Mybestpro Members

菊池捷男プロは山陽新聞社が厳正なる審査をした登録専門家です

立法論としての相続法⑦ 自筆証書遺言の方式の見直し

菊池捷男

菊池捷男

テーマ:相続判例法理

1 問題点 ー 現行法の方式は厳格
 現行法上,自筆証書遺言には、厳格な方式が定められており、その方式に違背すると遺言が無効になります。
 自筆証書遺言の方式は、遺言の内容を全文自筆で書き、日付、氏名も自筆で書き、押印するというものですが、日付として、「平成29年7月吉日」と書くと、それだけで遺言は無効とされるのです。
 遺言書の内容を加除訂正する場合の要件も極めて厳格です。弁護士ですら、条文を見ないと無効にならない加除訂正はできないくらいの難しい方式があるのです。

2 パソコン印字を認めるべし 
 現在人が、文章を書くのは、多くの場合、パソコンのキーボードをたたく方法によるものと思われますが、そのような人が、ボリュームのある遺言書を書くことには、相当の苦痛が伴うのではないか?もし、遺言書を“書く”ことに苦痛を覚え、そのために、遺言書を書く機会をなくしているとすれば、遺言書の内容の全文を自筆で書くという、現行の制度を見直すべきではないかという欲求も出ようというものです。

 法制審議会民法(相続関係)部会では、自筆で書くべきものとされている事項のうち、①不動産の表示(地番,面積等),②預貯金の表示(金融機関名,口座番号等)等の遺産を特定するための形式的な事項は、いちいち自筆で書くのは煩瑣であること、活字で印刷した財産目録として作成しても格別問題は生じないことなどの理由から、活字で印刷された目録を遺言書に添付することで、遺言書の内容とすることを認めるべきだ、との意見が出ております。

3 押印を要件とすることを疑問とする意見あり
 法制審議会資料には、「近年,クレジットカード等の利用拡大により,署名のみで取引が行われる事例が増えてきたこと等を踏まえ,氏名の自署のほかに重ねて押印まで要求することには疑問があるとの指摘がされている。」との記述があります。

4 加除訂正の方式について
 加除訂正の方式のうち「署名及び押印」を「署名又は押印」で足りるとするなどの意見が出ております。

5 必要性
 要は、誰でも、苦痛を感じることなく、遺言書を自由に書くことができるような改正が必要だということです。

リンクをコピーしました

Mybestpro Members

菊池捷男
専門家

菊池捷男(弁護士)

弁護士法人菊池綜合法律事務所

迅速(相談要請があれば原則その日の内に相談可能)、的確、丁寧(法律相談の回答は、文献や裁判例の裏付けを添付)に、相談者の立場でアドバイス

菊池捷男プロは山陽新聞社が厳正なる審査をした登録専門家です

関連するコラム

プロのおすすめするコラム

コラムテーマ

コラム一覧に戻る

プロのインタビューを読む

法律相談で悩み解決に導くプロ

菊池捷男プロへの仕事の相談・依頼

仕事の相談・依頼