コラム
家康語録
2017年10月31日
家康は、多くの言葉を残しています。その言葉は、自らの反省の言であったり、子や重臣を教える言葉であったりしますが、それらが語られてから四百年以上経った現在でも、輝きのある“教えられる言葉”になっています。
読む者や聴く者の胸中深く届く“言葉”は、語る人の叡智の光ともいうべきものですが、イギリスの名宰相といわれる、ウインストン・チャーチルは、「すべての叡智は新しいものではない。先人から学んだものだ。」と語っていますので、徳川家康の叡智の言葉も、先人から学んだものといってよいでしょう。
ただ、この場合の“先人から学んだ”というのは、言葉として学んだものではありません。
武田信玄からは、三方ヶ原の戦いで完膚なきまでに負かされることで、戦いとは何かを学び、長男信康からは、危険地帯に身を置く子にそのことを自覚させなかった結果、最愛の我が子を切腹させるはめになったことで、子への教育の重要性を学び、織田信長からは、家臣の扱い方によって本能寺の変が起こりうることを学び、豊臣秀吉からは、戦国を統一した後の経綸の無さが無謀な外征(朝鮮への出兵)を引き起こし国力を落とすだけ結果になることなどを学んだだろうと思われます。
家康の残した言葉は、一般には、処世訓といわれますが、これらの言葉は、家康の経験に、家康が学んだものが加わり、自然に、生まれ出たものと思われます。別の言葉でいえば、家康の処世訓は、家康の哲学といってもよいと思われます。
すなわち、アレキサンドル・デュマは、“哲学とは,あらゆる学問とあらゆる経験の双和なのだ。”と語っているからです。
続けて、デュマは、“哲学とは,輝きわたる雲だ。人智の中に隠れている不思議な鉱脈から掘り出されるものだ。しかし、哲学は人から学べるものでも、人に教えられるものでもない。人智の中にある鉱脈から哲学を掘り出すには、苦しみや不幸というものが必要なのだ。”と語っていますので、徳川家康の残した言葉、家康の哲学も、家康の苦しみ、悩みという経験があったればこそ、生まれたものでしょうし、現在まで輝き続けているものと思われます。
ですから、“苦しみよ!悲しみよ!お前は決して悪いものではない!”
これも、アレキサンドル・デュマの言葉です。
関連するコラム
- 弁護士の心得 「できません」は禁句。「こうすればできます」で答えるべし。 2015-01-02
- 弁護士と格言 口論乙駁は,コンセンサスを求める場にふさわしからず 2014-03-22
- 弁護士の心得 根拠のない「思います」は禁句。根拠を示して答えるべし。 2015-01-01
- 弁護士の心得 専門に特化しながら、専門外から謙虚に学ぶべし 2015-01-05
- 弁護士と格言 蟹は甲羅に似せて穴を掘る 2014-03-14
コラムのテーマ一覧
- 時々のメモ
- コーポレートガバナンス改革
- 企業法務の勘所
- 宅建業法
- 法令満作
- コラム50選
- コロナ禍と企業法務
- 菊池捷男のガバナー日記
- 令和時代の相続法
- 改正相続法の解説
- 相続(その他篇)
- 相続(遺言篇)
- 相続(相続税篇)
- 相続(相続放棄篇)
- 相続(遺産分割篇)
- 相続(遺留分篇)
- 会社法講義
- イラストによる相続法
- 菊池と後藤の会社法
- 会社関係法
- 相続判例法理
- 事業の承継
- 不動産法(売買編まとめ)
- 不動産法(賃貸借編)
- マンション
- 債権法改正と契約実務
- 諺にして学ぶ法
- その他
- 遺言執行者の権限の明確化
- 公用文用語
- 法令用語
- 危機管理
- 大切にしたいもの
- 歴史と偉人と言葉
- 契約書
- 民法雑学
- 民法と税法
- 商取引
- 地方行政
- 建築
- 労働
- 離婚
- 著作権
- 不動産
- 交通事故
- 相続相談
カテゴリから記事を探す
菊池捷男プロへの
お問い合わせ
マイベストプロを見た
と言うとスムーズです
勧誘を目的とした営業行為の上記電話番号によるお問合せはお断りしております。