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8  物言う株主(アクティビスト)は、正義の使者かCGコードの鬼っ子か?

2023年3月30日 公開 / 2023年4月7日更新

テーマ:コーポレートガバナンス改革

コラムカテゴリ:法律関連

8  物言う株主(アクティビスト)は、正義の使者かCGコードの鬼っ子か?

 最近、上場会社の経営を巡って、「物言う株主」とか「アクティビスト」という言葉がマスコミを賑わしている。
 この言葉の意味は、機関投資家のうちファンドと呼ばれる、投資先企業に対し、種々もの申す存在である。
 ファンドは、機関投資家として顧客・受益者のために、利益を上げなければならない立場にあることから、上場会社に対し、株主の権利に基づいて、近時はますます強く、種々の要求をするようになってきた。
 その要求の根拠は、コーポレートガバナンスコード(CGコード)とスチュワードシップ・コード(SSコード)にある。

(1)CGコード
 CGコードは、上場会社に対し、「株主に対する受託者責任・説明責任を踏まえ、株主との間で建設的な対話を行うべきこと」を求めている。
 具体的には、「株主の声に耳を傾け、その関心・懸念に正当な関心を払うとともに、自らの経営方針を株主に分かりやすい形で明確に説明しその理解を得る努力を行い、株主を含むステークホルダーの立場に関するバランスのとれた理解と、そうした理解を踏まえた適切な対応に努めるべきである。」と要求しているのである。
 しかも、この対話は、株主総会での質疑というような狭い範囲ではなく、「株主総会の場以外においても、株主との間で建設的な対話を行うべきである」と定めているのである。
 この対話を通じて上場会社が開示すべき情報は、①「会社の財政状態・経営成績等の財務情報」のみならず、②「報経営戦略・ 経営課題、リスクやガバナンスに係る情報等の非財務情報」にまで及ぶのである。

(2)スチュワードシップ・コード(SSコード)

 スチュワードシップ・コードとは、機関投資家の「受託者責任に基づく行動規範」のことをいう。これも、英国で最初に作られ(2012年)、我が国には、2014年に作られた。その目的は、機関投資家が投資先企業やその事業に対して十分な理解をし、経営陣と建設的な対話をすることを通じて、投資先企業の価値向上や持続的成長を促すことで、中長期的な投資リターンの拡大を図ること」にある。

(3)物言う株主(アクティビスト)の見方
 このようなCGコードとSSコードの根拠を受けて生まれた物言う株主(アクティビスト)のことであるので、これは正義の使者とは言えないまでも、CGコードの申し子であり、鬼っ子ではない。
 
 なお、ファンドの中には、自分たちが持っている株を会社関係者に高値で買取らせる目的で行動する者が出るかもしれないが、これは「グリーンメイラー」(ドル札の緑色と脅迫状を意味するブラックメールを合わせた造語)というものになり、これなどはCGコードの鬼っ子というべき存在であろう。いずれにせよ、このような者は物言う株主(アクティビスト)とは言わない。

 いずれにせよ、これからは、物言う株主(アクティビスト)の声が、より大きく、強くなっていくと思われる。上場会社は、上場会社としての責任、すなわち、不特定多数の投資から資金を調達して、会社を成長・発展させ、株主に豊かな実りを得させる責任を果たすため、寸毫の懈怠も緩みも許されない時代になってきたのである。
 このことは、日本経済を失われた30年から脱皮させるため、上場会社の経営陣の自戒とすべことである。

この記事を書いたプロ

菊池捷男

法律相談で悩み解決に導くプロ

菊池捷男(弁護士法人菊池綜合法律事務所)

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