、会社にとっても、有益な教訓を学ぶ機会になり、したがって、今後、上場会社のガバナンスの質を高めることになるであろうと思われる。

第三者委員会を良しとするか、会社内委員会を良しとするかという、二項対立は、アウフヘーベン(止揚・統合)することが肝要である。

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菊池捷男
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菊池捷男(弁護士)

弁護士法人菊池綜合法律事務所

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